ショートステイを嫌がるときは?本人の不安に合わせた準備と家族の対応

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ケアマネジャーからショートステイを勧められ、予約まで済ませたのに、本人が「行きたくない」「家にいる」と首を横に振る。無理に連れて行ってよいのか、このまま家族が休めずに介護を続けるしかないのかと、悩みを抱えるご家族は少なくありません。

この記事では、嫌がる主な理由とその確かめ方、利用前の準備、伝え方や当日・帰宅後の対応、家族の罪悪感との向き合い方やサービスの見直し方までを、介護の現場でよく見聞きする場面を交えて整理しました。

この記事でわかること

  • ショートステイを嫌がる主な理由と本人の気持ちの確かめ方
  • 見学や短い日数での利用など嫌がる本人に合わせた事前準備
  • 本人への伝え方と当日・利用中・帰宅後の対応
  • 家族の罪悪感への向き合い方とケアマネジャーへの相談・見直しの選択肢

ショートステイを嫌がる主な理由

ショートステイは、施設に短期間泊まって食事や入浴などの介護を受けるサービスです。嫌がる背景にはいくつかの気持ちが重なっていることが多いため、代表的な理由から見ていきます。

慣れない環境で過ごすことへの不安

住み慣れた家や決まった生活リズムが心の支えになっている方は多くいます。知らない建物や初めて会う人、いつもと違う食事や寝具のなかで数日を過ごすことは、想像以上に大きな負担になることがあります。

環境の変化によるストレスは、一時的に時間や場所がわからなくなる「せん妄」のきっかけになることもあるとされています。嫌がる気持ちの根っこに「知らない場所への不安」がある場合は、説得よりも場所や人に慣れる機会を増やすほうが近道です。

家族に見捨てられるのではという気持ち

「施設に泊まる」と聞いて、そのまま施設に入れられてしまうのではないかと受け取る方もいます。以前から「施設には入りたくない」と話していた方は、とくに不安を感じやすいものです。

この場合、嫌がっているのは「家族との関係が変わること」です。帰る日と、家族が迎えに来ることを繰り返し伝えるだけで、表情が和らぐ方もいます。

認知症で泊まる目的を理解しにくい

認知症があると、説明した内容を忘れたり、「なぜ泊まるのか」「いつ帰れるのか」がつかめなかったりすることがあります。理由がわからないまま知らない場所に行く状況は、怖さや混乱につながりやすいものです。

認知症介護研究・研修東京センターの資料では、認知症の行動・心理症状(BPSD)の多くを、本人の満たされないニーズが表に出たものと捉える考え方が示されています。「帰りたい」という言葉の背景にも、「ここがどこかわからなくて不安」「娘に会いたい」など様々な思いが隠れている可能性があります。そのため、「帰りたい」という言葉を単なる拒否やわがままとして片づけるのではなく、本人が何を求めているのか、何に不安を感じているのかを考えることが対応の出発点になります。

過去の嫌な体験から来る集団生活への抵抗

以前の利用で眠れなかった、食事が口に合わなかった、ほかの利用者とうまくいかなかったといった経験があると、「またあそこに行くのか」と身構えるのは自然なことです。集団生活そのものを窮屈に感じる方もいます。

入浴への抵抗もよく聞かれます。家族以外の人に裸を見られる恥ずかしさや、慣れない浴室で転ぶ怖さが、「風呂に入れられるから嫌だ」という言葉につながっている場合があります。

ショートステイを嫌がる理由の確かめ方

理由を確かめるときは、「どうして行かないの?」と問い詰めるのではなく、落ち着いているときに「泊まることのどんなところが心配?」と開かれた質問で聞いてみます。厚生労働省の認知症の人の意思決定支援ガイドラインでも、本人が安心できる態度で接すること、決断を迫って焦らせないことが大切とされています。

言葉だけでは背景が見えにくいときは、前回の利用記録や施設職員の話も手がかりになります。言葉と背景、確かめ方の例は次のとおりです。

本人の言葉の例 考えられる背景 確かめ方の例
知らないところは嫌だ 慣れない環境への不安 見学時の表情や、どの場面で緊張したかを見る
もう帰ってこられないんだろう 見捨てられる不安 帰る日を伝えたときの反応を見る
なんで行かなきゃいけないの 目的や日程が理解しにくい 説明を短くして何度か伝え、覚えている内容を確かめる
あそこは眠れない 過去の嫌な体験 施設に前回の夜間の様子を聞く
風呂は家で入る 入浴への恥ずかしさや怖さ 同性介助や入浴の方法を施設に相談できるか確認する

ショートステイを嫌がる本人に合わせた利用前の準備

嫌がる理由の見当がついたら、本人が少しでも安心して泊まれるよう準備を整えましょう。

見学で施設の雰囲気を一緒に確かめる

利用前に本人と一緒に施設を見学すると、「知らない場所」が「一度行ったことのある場所」に変わります。居室や食堂の雰囲気、職員の話し方を本人の目で確かめてもらえます。

