介護と仕事を両立するには?制度・サービス・支援の完全ガイド

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家族の介護が必要になったとき、仕事との両立に不安を感じる方は少なくありません。介護離職を防ぎ、仕事と介護を無理なく続けるためには、利用できる制度やサービスを正しく理解し、早めに準備を始めることが大切です。介護休業制度や介護保険サービス、職場の両立支援制度など、活用できる仕組みは年々充実しています。この記事では、介護と仕事の両立を実現するために知っておきたい制度・サービス・支援策を段階を追って詳しく解説します。

介護と仕事の両立のための準備

介護と仕事の両立を成功させるには、実際に介護が本格化する前の準備が重要です。突然の介護開始で慌てないために、家族の状態を把握し、利用できる制度やサービスを事前に調べておくことが求められます。さらに、家族内で役割分担を明確にし、職場への相談方法も考えておくことで、スムーズな両立体制を築くことができます。

介護が必要かどうかの早期の見極め

介護が必要になる兆候を早期に察知することは、仕事との両立計画を立てる上で最も大切なステップです。高齢の家族の日常生活において、以前はできていたことができなくなる、物忘れが増える、歩行が不安定になるなどの変化が見られたら、要介護状態への移行を疑う必要があります。これらのサインを見逃さず、早めに医療機関を受診し、介護保険の申請準備を始めることが推奨されます。

具体的には、定期的な帰省や電話連絡の際に、家族の生活状況を細かく観察することが重要です。食事の用意や掃除、入浴、服薬管理などの日常動作に支障が出ていないか、また認知機能の低下や転倒リスクが高まっていないかを確認します。遠方に住んでいる場合は、近隣の親族や地域包括支援センターに協力を依頼し、定期的な見守り体制を構築することも有効です。

早期発見により、介護保険サービスの利用開始までに十分な時間を確保でき、職場への相談や勤務体制の調整もスムーズに進められます。また、本人や家族の心理的な準備期間も設けることができ、突然の介護開始による混乱を防ぐことができます。

介護保険や地域サービスの確認

介護保険制度は、介護が必要な高齢者を社会全体で支える仕組みであり、仕事との両立には欠かせない支援の柱となります。介護保険サービスは、65歳以上の方、または40歳から64歳までの特定疾病に該当する方が利用できます。まずは市区町村の介護保険窓口または地域包括支援センターに相談し、要介護認定の申請手続きを行うことから始めます。

要介護認定では、訪問調査や主治医意見書をもとに、要支援1・2、要介護1から5までの7段階で介護の必要度が判定されます。認定結果に応じて利用できるサービスの種類や支給限度額が決まります。訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具貸与など、多様なサービスの中から、家族の状態や生活スタイルに合わせて選択できます。

地域包括支援センターは、介護に関する総合相談窓口として機能しており、介護保険の申請サポートだけでなく、地域の見守りサービスや配食サービス、緊急通報システムなどの情報提供も行っています。介護保険外のサービスも含めて、地域にどのような支援があるのかを早めに把握しておくことで、いざという時に迅速に対応できます。

家族内での役割と優先度の決定

介護は一人で抱え込むものではなく、家族全員で協力し、役割分担をすることが両立の鍵となります。まずは家族会議を開き、誰がどの程度介護に関わることができるのか、それぞれの仕事の状況や居住地、経済的な負担能力などを率直に話し合います。主介護者を決めるとともに、サポート役や金銭的な支援を担当する人など、明確な役割分担を行うことが大切です。

役割分担の際には、介護の内容を具体的に洗い出すことが有効です。日常的な見守り、通院の付き添い、デイサービスへの送迎、買い物や掃除などの生活支援、金銭管理、ケアマネージャーとの連絡調整など、多岐にわたる業務があります。これらをリスト化し、誰がいつ担当するのかを決めることで、負担の偏りを防ぎます。

また、優先順位をつけることも重要です。本人の安全確保や医療的ケアは最優先事項とし、家事などは外部サービスの利用も検討します。完璧を求めず、できることとできないことを明確にし、介護保険サービスや地域の支援を積極的に活用する姿勢が、持続可能な両立につながります。定期的に家族会議を開き、状況の変化に応じて役割分担を見直すことも忘れないようにしましょう。

