老健の費用はいくら?月額相場・内訳・安くする方法をわかりやすく解説

img

家族が老健(介護老人保健施設)への入所を検討し始めると、まず気になるのが「毎月いくらかかるのか」という費用の問題ではないでしょうか。老健はリハビリや医療ケアを受けながら在宅復帰を目指す公的施設で、入居一時金が不要という大きなメリットがあります。一方で、居室タイプや要介護度、所得区分によって月額費用には幅があります。

この記事では、老健の費用について月額相場から内訳、負担を軽くする具体的な方法まで、ご家族やケアマネージャーの方が判断に迷わないよう丁寧に解説します。最新の情報を押さえておきたい方はぜひ最後までお読みください。

老健の費用の全体像と月額相場

老健の費用を正しく理解するには、まず「何にお金がかかるのか」という全体像を把握することが大切です。ここでは費用の仕組みから、居室タイプ・要介護度ごとの相場、そしてショートステイとの違いまで整理していきます。

老健の費用が発生する仕組み

老健で毎月支払う費用は、大きく分けて「介護保険が適用される費用」と「全額自己負担の実費」の2種類で構成されています。介護保険が適用される介護サービス費は、所得に応じて1割・2割・3割のいずれかを負担します。一般的な高齢者世帯の多くは1割負担に該当するケースがほとんどです。

一方、食費や居住費は介護保険の対象外で、原則として全額自己負担となります。ただし、所得が低い方には「補足給付」という軽減制度が用意されており、大幅に費用を抑えられる場合があります。入居一時金は基本的に不要で、これは有料老人ホームとの大きな違いといえるでしょう。

月額相場の目安

老健の月額費用は、居室タイプと要介護度の組み合わせで大きく変わります。以下の表は、1割負担・一般所得世帯の場合の月額目安をまとめたものです。

居室タイプ 要介護1〜2 要介護3 要介護4〜5
多床室(相部屋) 約7.8〜9万円 約9〜10万円 約10〜11万円
従来型個室 約9〜11万円 約10〜12万円 約11〜13万円
ユニット型個室 約11〜13万円 約12〜14万円 約13〜15万円

多床室なら月額8〜11万円、ユニット型個室では11〜15万円程度が一般的な相場です。要介護度が上がるほど介護サービス費が増える仕組みになっています。なお、日用品やおむつ代などの実費を加えると、さらに1〜2万円程度の上乗せが生じることもあるため、総額で把握しておくことが重要です。

ショートステイ利用時の費用の相場

老健では、在宅復帰を見据えた短期入所(ショートステイ)を利用することもできます。ショートステイの費用は日額計算となり、多床室の場合で1日あたり約3,000〜4,500円程度が目安です。長期入所と比べて1日あたりの単価はやや割高になる傾向があります。

ただし、ショートステイは介護者であるご家族のレスパイト(休息)にもなり、長期入所の前に施設の雰囲気を確認できるメリットがあります。在宅復帰を目標とする老健の特性を活かし、短期利用と在宅介護を組み合わせることで、トータルの費用負担を抑える選択肢もぜひ検討してみてください。

  • ショートステイは日額計算で多床室1日約3,000〜4,500円が目安
  • 長期入所より日あたり単価は高いが、在宅介護との併用で総額を調整できる
  • 施設の雰囲気や本人との相性を確認する「お試し利用」としても有効

項目別の老健の費用の内訳

老健の費用を「高い」「安い」と感じるかは、内訳を正しく理解しているかどうかで変わってきます。ここでは、請求書に並ぶ各項目の意味と金額の目安を一つずつ確認していきましょう。

介護サービス費の内訳

介護サービス費は、老健で受ける介護やリハビリに対して発生する費用で、介護保険が適用されます。1割負担の場合、要介護3の多床室利用で月額約2万1,000〜2万6,000円程度が目安となります。この金額には基本的な介護報酬に加え、短期集中リハビリテーション加算やリハビリマネジメント加算などの各種加算が含まれています。

