特別訪問看護指示書とは?交付される場面・期間と通常の指示書との違い
訪問看護を週2回ほど利用していた利用者が、肺炎で急に状態を崩したり、病院から予定より早く退院してきたりすると、「しばらく毎日来てもらえないか」という相談が家族から寄せられることがあります。そのとき担当のケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーが迷いやすいのが、特別訪問看護指示書が出たあとの保険の扱いや、ケアプランをどう組み直すかという点です。
この記事では、特別訪問看護指示書がどのような場面で交付されるのか、有効期間と交付回数、期間中に訪問看護が医療保険へ切り替わる仕組みを、2026年(令和8年)度の診療報酬改定後の告示・通知にもとづいて整理します。通常の指示書との違い、期間終了後の扱い、費用の説明の要点もまとめました。
この記事でわかること
- 特別訪問看護指示書の役割と交付される主な場面
- 有効期間14日の考え方と月あたりの交付回数
- 指示期間中の保険の切り替えと訪問回数の変化
- 期間終了後の扱いとケアプラン・費用の調整点
特別訪問看護指示書の役割と交付される場面
特別訪問看護指示書は、状態が一時的に悪くなった方に、ふだんより多くの訪問看護を届けるための指示書です。まず誰がどんな理由で交付するのかを確認します。
特別訪問看護指示書とは
特別訪問看護指示書は、在宅で療養している方の主治医が、診療にもとづいて「一時的に頻回の訪問看護が必要」と判断したときに、本人の同意を得て訪問看護ステーションへ交付する指示書です。診療報酬の通知では、急性増悪、終末期、退院直後などの事由により、週4回以上の頻回な訪問看護を一時的に行う必要がある場合と定められています。
通知では、ここでいう「一時的」は恒常的に頻回の訪問が必要な状態ではなく、状態の変化で日常の回数では対応できない場合と説明されており、その理由は指示書に記載されます。長く毎日の訪問が必要な状態が続くなら、特別指示を繰り返すのではなく、療養の場やサービスの組み方そのものを見直すことを考えるとよいでしょう。
急性増悪で交付される場面
もっとも多いのは、持病の悪化や感染症などで状態が急に不安定になった場面です。たとえば誤嚥性肺炎や尿路感染症で発熱が続き、点滴や頻回の観察が必要になったものの、自宅での療養を続けると主治医が判断したケースなどが挙げられます。
訪問看護師が毎日状態を見て主治医へ報告することで、入院せずに乗り切れる場合もありますが、対応に限界があれば入院を勧められることもあります。家族には「入院の代わりではなく、自宅で様子を見るための一時的な手厚い体制」と伝えておくと誤解が生まれにくくなります。
終末期で交付される場面
自宅で最期を迎えたい方の終末期にも交付されます。食事や水分がとれなくなった時期や、痛みや呼吸の苦しさが強まった時期には、毎日の訪問が必要になることが少なくありません。
ただし、末期の悪性腫瘍など厚生労働大臣が定める疾病等の方は、もともと医療保険の訪問看護の対象で、週4日以上の訪問も認められています。そのため特別訪問看護指示書が意味を持つのは、主に老衰や心不全、認知症の進行などによる終末期です。がん末期の方とそれ以外の終末期の方では頻回訪問の仕組みが異なる点を、主治医や訪問看護ステーションと共有しておくとよいでしょう。
退院直後に交付される場面
退院直後は、点滴や褥瘡の処置、服薬の管理などを家族だけで担うのが難しい時期です。医療的な処置や観察の必要が高いあいだ、主治医が特別訪問看護指示書を交付し、在宅生活が落ち着くまで訪問看護を手厚くする使い方もあります。
退院当日から訪問を増やしたい場合は、どの医師が指示書を出すのかを退院前カンファレンスの段階で医療ソーシャルワーカーが確認しておくと、準備がしやすくなります。
特別訪問看護指示書の有効期間と交付回数
特別訪問看護指示書には、有効期間と1か月に交付できる回数に上限があります。ここでは期間の数え方と、回数の例外、医療機関側の点数を整理します。
有効期間は最長14日
特別訪問看護指示書にもとづく頻回の訪問看護は、特別な指示を行った診療の日から14日以内に限って実施できます。また、 14日を超えて同じ指示書の期間を延長することはできません。期間が14日より短く設定される場合もあるため、指示書に書かれた期間を確認することが大切です。
たとえば月曜日の診療で交付された場合、最長で翌週の日曜日までが対象期間となります。主治医は交付後も病状に応じて期間を変更できるとされています。期間の初日と最終日を関係者で共有しておくと、保険の切り替えで混乱しにくくなります。
交付回数は原則月1回