見学は本人の体調がよく、落ち着いている時間帯を選び、短時間で切り上げるのが無難です。案内してくれた職員の名前を覚えておき、当日「この前の〇〇さんがいるよ」と伝えられると、安心材料が一つ増えます。

1泊2日など短い日数から始める

最初から数日間の利用を組むと、本人にも家族にも負担が大きくなりがちです。施設によっては1泊2日から受け入れている場合があるため、まず短い日数で「泊まって帰ってこられた」という経験を積むことを考えます。

同じ施設で通所介護(デイサービス)を行っている場合は、日中の利用で慣れてから泊まりに移る方法もあります。うまくいけば少しずつ日数を延ばします。

なじみの物で安心できる居場所をつくる

使い慣れた枕やひざ掛け、家族の写真、いつも読んでいる雑誌など、自宅の空気を感じられる物を持って行くと、慣れない居室でも落ち着きやすくなります。認知症のケアでは、本人が落ち着いて過ごせる「なじみの場所」や、安心できる人との「なじみの関係」があるかどうかが大切とされています。

持ち込める物は施設ごとに決まりがあるため、事前に確認しておきましょう。持ち物全体の準備は別の記事で解説しています。

本人の生活習慣を施設に伝える

起床や就寝の時刻、トイレに行くタイミング、好きな話題や苦手なこと、呼ばれ慣れている呼び名などを、あらかじめ施設に伝えておきましょう。職員が本人のペースを知っていれば、家に近い過ごし方に寄せてもらいやすくなります。

入浴が不安なら介助の方法を、夜眠れないことが心配なら夜間の見守り方を、あわせて相談しておきます。

本人が納得しやすい伝え方から帰宅後までの対応

準備が整っても、どう伝えるか、当日どう送り出すかで悩むご家族は多いものです。伝え方と、利用中から帰宅後までの対応を順に見ていきます。

正直に伝えるか言い方を工夫するかの考え方

「嘘をついてでも連れて行くべきか」は、多くのご家族が迷う点です。事実と違う説明で送り出すと、施設に着いてから「だまされた」と感じ、次回以降の利用や家族への信頼に影響することがあります。厚生労働省のガイドラインでは、本人が理解できるよう、分かりやすい言葉でゆっくり説明することが示されています。基本的には、本人の理解に合わせて事実を伝えることが大切です。

説明をすぐに忘れてしまう場合も、その都度丁寧に説明しましょう。一度に全部を伝えようとせず、「水曜日に迎えに行く」「家族が少し休む時間をつくる」など、事実に沿った内容で短く、同じ言葉で繰り返します。伝え方に迷うときは、ケアマネジャーや施設職員と事前に説明方法を相談しておくと、家族と職員で説明が食い違うことを防げます。

ショートステイを嫌がる本人への声かけ

声かけでは、家族の都合を前面に出すより、本人にとっての意味や帰る日の見通しを伝えます。何度も同じことを聞かれても、そのたびに短く同じ言葉で答えましょう。

置き換えの例は次のとおりです。「施設に伝えてある」「施設にお願いしてある」などの表現は、実際に施設へ相談・確認した内容に限って使いましょう。

避けたい言い方 置き換えの例 ねらい
決まったことだから行って 水曜日に迎えに行くから、2晩だけ泊まってきてね 帰る日の見通しを伝える
こっちも疲れているんだから 少し休ませてもらえると、また元気に一緒に過ごせるよ 本人を責めずに理由を伝える
嫌なら行かなくていいよ(直前の撤回) 心配なところを施設の人に伝えてあるよ 不安を受け止めつつ予定を保つ

帰る日はカレンダーに印をつけたり、紙に書いて持たせたりすると、施設でも本人が見返せます。

送り出しの当日から利用中までの関わり方

当日は慌ただしくならないよう、荷物は前日までにまとめておきます。家族の不安は本人にも伝わりやすいため、送り出しは明るく短めにし、「水曜日に迎えに行くね」と帰る日を伝えておきましょう。

利用中に様子が気になるときは、施設に電話で状況を聞いてかまいません。ただし本人と話すと「帰りたい」気持ちが強まる場合もあるため、話すかどうかは職員と相談します。

帰宅後の見守りを次回の利用に生かす

帰宅直後は、疲れや緊張がほぐれて眠りがちになったり、反対に落ち着かなくなったりすることがあります。数日は予定を詰め込まず、いつもの生活リズムに戻すことを優先し、「おかえり」「頑張ったね」と労います。