介護サービス費は要介護度が1段階上がるごとに月額2,000〜4,000円程度増える仕組みです。2割・3割負担に該当する方は単純に2倍・3倍の計算となるため、ご自身の負担割合を介護保険負担割合証で必ず確認しておきましょう。

食費と居住費の内訳

食費と居住費は介護保険の適用外であり、原則として全額自己負担です。食費の基準額は1日1,445円(月額約4万3,350円)で、1食あたりに換算すると約480円となります。居住費は居室タイプによって大きく異なり、多床室で1日377円(月額約1万1,310円)、ユニット型個室では1日2,006円(月額約6万円)が基準額の目安です。

2025年8月の制度改正により、多床室の居住費に月額約8,000円の自己負担が新たに上乗せされました。これまで多床室の室料負担がほぼゼロだった方にとっては、年間で約10万円の負担増となる可能性があります。低所得者向けの補足給付を受けている方は改正の影響を受けにくいとされていますが、施設や自治体への確認を早めに行っておくと安心です。

項目 基準額(日額) 月額目安
食費 1,445円 約43,350円
多床室の居住費 377円 約11,310円
従来型個室の居住費 1,668円 約50,040円
ユニット型個室の居住費 2,006円 約60,180円

日常生活費の内訳

日常生活費とは、施設で使用する歯ブラシ・ティッシュ・石鹸などの日用品や、リネン(シーツ・タオル)のレンタル代、理美容代、レクリエーション活動費などの総称です。これらは介護保険の対象外で、施設ごとに料金設定が異なります。

月額の目安は5,000〜1万5,000円程度で、施設によってはおむつ代が含まれる場合と含まれない場合があります。老健では介護保険制度上おむつ代が施設負担となるのが原則ですが、特殊なおむつや追加分は実費請求される場合もあるため、入所前の契約時に明細を確認しておくことをおすすめします。

  • 日用品費(歯ブラシ・石鹸など)は月額1,000〜3,000円程度
  • リネンレンタル代は月額2,000〜5,000円が一般的
  • 理美容代は1回1,000〜3,000円、希望者のみの実費精算が多い
  • レクリエーション費は月額500〜2,000円程度

医療費や薬代の負担範囲

老健は医師が常駐する施設であるため、施設内での日常的な診療や投薬にかかる費用は介護サービス費に含まれています。つまり、施設で処方される薬代や基本的な検査費用は別途請求されないのが原則です。この点は特養との大きな違いであり、老健の費用を考えるうえでの重要なメリットといえます。

ただし注意が必要なのは、施設の医師では対応できない専門的な外部受診や高額な検査は、別途医療保険で自己負担が発生するケースがあることです。歯科治療や眼科受診などが代表的な例です。入所前に施設で対応可能な医療範囲を確認し、持病がある方は主治医と施設医師の連携体制についても相談しておくとよいでしょう。

老健の費用を安くする方法

老健の月額費用は公的施設の中では比較的抑えられていますが、それでも毎月の出費は家計に大きな影響を与えます。ここでは、知っているだけで数万円の差が出る費用軽減の制度と実践的な対策を紹介します。

公的な費用軽減制度の種類と条件

老健の費用を抑えるうえで最も効果が大きいのが、「特定入所者介護サービス費(補足給付)」と呼ばれる制度です。これは住民税非課税世帯などの低所得者を対象に、食費と居住費の自己負担額を大幅に軽減する仕組みで、所得段階に応じて4つの区分に分かれています。

負担段階 対象者の目安 食費(日額) 多床室の居住費(日額)
第1段階 生活保護受給者・老齢福祉年金受給者 300円 0円
第2段階 年金収入等80万円以下 390円 370円
第3段階① 年金収入等80万円超120万円以下 650円 370円
第3段階② 年金収入等120万円超 1,360円 370円

第1段階に該当すると食費・居住費の自己負担が月額合計で1万円以下にまで下がり、通常と比べて3〜4万円の軽減効果があります。利用するには市区町村の窓口で「介護保険負担限度額認定証」の交付を申請する必要がありますので、入所前に必ず手続きしておきましょう。

