健康長寿のために今からできること|医療・介護の視点で解説

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年を重ねるにつれて「これからも健康に過ごしていきたい」「できる限り自立した生活を長く続けたい」と思う方は多くいらっしゃいます。しかし、「具体的に今から何をすればよいかわからない」「病気になる前にできる備えを知りたい」と不安に感じることもあるでしょう。「健康長寿」は個人の努力・自己管理だけで実現できるものではなく、医療・介護と適切につながることで初めて支えられるものです。

この記事では、健康長寿の基本的知識や健康寿命を伸ばすために今からできることを医療・介護の視点から体系的に解説します。早期に専門家とつながるメリットや具体的な生活習慣チェックリストも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

「健康長寿」とは何か:平均寿命と健康寿命の差

健康寿命とは「生活の質を重視し、長くなった寿命を『心身に障害のない期間』として、健康で自立して暮らすことができる状態」を指します。介護を必要とせず自立した日常生活が送れる期間であり、単に長生きする・寿命が延びることとは本質的に異なる概念です。

厚生労働省の調査によると、男女別の平均寿命と健康寿命の推移は下図のようにいずれも10年ほどの差が存在します。

図表2-1-1 平均寿命と健康寿命の推移

【参考】厚生労働省:令和4年版厚生労働白書 図表2-1-1 平均寿命と健康寿命の推移

健康寿命と平均寿命の差、つまり「不健康な期間」をいかに短縮するかが健康長寿における重要な視点といえるでしょう。

健康長寿が求められる社会的背景

健康長寿が求められる社会的背景には、主に以下2つの理由があります。
1. 高齢者人口の増加
2. 医療費・介護費などの社会保障費の圧迫

2025年には高齢者人口が全体の約3割となり、過去最高となっているのが実情です。それに伴い、高齢者の医療費・介護費も増大し、社会保障全体へ深刻な負荷がかかると懸念されています。また、高齢者を支える家族の生活や働き方にも大きな影響を及ぼします。

定年退職後に20~30年の期間が続く現代において、単純に生き延びるのではなく、いかに主体的・自立的に生きるかが重要です。そのためにも、フレイル・認知症・社会的孤立といったリスクに対して早い段階から予防していく取り組みが求められています。

健康寿命を縮める最大の敵

健康寿命を縮める最大の敵は、「フレイル」「サルコペニア」です。フレイルとは、加齢に伴い心身の活力が低下した「虚弱状態」を指し、健康と要介護状態の中間として位置づけられています。一方、サルコペニアとは、筋肉量や筋力・身体機能の低下を指し、転倒・骨折・廃用症候群への直接的な入り口となりやすい点が特徴です。

いずれも、早期に発見し適切にアプローチすることで、進行を食い止め回復することもできます。まずは、フレイルやサルコペニアの特徴を理解して本人の状態に合わせて予防策を講じましょう。

フレイル予防に有効な3つのアプローチ

フレイルを予防するために有効な3つのアプローチとは、主に下表のとおりです。

項目 具体例
1. 適度な運動 ・筋力トレーニング
・散歩などの有酸素運動 など 
2. バランスの取れた食事 ・たんぱく質の多い食品の摂取
・多様な食品を無理なく摂取 など
3. 社会参加の維持 ・定期的な外出
・友人や知人との交流
・趣味やボランティア活動 など

また、厚生労働省が推進する「健康日本21」においても、これらの生活習慣改善が数値目標を持って推進されています。早いうちからこうした取り組みを日常生活で意識すると、フレイルの予防や改善に効果が期待できるでしょう。

高齢期の医療は「治す」から「支える」へ

高齢期における医療は「治す」のではなく「支える」アプローチが重要です。若い人の場合、医療は「早く治す」「早く社会に復帰する」ことが重視されます。一方、高齢者だと複数の疾患や病気を抱えているケースが多く、治すよりも「コントロールする」「高齢者の生活自体を支える」取り組みが不可欠です。

これらの違いは、下表のように「医学モデル」と「生活モデル」に分類されます。

  医学モデル 生活モデル

目的

病気の治癒や治療

QOL(生活の質)の向上

対象者

病気そのもの

病気を抱えた人・周辺環境・生活状況

場所

主に病院

自宅や施設などの生活の場

従事者

医師・看護師が中心

医療や介護・地域の方

支援方法

医師による指示

多職種によるチームカンファレンス

高齢者の場合、その人を取り巻く生活環境も含めた包括的な支援が求められます。そのためには、医療のみならず介護や福祉も含めた多職種の連携が必要です。

かかりつけ医を活用するための具体的ポイント

「生活モデル」としての医療を進める際、高齢者にあったかかりつけ医を選ぶことが大切です。

かかりつけ医を選ぶときには、以下のポイントを押さえておきましょう。
・通いやすい場所にある
・複数の疾患に対応できる
・在宅医療や訪問診療との連携実績がある など