そのうえで、施設の記録や職員の話と本人の言葉を突き合わせて振り返ります。具体的な情報は、次回の改善点にも、ケアマネジャーへの相談材料にもつながります。

家族が罪悪感を抱えずにショートステイを続けるには

嫌がるなかで利用を続けることに、後ろめたさを感じるご家族は少なくありません。家族が休むことの意味と、合わないときの見直し方を整理します。

罪悪感を和らげるレスパイトケアの考え方

介護を担う家族が一時的に介護から離れて休息をとることを「レスパイトケア」と呼び、ショートステイはその代表的なサービスです。厚生労働省の説明でも、ショートステイの目的として本人の心身機能の維持回復とあわせて、家族の介護負担の軽減が挙げられています。

家族が倒れてしまえば、在宅での介護は続けられなくなります。休むことは本人を見放すことではなく、自宅での暮らしを長く続けるための大切な時間です。ショートステイは一時的に施設で過ごすサービスであり、「また家に帰ってくる」ことを前提に利用するものだと捉えてみましょう。

ケアマネジャーに相談するタイミング

本人の拒否が続くときは、次回の予約を入れる前にケアマネジャーへ相談します。嫌がった場面や言葉、施設の記録、家族の疲れ具合を具体的に伝えると、ケアプランの見直しにつなげやすくなります。

ショートステイの連続利用は30日までで、ケアプラン上の利用日数も要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないことが目安とされています。日数を増やしたい場合も、減らして様子を見たい場合も、制度の範囲を含めてケアマネジャーと組み立て直しましょう。

施設の変更を含むサービスの見直し方

同じ施設で嫌がり続ける場合は、施設を変えることも選択肢です。規模や雰囲気、個室かどうかで過ごしやすさは変わります。医療的な管理が必要な方には、介護老人保健施設(老健)などで医療や看護を受けながら泊まる短期入所療養介護もあります。

泊まりの前に通う場所や人に慣れておきたい場合は、小規模多機能型居宅介護も検討できます。1つの事業所で「通い」を中心に「訪問」と「泊まり」を組み合わせるサービスで、どのサービスでもなじみの職員が対応する点が特徴です。サービスを見直す際の主な選択肢は次のとおりです。

選択肢 向いている場面 確認しておきたい点
別のショートステイ施設に変える 今の施設の雰囲気や過去の体験が理由の場合 規模、個室の有無、入浴の方法
日数を減らす、間隔をあける 長い日数の利用が負担になっている場合 家族の休息が十分とれるか
短期入所療養介護を利用する 医療的な管理が必要で不安が強い場合 受け入れ可能な医療的ケアの範囲
小規模多機能型居宅介護に切り替える なじみの職員と場所に慣れてから泊まりたい場合 ケアマネジャーの交代と月額定額の費用

小規模多機能型居宅介護は要介護度別の月単位の定額で、事業所の介護支援専門員がケアプランを担うため、担当のケアマネジャーが替わることになります。事業所ごとに泊まりの定員や空きも異なるため、変わる点を確認したうえで判断しましょう。

よくある質問

Q. 本人が嫌がっていても、ショートステイを利用してよいのでしょうか?

A. 家族が休むことは在宅介護を続けるために大切で、利用そのものが悪いわけではありません。ただし、まず本人の気持ちを聞いて嫌がる理由を確かめ、見学や短い日数から始めるなど不安を減らす準備を組み合わせることが大切です。。

Q. 認知症の親に「泊まり」だと伝えないほうがよいですか?

A. 事実と違う説明は、施設で「だまされた」と感じて次回以降の利用に影響することがあるため、本人の理解に合わせて事実を伝えるのが基本です。説明を忘れやすい場合は、短い言葉でその都度丁寧に伝え、ケアマネジャーや施設職員と説明方法をそろえておくと混乱を防げます。

Q. 何度利用しても嫌がる場合はどうすればよいですか?

A. 次の予約の前にケアマネジャーへ相談し、施設を変える、日数を減らす、小規模多機能型居宅介護に切り替えるなどの見直しを検討します。嫌がった場面や施設の記録を具体的に伝えると、本人に合う方法を見つけやすくなります。

まとめ

本人がショートステイを嫌がる背景には、慣れない環境への不安、家族に見捨てられるのではという気持ち、認知症による理解の難しさ、過去の体験や入浴への抵抗などが重なっていることがあります。理由を確かめたうえで、見学や短い日数での利用、なじみの物、伝え方の工夫を組み合わせると、受け入れやすくなるケースもあります。

本人の拒否が続くときや、家族の疲れが限界に近いと感じたときは、次の利用予約を入れる前に担当のケアマネジャーへ相談してください。嫌がった場面や施設の記録を持ち寄り、施設や日数、サービスの組み合わせを見直すことで、本人と家族の双方が無理なく続けられる形を探せます。

この記事のまとめ

  • 嫌がる言葉の裏にある不安の種類を見極めることが対応の出発点
  • 見学と1泊程度の短い利用から慣らし、なじみの物で安心感を補う
  • 事実と違う説明は避け、帰る日の見通しを短い言葉で繰り返し伝える
  • 拒否が続くときはケアマネジャーと施設・日数・サービスを見直す