レビー小体型認知症とは?特徴的な症状と家族が知っておきたい接し方
高齢の家族が「部屋のすみに見知らぬ人が立っている」と訴えたり、昨日はかみ合っていた会話が今日はまったく通じなかったりすると、ご家族はどう受け止めればよいのか戸惑ってしまうものです。レビー小体型認知症は、こうした幻視や調子の波など、アルツハイマー型認知症とは少し違う症状が現れる認知症です。
この記事では、レビー小体型認知症とはどのような病気なのか、現れやすい症状の特徴、診断と治療で知っておきたいこと、そして家族が日々の暮らしで取り入れたい接し方と環境の工夫をまとめました。
この記事でわかること
- レビー小体型認知症の特徴とアルツハイマー型認知症との違い
- 認知機能の変動・幻視・パーキンソン症状など現れやすい症状
- 診断の流れと、薬を使うときに注意したいこと
- 家族が取り入れたい声かけと暮らしの工夫
レビー小体型認知症とはどんな病気か
レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症と同じく高齢者に多い認知症ですが、現れる症状の組み合わせに特徴があります。まず、どのような病気で、アルツハイマー型認知症と何が違うのかを確認します。
特徴的な症状が重なる認知症
レビー小体型認知症は、脳の神経細胞のなかにレビー小体と呼ばれるたんぱく質の塊がたまり、脳の広い範囲の働きが低下していく病気です。もの忘れなどの認知機能の低下だけでなく、幻視、体の動きにくさ、睡眠中の異常行動、自律神経の不調などが重なって現れます。
国内で報告されている認知症の原因疾患別の割合は、アルツハイマー型認知症が67.6%、血管性認知症が19.5%、レビー小体型認知症または認知症を伴ったパーキンソン病が4.3%です。この3つの区分で約9割を占めるとされています。レビー小体型の数値は、パーキンソン病による認知症と合わせた区分である点に注意が必要です。
アルツハイマー型認知症との違い
同じ認知症でも、初期に目立ちやすい症状や進み方は異なります。レビー小体型認知症では、新しい出来事を覚えられないという記憶障害よりも、注意力の低下や、物の位置や形をとらえる力(視空間認知)の障害が目立つことがあります。
| 項目 | アルツハイマー型認知症 | レビー小体型認知症 |
|---|---|---|
| 初期に目立ちやすい症状 | 新しい出来事の記憶障害 | 注意力・視空間認知の障害、幻視 |
| 症状の変化のしかた | 比較的なだらかに変化することが多い | 日や時間帯によって大きく変動することがある |
| 体の動き | 初期には目立ちにくい | 動作の緩慢、筋肉のこわばり、歩行の変化が比較的早く現れることがある |
| 睡眠中の行動 | 目立ちにくい | 大声を出す、手足を動かすなどの行動がみられることがある |
ただし、両方の変化が併存することもあり、症状の出方だけで区別できるものではありません。
パーキンソン病との関係
レビー小体型認知症は、パーキンソン病と同じくレビー小体が関係する病気です。症状が現れる順番によって病名が分けられ、認知症が先に現れた場合、またはパーキンソン症状とほぼ同時に現れた場合をレビー小体型認知症、パーキンソン病と診断されてから1年以上経って認知症が現れた場合をパーキンソン病認知症として区別します。
現れやすい症状の特徴
レビー小体型認知症では、次の4つが中核的な症状とされています。これに自律神経の症状を加えて、それぞれの現れ方を見ていきます。
| 症状 | 現れ方 |
|---|---|
| 認知機能の変動 | 意識がはっきりしている時間と、ぼんやりして反応が鈍い時間が、日や時間帯によって大きく変わる |
| 繰り返し現れる具体的な幻視 | 人や動物などが実際にそこにいるように見え、内容が具体的で繰り返し現れる |
| レム睡眠行動障害 | 睡眠中に大声を出したり、夢の内容に合わせて手足を動かしたりする |
| パーキンソン症状 | 動作が緩慢になる、筋肉がこわばる、歩幅が小さくなる、姿勢が不安定になる |
これらがすべて同じように現れるわけではなく、出方には個人差があります。
認知機能が一日のなかで変動する
レビー小体型認知症の大きな特徴は、認知機能が一日のなかで大きく変動することです。朝は会話が通じていたのに、昼過ぎにはぼんやりして反応が鈍くなる、夕方にはまた話が通じる、といった具合です。この変動は、覚醒度や注意力の変化によるものと考えられています。
ご家族からすると「さっきはできていたのに」と感じ、本人の努力不足のように見えてしまうことがあります。調子の悪い時間帯の様子を、その人の本来の状態だと受け取らないことが大切です。
具体的で繰り返す幻視
幻視は、レビー小体型認知症でとくに目立つ症状です。小さい子ども、知らない人、動物などが「実際にそこにいる」ように見え、内容が具体的で、繰り返し現れるのが特徴とされています。「何か見える気がする」というあいまいなものではなく、姿かたちまではっきり見えることが少なくありません。
