訪問看護指示書とは?発行する医師・有効期間と利用開始までの流れ

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退院を控えた方の支援で訪問看護を入れようとしたとき、「指示書はどの医師に頼めばよいのか」「病院の医師と在宅の医師のどちらが書くのか」と迷う場面は少なくありません。ご家族から「指示書にお金はかかるのか」と聞かれ、答えに詰まった経験を持つ方もいるのではないでしょうか。

この記事では、訪問看護指示書の役割と発行できる医師、有効期間や記載される内容、費用の目安を、診療報酬の通知や介護保険の運営基準をもとに整理します。あわせて、相談から訪問開始までの流れと、更新や主治医が変わったときの扱いも、ご家族への説明にそのまま使える言葉でまとめました。

この記事でわかること

  • 訪問看護指示書の役割と発行できる医師
  • 有効期間・記載内容と訪問看護指示料の目安
  • 相談から訪問開始までの具体的な流れ
  • 更新や主治医変更時の扱いと関連する指示書

訪問看護指示書の役割と発行できる医師

訪問看護は、看護師などが自宅を訪れて療養を支えるサービスですが、利用者や家族の希望だけでは始められません。まず、指示書がどのような位置づけの文書で、誰が発行するのかを確認します。

訪問看護は主治医の指示に基づいて行うサービス

訪問看護指示書とは、主治医が診療にもとづいて訪問看護が必要と判断したときに、訪問看護ステーションへ交付する文書です。訪問看護ステーションは、訪問看護の提供を始める際に主治医の指示を文書で受けることが運営基準で定められています。

指示書には病状や治療の状況、訪問時に行う処置、緊急時の連絡先などが書かれ、訪問する看護師はこれを手がかりに看護計画を立てます。つまり指示書は、訪問看護を始めるための「許可証」であると同時に、医師と看護師が同じ方針で動くための共通の土台でもあります。

医療保険でも介護保険でも指示書は必要

訪問看護は、要介護・要支援の認定を受けている方は原則として介護保険、それ以外の方や、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する方などは医療保険で利用します。どちらの保険になるかの詳しい区分は別の記事で解説していますが、指示書が必要な点はどちらも同じです。

医療保険の訪問看護についても、健康保険法にもとづく運営基準で、提供開始時に主治医の指示を文書で受けることが求められています。介護保険の訪問看護だから指示書は不要、ということはない点を、ご家族にも最初に伝えておくと手続きが進めやすくなります。

指示書を発行できるのは患者が選んだ主治医

指示書を発行するのは、在宅で療養している患者の診療を担う医師で、診療報酬の通知では「患者が選定する保険医療機関の保険医」を主治医としています。病院の医師でも診療所の医師でもよく、訪問診療を行う在宅医や、通院先の外来主治医が書くこともあります。

一方で、1人の利用者に対して複数の医師がそれぞれ指示書を出すことはできないとされています。整形外科と内科に通っている方など、かかっている医師が複数いる場合は、訪問看護で主に管理してほしい病状を踏まえて、どの医師に依頼するかを本人・家族と先に決めておきます。

退院時は入院先の医師が交付できる

入院中の方が退院後すぐに訪問看護を利用する場合は、入院先の病院の医師が退院時に指示書を交付できます。診療報酬上も、訪問看護指示料は退院時に1回算定できるほか、在宅療養中は月1回を限度に算定できると定められています。

退院後の通院先や訪問診療の医師が決まっている場合は、その後の指示書をどちらが出すのかを退院前カンファレンスで確認しておくと、指示書の更新時に空白が生じるのを防ぎやすくなります。

なお、介護老人保健施設(老健)を退所する際にも、施設の医師が退所時に1回限り指示書を交付できるとされています。

訪問看護指示書の有効期間と記載内容、費用

指示書には有効期間があり、期間が切れると新しい指示書が必要になります。ここでは有効期間の決まりと、指示書に書かれる内容、発行にかかる費用の目安を整理します。

有効期間は最長6か月

訪問看護指示書の有効期間は、主治医が病状に応じて決め、指示書に記載します。診療報酬の通知では、有効期間は6か月以内に限るとされています。

実際には、病状が安定している方は3か月や6か月、退院直後で状態が変わりやすい方は1か月など、主治医の判断で期間が選ばれます。主治医は交付後でも病状に応じて期間を変更できるため、状態が大きく変わったときは早めに訪問看護ステーションから主治医へ相談してもらいましょう。