職場に相談する前に準備しておくこと

職場への相談をスムーズに進めるためには、事前に情報を整理し、具体的な要望を明確にしておくことが重要です。まずは自社の就業規則や人事制度を確認し、介護休業制度、介護休暇、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、テレワーク制度などがどのように規定されているかを把握します。社内のイントラネットや人事部に問い合わせて、最新の情報を入手しましょう。

次に、介護が必要な家族の状況を整理します。要介護認定の結果、利用予定のサービス内容、介護にかかる時間、通院の頻度など、できるだけ具体的な情報をまとめておくと、上司や人事担当者との相談がスムーズになります。また、いつからどのくらいの期間、どのような働き方の調整が必要なのか、自分なりの希望も整理しておきます。

相談のタイミングも大切です。介護が本格化してから慌てて相談するのではなく、介護の兆候が見えた段階で早めに上司に状況を伝えておくことで、職場側も準備や調整がしやすくなります。また、同僚への業務の引き継ぎや分担についても、あらかじめ考えておくと良いでしょう。信頼関係を保ちながら、働き方を調整していくためには、透明性のあるコミュニケーションが求められます。

介護と仕事の両立で使える制度と支援

介護と仕事を両立するためには、法律で定められた制度や公的支援、職場独自の制度を活用することが不可欠です。介護休業法に基づく各種制度、介護保険サービス、経済的な給付について、それぞれの仕組みと利用方法を詳しく理解しましょう。これらの制度を組み合わせることで、無理なく仕事を続けながら介護を行うことが可能になります。

介護休業や短時間勤務などの法的制度

介護休業法は、働きながら介護をする人を支えるための法律であり、すべての労働者が利用できる権利が保障されています。介護休業制度では、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して休業を取得できます。対象家族とは、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。介護休業は、介護体制を整えるための準備期間として利用することが想定されており、日常的な介護のために長期間取得し続けるものではありません。

介護休暇は、介護休業とは別に、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、1日単位または時間単位で取得できる制度です。通院の付き添いやケアマネージャーとの打ち合わせなど、突発的な対応に柔軟に使えます。また、短時間勤務制度では、対象家族1人につき利用開始から3年以上の期間で2回以上、所定労働時間の短縮措置を受けることができます。

さらに、2025年10月からの育児・介護休業法改正により、すべての企業に対して柔軟な働き方を実現するための措置の実施が義務づけられました。具体的には、以下の5つの選択肢から2つ以上を選択する必要があります。

  • 短時間勤務制度
  • フレックスタイム制度
  • 時差出勤制度
  • 介護サービスの費用助成
  • その他これに準ずる措置

これらの制度を利用する際には、事前に勤務先の人事部や総務部に申請が必要です。制度利用を理由とした不利益な取り扱いは法律で禁止されているため、安心して申請することができます。

介護保険サービスの種類と利用の流れ

介護保険サービスは、在宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスの3つに大きく分けられ、それぞれ多様なメニューが用意されています。在宅サービスには、訪問介護(ヘルパーによる身体介護や生活援助)、訪問看護、訪問入浴介護、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)、短期入所生活介護(ショートステイ)、福祉用具貸与、住宅改修などがあります。

施設サービスには、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などがあり、常時介護が必要な方や在宅での生活が困難な方が入所します。地域密着型サービスは、住み慣れた地域で生活を続けるためのサービスで、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などがあります。

介護保険サービスを利用する流れは、以下の通りです。

  1. 市区町村の窓口または地域包括支援センターに相談
  2. 要介護認定の申請(申請書と介護保険被保険者証を提出)
  3. 認定調査員による訪問調査と主治医意見書の作成
  4. 介護認定審査会による審査・判定
  5. 認定結果の通知(申請から原則30日以内)
  6. ケアマネージャーの選定とケアプラン作成
  7. サービス事業者との契約とサービス利用開始

ケアマネージャーは、利用者や家族の希望を聞き取り、心身の状態に合わせた適切なサービスを組み合わせたケアプランを作成します。仕事との両立を希望する場合は、その旨をケアマネージャーに明確に伝え、日中はデイサービスを利用する、短時間のヘルパー派遣を組み合わせるなど、働きながら介護できる体制を相談しましょう。

経済的な支援と給付の種類

介護にかかる経済的負担を軽減するため、複数の給付制度や支援策が用意されています。まず、介護休業を取得した場合には、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。これは、休業開始時賃金の67%相当額が支給されるもので、経済的な不安を軽減しながら介護体制を整えることができます。支給を受けるには、ハローワークへの申請が必要です。