幻視は、夕方から夜の薄暗い時間帯に現れやすく、不安が強くなっているときほど強く感じられる傾向があります。時間帯と部屋の明るさを記録しておくと、どんな環境で幻視が起きやすいのかが見えてきます。日中の明るさを保ち、廊下やトイレの照明をこまめにつけておくことも、症状をやわらげる助けになります。
パーキンソン症状
体の動きにも変化が現れます。動作が緩慢になる、筋肉がこわばる、歩幅が小さくなってすり足になる、姿勢が前かがみになって不安定になる、といった症状です。パーキンソン病では手足のふるえが目立ちますが、レビー小体型認知症ではふるえが目立たず、左右の差が少ない形で現れることがあります。
歩行が不安定になると転びやすくなるため、環境の見直しと介助の方法を早めに整えておくことが重要です。
レム睡眠行動障害
睡眠中に大声を出したり、叫んだり、手足を大きく動かしたりする症状です。レム睡眠のあいだは通常、体の筋肉がゆるんで動かないようになっていますが、この仕組みが十分に働かず、夢の内容がそのまま行動として現れます。「夢のなかで追いかけられて走っていた」といった内容に合わせて、本人が起き上がったり、殴る・蹴るといった動きをしたりすることがあります。
本人がベッドから落ちたり、隣で寝ているご家族がけがをしたりすることがあるため、安全面の配慮が必要です。レビー小体型認知症やパーキンソン病では、この症状が認知機能の低下や体の動きの変化よりも先に現れることがあります。
自律神経症状
体内の調整を行う自律神経の働きも影響を受けます。立ち上がったときに血圧が下がってふらつく起立性低血圧、失神、便秘、排尿のトラブルなどがみられます。とくに便秘は多くみられ、何日も排便がない状態が続くと腸閉塞につながることがあるため注意が必要です。
立ちくらみは転倒の原因になるため、立ち上がるときは急がず、動作を分けて行うよう声をかけます。排便の有無や水分量、食事中のむせは、記録しておくと受診のときに役立ちます。
診断と治療で知っておきたいこと
レビー小体型認知症の診断は、症状の組み合わせだけでは確定できません。診断の流れと、治療で気をつけたい点を確認します。
診断はどのように進むか
診断は、本人とご家族への問診、認知機能検査、神経学的な診察、血液検査、頭部MRIやCT、脳血流の検査、MIBG心筋シンチグラフィーなどを組み合わせて行われます。睡眠中の行動が目立つ場合は、睡眠ポリグラフ検査で確認することもあります。
ご家族が、いつごろからどんな症状がどのくらいの頻度で起きているかを具体的に伝えられるかどうかが、診断の精度に影響します。
治療の基本と、薬への過敏性
治療は、認知機能の低下に対する薬物療法と、症状に合わせた生活の工夫やケアを組み合わせて進められます。日本では、レビー小体型認知症の認知機能障害に対してドネペジルが保険適用となっており、幻視への有効性も報告されています。
一方で、レビー小体型認知症では薬に対する過敏性が知られています。とくに抗精神病薬は、少量でも強い副作用が出たり、体の動きが急に悪くなったりすることがあるため、安易に使わないことが原則とされています。ご家族が医療機関を受診した際は、レビー小体型認知症という診断名を必ず伝えてください。
新しい薬が始まったあとに、眠気やふらつき、幻視の悪化が出たときは、自己判断で中止せず、早めに処方した医師へ連絡することが大切です。
レカネマブなど新しい治療の対象になるか
アルツハイマー型認知症では、アミロイドβを標的とする薬(レカネマブ)が使えるようになりました。ただし、この薬の承認された効能・効果はアルツハイマー病による軽度認知障害と軽度の認知症であり、レビー小体型認知症は対象に含まれていません。
アルツハイマー型認知症の変化が併存している場合の扱いは個別に判断されるため、対象になるかどうかは主治医に確認が必要です。
家族が知っておきたい接し方と生活の工夫
レビー小体型認知症は、薬だけでは症状が安定しにくく、日々の環境や関わり方が状態に影響します。家庭で取り入れやすい工夫を紹介します。
幻視を否定せず、安心につなげる
幻視への対応で基本になるのは、否定しないことです。本人が見ているものは本人にとって現実です。「そんなはずはない」と言い張るより、「そう見えるのですね」「確認してみましょう」と受け止め、そばに寄って一緒に見に行くと、近づいたときに消えることがあります。
同時に、見間違いのもとになるものを減らします。壁に掛けたままの衣類や洗濯物、人や動物に見える置物などは幻視のきっかけになり得ます。部屋全体を均一に明るくし、影ができにくい環境を整えると、落ち着いて過ごせる時間が増えます。
ただし、幻視に強い恐怖を伴う場合や、幻視を理由に外へ出ようとする場合は、安全の確保を優先し、主治医に相談してください。
転倒を防ぐ環境づくり
レビー小体型認知症では、体の動きにくさと立ちくらみが重なるため、転倒のリスクが高くなります。とくに立ち上がるとき、入浴のあと、排便のあとは血圧が下がりやすく、注意が必要な場面です。
室内では、床に置いた新聞や雑誌、電気コード、厚みのあるカーペット、段差をなくし、浴室や脱衣所の水滴はその都度拭き取ります。階段や浴室の手すり、裾を引きずらないズボン、滑りにくい靴といった基本の見直しも効果的です。手すりの設置や浴室の改修は、介護保険の住宅改修の対象になる場合があります。