かかりつけ医は、生活モデルの医療を支える中核的な存在です。複数の疾患を抱えた高齢者に対して、処方された薬の飲み合わせリスクや身体の異変を総合的・継続的に把握できる役割を担っています。また、急に入院や介護が必要となったとしても、かかりつけ医が中心となりスムーズに適切なサービスと連携することも可能です。

「何も病気していないから病院には行かない」「調子がよいから行かなくていい」ではなく、「調子がよいうちから定期的に相談しよう」という姿勢が、健康長寿の実現に向けて重要な視点となるでしょう。

介護と向き合うための心構え:家族だけで抱え込まないために

要介護高齢者の数は、2023年(令和5年)度で約700万人規模に達しています。介護保険制度導入以降に大幅に増加しているのが現状です。その要介護者の生活を支えているのは家族であり、家族介護者は排泄や食事・入浴といった生活支援だけではなく、服薬管理や受診同行など多くの役割を担っています。

家族の役割や負担が慢性化すると、身体的・精神的な疲弊につながり、最悪共倒れしてしまうケースもあるのです。家族が抱える介護ストレスを減らすためには頼れる医療・介護の専門家の存在が重要であり、家族1人で抱え込まず早めに専門職と連携する体制を整えるようにしましょう。

専門家との連携がストレスを劇的に軽減する

要介護高齢者を支える家族が感じる負担やストレスを軽減するためには、医療・介護の専門家との連携が大切です。東京都健康長寿医療センター研究所の調査によると、同じ程度のケアを担っている方でも、以下の要素により介護者が感じるストレスや負担が低くなることが示されています。

・過去の介護経験
・経済的な余裕
・相談できる家族や友人
・頼れる医療や介護の専門家とのかかわり など

一方で、ケア方針が異なる家族との食い違いや介護を理由とした趣味の制限・介護離職の影響が出ると、介護に対するストレスを強く感じます。とくに、認知症を抱えた高齢者の介護では毎日同じケアでは通用しないケースも多く、「なんで親がこんなことになったのだろう」「こんな親を外に出せない」と感じ、より閉鎖的になってしまうでしょう。

家族だけで要介護の親に対処するのではなく、地域包括センターやケアマネジャーなどへ早めに相談することが重要です。早い段階から介護サービスを把握し適切に活用できると、本人の生活の質が向上するだけではなく、家族の生活も守れます。

「まだ介護は必要ない」「今のところ大丈夫だろう」と思っているうちに相談窓口を持っておくことが、長期的な介護を乗り越える最善策となりうるでしょう。

健康長寿を実現するための生活習慣チェックリスト

健康長寿を実現するためには、身体・精神・社会の3つの側面から継続的なアプローチが大切です。具体的な生活習慣チェックリストは、下表のとおりです。

  チェック項目 具体的行動
身体面 食事・水分 ・1日あたりコップ8~10杯の水やお茶を飲む
・たんぱく質の多い肉や魚などを食べる
・野菜や果物を食べる
・いもや海藻類を食べる
口腔ケア ・毎食後に口腔ケアを行う
・歯磨きだけではなく、頬全体を膨らませるようにうがいをする
運動 ・座ってできるストレッチを行う
・口腔体操を行う
健康管理 ・体重を測って体重の極端な増減がないか確認する
・室内の温度管理や体温調整をマメに行う
・生活リズムを一定に保つ
精神面 記憶 ・今日の日付や天気を確認する
・本や新聞、雑誌を読む
リフレッシュ ・お風呂に入り、リフレッシュする
・1日20分程度日光に当たる
・深呼吸をする
社会面 他者との交流 ・離れて暮らす家族や友人と連絡する
・町内会や地域の活動に参加する
趣味活動 ・好きな歌を聞いたり歌ったりする
・同じ趣味を持つ仲間と一緒に楽しむ

これらの生活習慣チェックリストは、一気に行うのではなく1つずつ無理のない範囲で実施しましょう。何歳から始めても遅くはなく、むしろ予防的な意識を持ち始めた今が最も有効なスタート地点です。

まとめ:健康を「自己管理」だけで抱え込まないために

健康長寿を実現するためには、「自己管理」といった個人の努力だけではなく医療・介護の専門家と「つながり続ける」ことが重要です。

自分や家族の状態変化に気づいたときに、「まだ専門家に相談するほどではない」「大丈夫だから1人でできるだろう」と行動を先送りにしてしまうと、結果として大きなリスクにつながることも少なくありません。自分でも生活習慣を見直すとともに、家族と相談しながら早めに医療・介護の専門家とつながれる体制を整えておきましょう。

なお、アイリンク・ケアでは、介護に関するご不安・ご相談を随時受け付けており、ご本人やご家族の状況に合わせた医療・介護サービスへの連携をサポートしています。「このままの生活でいいのかな」「今からでもできる対策を知りたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。