介護保険サービスの利用料は、原則として費用の1割(一定以上の所得がある方は2割または3割)が自己負担となります。ただし、1か月の利用者負担が高額になった場合には、高額介護サービス費として超過分が払い戻される制度があります。また、医療費と介護費の自己負担額が高額になった場合には、高額医療・高額介護合算療養費制度により、負担の上限を超えた額が払い戻されます。

住宅改修費の支給制度では、手すりの取り付けや段差解消などの改修に対し、20万円を上限として費用の9割(または8割、7割)が支給されます。福祉用具購入費の支給では、ポータブルトイレや入浴補助用具などの購入費用として、年間10万円を上限に同様の割合で支給されます。これらを活用することで、在宅介護の環境を整えやすくなります。

給付・支援の種類 内容 申請先
介護休業給付金 休業開始時賃金の67%相当額 ハローワーク
高額介護サービス費 月額自己負担の上限を超えた額の払い戻し 市区町村
高額医療・高額介護合算療養費 医療費と介護費の合算自己負担の上限超過分 市区町村・健康保険組合
住宅改修費 20万円を上限に費用の9割等を支給 市区町村
福祉用具購入費 年間10万円を上限に費用の9割等を支給 市区町村

上記の表のように、各種給付制度は申請先が異なりますので、ケアマネージャーや地域包括支援センターに相談しながら、漏れなく活用することが重要です。

介護と仕事を両立するための実践的な工夫

制度やサービスを知るだけでなく、日々の生活の中で具体的にどう工夫するかが、介護と仕事の両立を持続可能にする鍵です。ここでは現場で役立つ実践的なポイントを紹介します。

日々の時間管理と優先順位の付け方

限られた時間の中で介護と仕事を両立させるには、優先順位を明確にし、効率的な時間管理を徹底することが不可欠です。まず、1日のスケジュールを可視化し、仕事の時間、介護の時間、自分の時間を明確に区切ります。手帳やスマートフォンのカレンダーアプリを活用し、通院の予定、ケアマネージャーとの打ち合わせ、デイサービスの送迎時間などを記録しておくと、予定の重複や抜け漏れを防げます。

優先順位をつける際には、「緊急かつ重要」「重要だが緊急ではない」「緊急だが重要ではない」「緊急でも重要でもない」の4つに分類する方法が有効です。本人の健康や安全に関わることは最優先とし、家事や雑務は後回しにする、あるいは外部サービスに任せるなど、柔軟に判断します。完璧を求めず、できることから着実に進めることが大切です。

仕事においても、業務の優先順位を整理し、上司や同僚と共有します。急な介護対応が必要になった場合に備えて、業務の進捗状況を常に可視化しておき、引き継ぎやすい状態を保つことが重要です。また、テレワークやフレックスタイム制度を活用することで、移動時間を削減し、時間を有効に使えます。朝の通院後に在宅で仕事を始める、介護の合間に仕事をするなど、柔軟な働き方が両立を支えます。

外部サービスと在宅ケアを組み合わせる方法

介護保険サービスや民間サービスを効果的に組み合わせることで、家族の負担を大幅に軽減できます。デイサービスは、日中に本人を預かり、食事や入浴、レクリエーションを提供するサービスで、働いている家族にとって非常に有用です。週に数回利用することで、日中の見守りの心配がなくなり、仕事に集中できます。また、本人にとっても、他者との交流や身体機能の維持につながります。

訪問介護では、ヘルパーが自宅を訪問し、身体介護(入浴、排泄、食事の介助など)や生活援助(掃除、洗濯、買い物など)を行います。早朝や夜間の時間帯に利用できるサービスもあり、出勤前や帰宅後の介護負担を軽減できます。訪問看護は、看護師が訪問して医療的なケアを提供するため、医療的な管理が必要な方には欠かせません。

ショートステイは、短期間施設に入所し、介護を受けるサービスです。出張や繁忙期、あるいは介護者自身が体調を崩したときなど、一時的に介護を任せることができます。定期的にショートステイを利用することで、介護者のレスパイト(休息)が確保され、介護疲れを防ぐことができます。