特別訪問看護指示書の交付は、原則として患者1人につき月1回までです。月をまたいで状態が悪化した場合などは、翌月にあらためて交付されることがありますが、同じ月のうちに2回目を交付できるのは、次に述べる一部の状態の方に限られます。
月の前半に14日間を使い、後半に再び状態が悪くなっても、原則として同じ月に2回目の特別指示は受けられません。その場合は、通常の範囲での訪問調整や、ほかの介護サービスによる見守り、入院の検討などを主治医と考えます。
月2回の交付が認められる状態
気管カニューレを使用している方と、真皮を越える褥瘡のある方は、月2回まで特別訪問看護指示書を交付できます。褥瘡については、NPUAP分類のIII度またはIV度、あるいは日本褥瘡学会のDESIGN-R2020分類でD3、D4、D5にあたる深い褥瘡が対象とされています。
褥瘡は「浅いうちは月1回、深くなると月2回」と対象が変わるため、深さの評価は訪問看護師や主治医の記録で確認しておくと、2回目の交付が必要になったときに話が早く進みます。
特別訪問看護指示加算の点数
主治医の医療機関は、特別訪問看護指示書を交付したとき、訪問看護指示料300点に加えて特別訪問看護指示加算100点を算定します。2026年(令和8年)度の診療報酬点数表では、特別訪問看護指示加算は月1回(該当者は月2回)まで算定できます。
診療報酬は1点10円のため加算100点は1,000円にあたり、1割負担の方なら自己負担は100円ほどです。家計への影響が大きいのは、指示書そのものより、次の章で述べる訪問看護の費用の変化です。
特別指示期間中の保険の切り替えと通常の指示書との違い
特別訪問看護指示書が出ると、訪問看護の保険の種類と、受けられる回数が大きく変わることがあります。ここでは、介護保険を利用している方を例に、通常の訪問看護指示書の場合と比べながら、どのような変化があるのかを見ていきます。
介護保険の方も医療保険による訪問看護に切り替わる
要介護認定を受けている方の訪問看護は、原則として介護保険で提供されます。しかし特別訪問看護指示書が交付されると、介護保険の訪問看護費は指示の日から14日間算定されなくなり、その期間の訪問看護は医療保険の訪問看護療養費で提供されます。医療保険と介護保険のどちらが対象となるかという原則については、訪問看護の保険の違いを扱う記事で解説しています。
介護付き有料老人ホームなどの特定施設やグループホームに入居している方は、ふだんは医療保険の訪問看護療養費を算定できません。ただし特別訪問看護指示書にもとづく訪問看護は例外とされており、入居中でも指示期間中は医療保険で訪問看護を受けられます。施設入居中でも特別指示による訪問看護は利用できるため、状態が悪化したときの選択肢として施設側と共有しておくと安心です。
毎日の訪問が可能になる
医療保険の訪問看護は、通常は利用者1人につき週3日までが原則です。特別訪問看護指示書の期間中はこの制限の例外となり、週4日以上、状態によっては毎日の訪問を計画できます。
なお通知では、交付日の属する週と14日目の属する週は、特別指示の期間中に算定した日を除いて週3日が限度とされています。期間の前後の訪問日は、訪問看護ステーションと確認しておきましょう。
1日複数回の訪問が可能になる
特別訪問看護指示書の期間中は、必要に応じて1日に2回、3回以上と複数回の訪問も行えます。この場合、訪問看護ステーションは難病等複数回訪問加算を算定します。その額は1日の訪問回数や同じ建物に住む利用者の人数によって異なります。
また、週4日以上の訪問が計画されている場合は、2つの訪問看護ステーションが同じ利用者を担当することも認められています。1つのステーションだけでは毎日の訪問が組めないときは、2か所目のステーションの併用を検討できます。ただし、同じ日にそれぞれのステーションが訪問看護療養費を算定することはできないとされています。
通常の訪問看護指示書との違い
特別訪問看護指示書は、通常の訪問看護指示書に上乗せする形で交付されるもので、通常の指示書がなくなるわけではありません。両者の主な違いを表にまとめます。
| 項目 | 通常の訪問看護指示書 | 特別訪問看護指示書 |
|---|---|---|
| 目的 | 在宅療養に必要な訪問看護の指示 | 急性増悪、終末期、退院直後などの一時的な頻回訪問の指示 |
| 有効期間 | 6か月以内(1か月の指示なら記載不要) | 診療の日から最長14日 |
| 交付回数の上限 | 指示料の算定は月1回まで | 月1回(気管カニューレ使用、真皮を越える褥瘡は月2回) |
| 要介護者の保険 | 原則として介護保険 | 指示期間中は医療保険 |
| 訪問の頻度 | 医療保険の場合は原則週3日まで | 週4日以上、1日複数回も可能 |
| 医療機関の点数 | 訪問看護指示料300点 | 300点に特別訪問看護指示加算100点を加算 |