高額介護サービス費や高額医療合算の申請

介護サービス費の自己負担額が一定額を超えた場合に、超過分が後から払い戻される「高額介護サービス費」制度も見逃せません。一般的な課税世帯の場合、月額の上限は44,400円に設定されています。老健の費用のうち介護サービス費が高額になる2割・3割負担の方にとって、特に有効な制度です。

さらに、1年間の医療費と介護費の合算額が一定額を超えた場合には「高額医療・高額介護合算療養費制度」も利用可能です。高額介護サービス費は初回申請後に自動的に適用されるものの、申請しなければ支給されないため、入所後に通知が届いたら必ず手続きを行いましょう。申請先は市区町村の介護保険担当窓口で、領収書の保管が重要になります。

自治体の助成や社会福祉法人の減免の活用

国の制度に加えて、お住まいの自治体が独自の助成制度を設けていることがあります。たとえば介護用品の購入助成や、施設入所者の家族を対象にした介護手当の支給などです。これらは自治体ごとに内容が異なるため、地域包括支援センターや市区町村の窓口で確認してみてください。

また、社会福祉法人が運営する老健では、「社会福祉法人等による利用者負担の軽減制度」を利用できる場合があります。この制度は住民税非課税世帯の方が対象で、介護サービス費・食費・居住費の自己負担額を原則25%軽減するというものです。運営法人や施設に直接問い合わせることで適用の可否がわかります。

  • 自治体独自の介護手当や介護用品助成を確認する
  • 社会福祉法人の減免制度は入所先の法人に直接確認する
  • 地域包括支援センターで利用可能な制度を一括で相談できる

世帯分離や年金受取の工夫で負担を抑える方法

老健の費用負担は「世帯の所得」で判定されるものが多いため、世帯分離を行うことで負担段階が下がり、結果として費用が軽減されるケースがあります。たとえば、高齢の親と同居している現役世代の子が世帯を分離すると、親の世帯が住民税非課税となり、補足給付の対象になる可能性が出てきます。

ただし、世帯分離には国民健康保険料が増える場合や、扶養控除が使えなくなるなどのデメリットもあります。世帯分離は一概に「お得」とは言えないため、ケアマネージャーや自治体の窓口、場合によっては税理士に相談してからの判断をおすすめします。年金の受け取り方や預貯金の管理についても、補足給付の資産要件に影響するため事前に確認しておくことが大切です。

施設選びで月額費用を抑えるチェックポイント

同じ老健でも、施設によって月額費用に数万円の差が生じることは珍しくありません。費用を抑えたい場合に確認すべきポイントを整理しておきましょう。

  • 多床室が選べる施設を候補に入れる(ユニット型のみの施設もある)
  • 施設ごとの加算算定状況を重要事項説明書で比較する
  • おむつ代や日用品費が基本料金に含まれるかを確認する
  • 複数施設から見積もりを取り、総額で比較する
  • 在宅復帰を目指す場合は短期利用を検討し、長期入所の費用を圧縮する

また、医療費控除の活用も忘れてはいけません。老健に支払う介護サービス費・食費・居住費の自己負担分は、確定申告で医療費控除の対象となります。年間の医療費が10万円を超える場合は確定申告で所得税の還付を受けられるため、領収書を毎月保管しておく習慣をつけましょう。特養の場合は自己負担額の半額しか控除対象にならないのに対し、老健では全額が対象となるため、この違いは意外と大きな節税効果を生みます。

まとめ

老健の費用は、居室タイプや要介護度、所得区分によって幅がありますが、1割負担の場合で月額8〜13万円程度が一つの目安になります。入居一時金が不要で、施設内の医療費が介護サービス費に含まれる点は、有料老人ホームや特養にはない老健ならではのメリットです。

費用の内訳を把握したうえで、補足給付や高額介護サービス費、医療費控除といった制度を正しく活用すれば、月々の負担を数万円単位で軽減できる可能性があります。最新の情報を施設や自治体に確認しながら準備を進めてください。

老健の費用について不安がある方は、まずケアマネージャーや地域包括支援センターに相談し、ご本人の状況に合った施設選びと費用計画を一緒に立てていくことをおすすめします。