介護保険外のサービスとしては、配食サービス、家事代行サービス、見守りサービス、緊急通報システムなどがあります。これらを組み合わせることで、24時間の見守り体制を構築し、安心して仕事に取り組めます。ケアマネージャーに相談しながら、本人の状態や家族の働き方に合わせて、最適なサービスの組み合わせを検討しましょう。

遠方の家族を介護する場合の両立策

遠距離介護では、頻繁に帰省できないため、地域の支援者やサービスとの連携が両立の鍵となります。まず、介護が必要な家族の住む地域の地域包括支援センターに連絡を取り、状況を説明して協力を依頼します。遠方に住む家族として、どのようなサポートが可能かを相談し、地域の社会資源を活用する体制を整えます。

ケアマネージャーとの密な連絡体制を築くことも重要です。電話やメール、オンラインミーティングなどを活用し、定期的にケアプランの内容や本人の状態について報告を受けます。緊急時の連絡方法や対応手順をあらかじめ決めておくことで、離れていても安心できます。また、近隣に住む親族や友人に協力を依頼し、定期的な見守りをお願いすることも有効です。

遠距離介護では、帰省の頻度と滞在期間を計画的に設定します。月に1回程度の帰省を目安にし、その際に通院の付き添い、ケアマネージャーや医師との面談、生活環境の確認、必要な手続きをまとめて行います。職場には、介護のための帰省が定期的に必要であることを伝え、有給休暇や介護休暇を計画的に取得できるよう調整します。

見守りサービスや緊急通報システムの導入も検討しましょう。センサーによる生活リズムの確認、定期的な電話による安否確認、緊急時のかけつけサービスなど、離れていても安心できる仕組みがあります。また、オンラインでのビデオ通話を習慣化し、本人の表情や様子を定期的に確認することで、状態の変化に早めに気づくことができます。

要介護度が高い場合の対応と外部支援の活用

要介護度が高く、常時介護が必要な状態になった場合、在宅での介護と仕事の両立は非常に困難になるため、施設入所を含めた選択肢を現実的に検討することが求められます。要介護3以上になると、日常生活のほぼすべてに介助が必要となり、家族だけでの対応は限界があります。このような場合、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、グループホームなどの入所施設の利用を検討します。

施設入所には抵抗を感じる家族も多いですが、専門職による24時間体制のケアを受けられることで、本人の安全と健康が守られ、家族も安心して仕事を続けることができます。施設入所は「見捨てる」ことではなく、適切なケアを提供するための選択肢の一つです。本人や家族が納得できる形で決断することが大切です。

在宅での介護を続ける場合は、介護保険サービスを限度額いっぱいまで活用し、訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイなどを組み合わせて、家族の負担を最小限にします。また、医療的ケアが必要な場合は、訪問診療や訪問歯科診療、訪問薬剤管理などの医療サービスも併せて利用します。医療保険と介護保険を組み合わせることで、総合的な支援体制を構築できます。

重度の介護が必要な場合、仕事の働き方も大きく見直す必要があるかもしれません。在宅勤務への完全移行、勤務時間の大幅な短縮、一時的な休職など、状況に応じた選択を職場と相談します。介護休業給付金や傷病手当金、雇用保険の教育訓練給付など、経済的な支援制度も調べ、活用可能なものはすべて利用しましょう。また、ソーシャルワーカーや地域包括支援センターに、包括的な支援プランの作成を依頼することも有効です。

まとめ

介護と仕事の両立は、適切な準備と制度の活用、そして周囲の協力によって実現できます。介護の兆候を早めに察知し、介護保険サービスや職場の両立支援制度について情報を集め、家族で役割分担を明確にすることが、スムーズな両立の第一歩です。

介護休業法に基づく各種制度、介護保険サービス、経済的な給付制度を積極的に活用し、一人で抱え込まずに外部の支援を取り入れることが重要です。職場には早めに相談し、テレワークやフレックスタイム制度などを利用しながら、柔軟な働き方を模索しましょう。

日々の時間管理と優先順位の明確化、デイサービスや訪問介護などの外部サービスの効果的な組み合わせが、持続可能な両立につながります。遠距離介護や重度の介護が必要な場合でも、地域の支援者との連携や施設入所の検討など、現実的な選択肢を検討することが大切です。介護と仕事の両立は決して楽ではありませんが、適切な知識と支援があれば、無理なく続けることができます。この記事が、両立に向けた一歩を踏み出すための助けになれば幸いです。