表のとおり、特別訪問看護指示書は期間も回数も限られた「短期集中の指示」です。
期間終了後の扱いとケアマネジャー・家族の確認点
14日間の特別指示期間は、始まる前と終わったあとの調整が欠かせません。ケアマネジャーと家族が押さえておきたいポイントを整理します。
14日経過後は元の指示書に戻る
特別指示の期間が終わると、訪問看護は通常の訪問看護指示書にもとづく形に戻ります。介護保険を利用していた方は翌日から介護保険による訪問看護に戻り、訪問回数もケアプランの頻度に戻るのが基本です。通常の指示書の有効期間が切れていないかも確認しましょう。
期間が終わっても状態が落ち着かない場合は、主治医があらためて診療し、翌月の特別指示や入院、療養の場の変更などを検討します。期間終了の数日前に訪問看護師から主治医へ状態を報告してもらい、次の判断材料をそろえておくと、期間切れで急に訪問が減る事態を防ぎやすくなります。
ケアプランとの調整
特別指示の期間中、介護保険による訪問看護はケアプランから一時的に外れ、医療保険による訪問看護に置き換わります。ケアマネジャーは指示期間を訪問看護ステーションから早めに確認し、サービス利用票や提供票で介護保険による訪問看護を計上しないよう調整します。定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用している場合は、特別指示の日数に応じて1日97単位が減算されるため、事業所との確認が欠かせません。
訪問看護の回数が増える期間は、訪問介護や通所サービスの予定と重なりやすくなります。発熱中は通所を休む、訪問介護の時間をずらすなど、生活全体の予定を組み直し、関係事業所に共有しておきましょう。
費用の変化
特別指示の期間中、訪問看護の自己負担は医療保険の負担割合で計算されます。75歳以上の方は所得に応じて1割、2割、3割のいずれかで、介護保険とは判定の仕組みが異なるため割合が変わることがあります。訪問ごとの基本療養費に管理療養費や加算が加わるため、訪問回数が増えれば負担も増えます。
一方で、医療保険による訪問看護は介護保険の支給限度基準額の枠の外で提供されるため、その期間はほかの介護サービスに枠を回しやすくなるとされています。家族には「訪問看護の請求先と負担割合が14日間だけ変わる」と事前に伝えておくと、翌月の請求書を見て驚かれることが減ります。
家族が主治医と訪問看護師に確認しておきたいこと
家族は主治医に「何のために、いつからいつまで頻回に訪問するのか」と、入院を考える目安、夜間の連絡先を確認しておくとよいでしょう。訪問看護師には、期間中の訪問頻度と、家族が担う処置や観察を確認し、その内容をケアマネジャーにも伝えておけば、14日間を家族だけで抱え込まずに済みます。
よくある質問
Q. 特別訪問看護指示書は家族から主治医にお願いできますか?
A. 家族やケアマネジャー、訪問看護ステーションから主治医に相談すること自体は可能です。ただし交付するかどうかは、主治医が診療にもとづいて一時的に頻回の訪問看護が必要かを判断して決めます。
Q. 特別訪問看護指示書が出ている間も介護保険の訪問看護は利用できますか?
A. 指示の日から14日間は介護保険の訪問看護費は算定されず、訪問看護は医療保険で提供されます。期間が終わると、通常の訪問看護指示書にもとづく介護保険による訪問看護に戻ります。
Q. 14日を過ぎても状態が悪い場合はどうなりますか?
A. 同じ指示書を延長することはできず、原則として同じ月の2回目の交付もできません。気管カニューレを使用している方や真皮を越える褥瘡のある方は月2回まで交付できるため、それ以外の方は翌月の交付や入院などを主治医と検討します。
まとめ
特別訪問看護指示書は、急性増悪、終末期、退院直後などで一時的に頻回の訪問看護が必要なときに主治医が交付する、最長14日の指示書です。交付は原則月1回で、気管カニューレを使用している方や真皮を越える褥瘡のある方は月2回まで認められます。期間中は要介護者でも医療保険の訪問看護となり、週4日以上や1日複数回の訪問が可能になります。
状態の変化に気づいたら訪問看護師から主治医へ早めに報告してもらい、交付の見込みが立った段階でケアマネジャーがケアプランと費用の説明を準備するのが望ましい流れです。退院が決まった方は、退院前カンファレンスで医療ソーシャルワーカーが在宅の主治医と指示の出し方を確認しておきましょう。
この記事のまとめ
- 頻回訪問の指示は診療の日から最長14日で延長はできない
- 気管カニューレや深い褥瘡がある方は同じ月に2回目の交付も可能
- 指示期間中は介護保険の方でも医療保険の訪問看護になり毎日の訪問も組める
- 期間の前後でケアプランの計上と家族への費用説明を忘れずに調整する