期間の記載がない場合は1か月として扱われる

通知では、1か月の指示を行う場合は有効期間を記載しなくてよいとされています。このため、指示期間の欄が空欄の指示書は、指示日から1か月が有効期間として扱われます。

長く利用する予定なのに期間が空欄のままだと、1か月ごとに更新が必要になり、手間と費用がかかります。受け取った指示書は期間欄と開始日を最初に確認し、想定と違えば訪問看護ステーションを通じて主治医に確認します。

指示書に記載される主な内容

指示書の様式は、診療報酬の通知で示された様式(別紙様式16)を参考に医療機関が作成します。緊急時の連絡先として、診療を行った医療機関の電話番号などを記載したうえで交付することとされています。主な記載項目は次のとおりです。

記載項目 主な内容
指示期間 訪問看護の指示期間と、点滴注射を指示する場合はその期間
主たる傷病名 傷病名と傷病名コード
病状と治療状態 現在の病状、今後の方針や見通し
投与中の薬剤 薬の種類と用量、用法
生活の状況 日常生活自立度、要介護認定の状況、褥瘡の深さ
医療機器 在宅酸素、留置カテーテル、胃ろうなど使用中の機器
留意事項と指示事項 療養生活上の注意点、処置の内容、リハビリ職の訪問に関する指示
緊急時の連絡先 医療機関の電話番号、不在時の対応

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が訪問看護ステーションから訪問する場合も、この指示書の中で訪問時間や回数、注意点が示されます。リハビリ職の訪問を希望するときは、依頼の段階でその旨を主治医に伝えておくと記載漏れを防げます。

訪問看護指示料の点数と患者負担の目安

主治医が指示書を交付すると、医療機関は診療報酬の「訪問看護指示料」を算定します。2026年(令和8年)度の診療報酬改定後の点数表でも300点で、1点10円で計算すると3,000円です。

自己負担の割合 訪問看護指示料300点の負担額の目安
1割 300円
2割 600円
3割 900円

この費用は医療保険の診療報酬として、指示書を出した医療機関の窓口で支払います。介護保険で訪問看護を利用する場合でも、指示料は医療保険で算定されるため、ご家族には「訪問看護の利用料とは別に、医療機関で指示書の費用がかかる」と伝えておくと誤解を防げます。指示料は毎月自動的にかかるものではなく、指示書を交付した月に算定されます。

訪問看護指示書が交付されるまでの流れ

指示書は、本人や家族が直接医師に頼むこともありますが、実際には訪問看護ステーションやケアマネジャーが間に入って依頼することが一般的です。相談から訪問開始までを順に見ていきます。

最初の相談先

訪問看護を利用したいと考えたときの相談先は、かかりつけ医、ケアマネジャー、訪問看護ステーションのいずれでも構いません。入院中であれば、病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援の看護師が窓口になります。

介護保険で利用する場合は、訪問看護をケアプランに位置づける必要があるため、ケアマネジャーが早い段階から関わります。要介護認定をまだ受けていない方は、医療保険での利用になるのか、認定申請を並行して進めるのかも、この段階で整理しておきます。

主治医への依頼のしかた

介護保険の場合、ケアマネジャーは訪問看護などの医療サービスを希望する利用者について、同意を得て主治医の意見を求め、主治医の指示がある場合に限りケアプランに位置づけることとされています。意見を求めた主治医には、作成したケアプランを交付します。

実務では、利用予定の訪問看護ステーションが主治医に依頼書を送り、指示書の作成をお願いする流れが多く見られます。依頼の際は、訪問看護で何をしてほしいのか(服薬管理、褥瘡の処置、カテーテルの管理、リハビリなど)と、訪問開始の希望日を具体的に伝えると、主治医も内容を判断しやすくなります。

指示書の交付から契約まで

指示書は医師の診察にもとづき、医療機関の責任で作成して訪問看護ステーションに交付します。通知では、患者の求めに応じて、本人や家族を介してステーションに渡すこともできるとされています。

指示書が届くと、訪問看護ステーションは本人・家族と面談し、サービス内容や料金の説明を行って契約を結びます。契約の前に指示書の有効期間の開始日を確認し、訪問開始日がその期間内に入っているかを見ておくと、初回訪問が延期になる事態を避けられます。

訪問開始後の主治医との連携

訪問が始まると、訪問看護ステーションは訪問看護計画書と訪問看護報告書を主治医に提出し、主治医と連携しながら看護を進めます。医療保険の訪問看護では、病状に応じて訪問看護を続ける必要があるかを定期的に主治医と相談することも運営基準に定められています。

ケアマネジャーにとっては、この報告書の内容が次の指示書の期間や内容を考える材料になります。サービス担当者会議で訪問看護師から状態の変化を聞き取り、必要に応じて主治医への情報提供につなげると、指示内容と実際の生活とのずれを小さくできます。