後ろから急に声をかけると、驚いて振り返ったはずみに転ぶことがあるため、必ず本人の正面から声をかけるようにしましょう。移動の介助は、理学療法士や作業療法士に実際の家のなかで確認してもらうと、無理のない方法が分かります。
調子がよい時間帯を活かす
症状が変動するということは、調子のよい時間帯もあるということです。その時間帯に、歩行の練習や軽い体操、入浴、外出といった活動を集め、反応が鈍い時間帯は無理に活動を促さず見守るという組み立て方が、本人の負担を減らします。
夕方から夜にかけて状態が悪くなりやすい場合は、早めに照明を明るくするといった先回りの対応が有効です。長時間の昼寝を避け、日中に適度な活動を取り入れ、毎日の流れを一定に保つことも、症状の波を小さくする助けになります。
便秘・脱水・むせへの気配り
自律神経症状の一つである便秘は、放置すると腸閉塞につながることがあります。排便のあった日を記録し、水分をこまめにとり、食物繊維を含む食品を意識して取り入れ、体を動かす時間をつくります。下剤の量は自己判断で増減せず、主治医に相談してください。
高齢になるとのどの渇きを感じにくくなり、脱水は血圧をさらに下げて立ちくらみや転倒につながります。のどが渇く前に少量ずつ飲む習慣をつくり、食事中のむせを見守りましょう。むせが増えてきた場合は、飲み物のとろみや食事の形態を、医師や言語聴覚士、管理栄養士と相談して調整します。
相談先と介護保険サービスの使い方
診断や治療の相談は、かかりつけ医に加えて、脳神経内科や精神科、もの忘れ外来、認知症疾患医療センターが担います。とくに薬の調整が難しい場合や、症状が急に変わった場合は、専門の医療機関につないでもらうことが大切です。
生活面の支援は、市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに相談し、要介護認定を受けてからケアマネジャーとケアプランを組み立てます。訪問介護、訪問看護、通所介護、訪問リハビリテーション、短期入所、福祉用具貸与、住宅改修などが候補です。症状の波があることを伝え、同じ職員が継続して関わる事業所を選ぶと、本人が落ち着きやすい環境がつくれます。
この病気は、ご家族が一人で抱えやすいものです。国立長寿医療研究センターも、介護者が頑張りすぎず自分の時間を確保することの重要性を挙げています。認知症カフェや家族教室など、同じ立場の人が集まる場に早くつながっておくことで、相談先を増やすこともできるかもしれません。
よくある質問
Q. レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症は、どう見分ければよいですか?
A. 初期に目立ちやすい症状に違いがあり、レビー小体型認知症では幻視や注意力の変動、体の動きにくさが現れやすいとされています。ただし症状だけで確実に区別することはできず、画像検査や睡眠の検査などを組み合わせて専門医が診断します。
Q. 幻視で「知らない人がいる」と言うとき、どのように答えればよいですか?
A. 頭ごなしに否定せず、「そう見えるのですね」と受け止め、そばに寄って一緒に確認する対応が勧められています。幻視が出た時間帯や照明、周囲の物を記録し、暗さや見間違いのもとになる物を減らすことも効果的です。
Q. 使ってはいけない薬があると聞きましたが、本当ですか?
A. レビー小体型認知症では抗精神病薬への過敏性があり、安易に使用しないことが原則とされています。ハロペリドールは使用禁忌とされています。受診の際は、レビー小体型認知症という診断名を必ず医療機関に伝えてください。
まとめ
レビー小体型認知症は、脳の神経細胞にレビー小体というたんぱく質の塊ができることで起こる認知症で、認知機能の変動、具体的で繰り返す幻視、パーキンソン症状、レム睡眠行動障害の4つが中核的な症状です。アルツハイマー型認知症に比べて注意力や視空間認知の障害、体の動きの変化が早く現れやすく、症状が日や時間帯によって大きく変動します。抗精神病薬への過敏性があるため、薬を使うときには慎重な判断が必要です。
日々の暮らしでは、幻視を否定せずに受け止めること、転倒を防ぐ環境を整えること、調子のよい時間帯に活動を集めることが、状態を安定させる助けになります。便秘や脱水、食事中のむせは重い病気につながることがあるため、記録しながら見守りましょう。診断や薬のことはかかりつけ医と認知症疾患医療センターなどの専門機関に、生活の支援は地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、ご家族だけで抱え込まないようにしてください。
この記事のまとめ
- レビー小体型認知症は認知機能の変動・幻視・レム睡眠行動障害・パーキンソン症状が重なる認知症
- 認知症全体に占める割合は、レビー小体型とパーキンソン病による認知症を合わせて4.3%と報告されている
- 抗精神病薬への過敏性があるため、薬は安易に使わず専門医の判断を受ける
- 幻視を否定しない声かけと、転倒を防ぐ環境づくりが暮らしを支える