更新・主治医の変更と関連する指示書

訪問看護を長く続けるほど、指示書の更新や主治医の交代といった手続きが発生します。関連する指示書の種類とあわせて、つまずきやすい点を確認します。

有効期間が切れる前の更新

有効期間が終わる前に、新しい指示書を主治医に交付してもらう必要があります。有効な指示書がない期間は訪問看護を提供できないため、訪問看護ステーションは期限が近づくと主治医へ更新を依頼するのが一般的です。

更新のたびに訪問看護指示料がかかる点も、ご家族には伝えておきたいところです。長めの期間で指示を受けていれば更新の回数は減りますが、期間は病状を踏まえて主治医が判断するため、希望があれば理由を添えて相談します。

主治医が変わったときの扱い

通院先を変えた、訪問診療を始めた、転居したなどの理由で主治医が変わった場合は、前の指示書の有効期間内であっても、新しい主治医から指示書を交付してもらいます。前の主治医の指示書を引き継いで使用し続けることはできないと考えておきましょう。

とくに入院をきっかけに主治医が変わる場合は、退院日と新しい指示書の開始日がずれやすくなります。退院支援の段階で、医療ソーシャルワーカーとケアマネジャーが退院後の主治医と指示書の発行時期を共有しておくと、訪問が途切れる期間を防げます。

複数の訪問看護ステーションを利用する場合

頻回の訪問が必要な方などは、条件を満たすと複数の訪問看護ステーションを利用できます。その場合、主治医はそれぞれのステーションに指示書を交付し、指示書には他のステーションにも交付している旨とその名称を記載します。

指示料は同じ月に複数のステーションへ交付しても月1回が限度とされているため、ステーションの数に応じて費用が増えるわけではありません。ただし、担当の分担は指示書の内容とケアプランの両方で整理しておきましょう。

訪問看護指示書に関連する書類

訪問看護には、通常の訪問看護指示書のほかに、目的に応じた指示書があります。名前が似ているため、どの書類がどの場面で使用されるのかを押さえておくと、医療機関とのやり取りがスムーズになります。

書類の名前 主な役割
特別訪問看護指示書 急性増悪や終末期、退院直後などで一時的に頻回の訪問が必要なときに交付される
精神科訪問看護指示書 精神疾患のある方への訪問看護について、精神科の医師が交付する
在宅患者訪問点滴注射指示書 週3日以上の点滴注射が必要なときに、有効期間7日以内で交付される

特別訪問看護指示書は、通常の訪問看護指示書が交付されていることが前提で、単独では訪問看護を始められないとされています。交付の場面や期間の詳しい扱いは、特別訪問看護指示書をテーマにした別の記事で解説します。

よくある質問

Q. 訪問看護指示書は病院の医師と診療所の医師のどちらに頼めばよいですか?

A. 病院・診療所のどちらでも、患者が選んだ主治医であれば交付できます。退院時は入院先の医師が交付でき、その後は通院先や訪問診療の医師が引き継ぐことが多いため、退院前に誰が更新を担当するかを決めておくと安心です。

Q. 訪問看護指示書の有効期間はどれくらいですか?

A. 主治医が病状に応じて決め、最長は6か月です。指示期間の記載がない場合は、指示日から1か月が有効期間として扱われます。

Q. 訪問看護指示書の費用は誰が払いますか?

A. 指示書を交付した医療機関が訪問看護指示料(300点)を算定し、患者は医療保険の自己負担割合に応じて窓口で支払います。1割負担なら300円、3割負担なら900円が目安で、介護保険で訪問看護を利用する場合も医療保険で算定されます。

まとめ

訪問看護指示書は、医療保険・介護保険のどちらで訪問看護を利用する場合にも必要な、主治医からの文書による指示です。発行できるのは患者が選んだ主治医で、退院時は入院先の医師も交付できます。有効期間は最長6か月で、記載がなければ1か月として扱われ、交付のたびに医療機関で300点の訪問看護指示料がかかります。

訪問看護を検討し始めた段階で、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーが本人・家族と「誰に指示書を頼むか」「いつから訪問を始めたいか」を整理し、訪問看護ステーションを通じて主治医に依頼するのが基本の進め方です。退院や通院先の変更が決まったときは、その時点で新しい主治医と指示書の開始日を確認しておきましょう。

この記事のまとめ

  • 訪問看護は保険の種類を問わず主治医の文書による指示がなければ始められない
  • 指示書の有効期間は最長6か月で、期間の記載がなければ1か月
  • 指示料は300点で、1割負担なら300円を医療機関の窓口で支払う
  • 主治医が変わったら有効期間内でも新しい指示書を交付してもらう