高齢者に多い病気とは?家族が気づきたい初期サインと対処の考え方

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高齢者は多くの病気にかかりやすく、さらに症状がはっきりと現れにくい点が特徴です。介護している家族からすると、「親の物忘れが増えた」「なんとなく元気がない」と気になりながらも、どう対応したらいいかわからない方も多くいらっしゃいます。

本記事では、介護が必要になる主な病気の特徴と家族が気づきたい初期サインについて解説します。漠然と「様子を見る」段階から早期発見・早期対応へ踏み出すためのポイントも紹介するので、親の介護に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

高齢者の病気に共通する3つの特徴を知っておこう

高齢者がかかる病気には、主に3つの特徴がある点を理解しておきましょう。

  1. 複数の病気を同時に抱えやすい
  2. 重症化しやすい
  3. 一般的な症状とは異なるケースが多い

高齢になると身体機能や免疫力が低下しやすく、若い人よりも病気にかかるリスクが高く命にかかわる可能性もあります。また、同時に複数の病気になる人も多く、治療法も複雑になってしまう点も特徴です。そのため、家族が日常生活の中で「なんだかおかしいな」「元気がないな」とアンテナを張っておくことで、病気の複雑化・重度化を防止できるでしょう。

症状がわかりにくいからこそ「日常の観察」が鍵になる

高齢者になると病気が複雑になるだけではなく、加齢によって痛みや不調を感じにくくなってしまいます。本人でさえもこの痛み・不調に気づかず、「いつのまにか症状が悪化してしまった」というケースも少なくありません。知らぬ間に症状が悪化するのを防ぐためにも、家族は以下のような変化に注意が必要です。

  • いつもより元気がない
  • 口数が少ない
  • 食欲がない
  • 痛み、熱感がある
  • 物忘れや勘違いが多くなった など

いつもと違うと感じたら、早めに医療機関に相談するようにしましょう。

介護が必要になる主な要因

厚生労働省によると、介護が必要となった主な要因は下表のとおりです。

第1位

認知症

16.6%

第2位

脳血管疾患(脳卒中)

16.1%

第3位

骨折・転倒

13.9%

とくに、認知症は進行性の病気であり、他の脳血管疾患や骨折・転倒と異なり「いつのまにか・気づかないうちに」進行してしまっているケースが多くあります。重度化してから対応するのではなく、早い段階で「いつもと違う」と発見することが重要です。

男女で異なる要介護リスク——性別に応じた備えを

また、男女別で要介護状態になる要因は、下表のように違いがみられます。

  男性 女性

第1位

脳血管疾患(脳卒中)

高齢による衰弱

第2位

高齢による衰弱

脳血管疾患

第3位

認知症

骨折・転倒
関節疾患

男性は、生活習慣(喫煙や飲酒、ストレスなど)の要因により脳血管疾患の発症率が高くなる傾向にあります。

一方で女性の場合、男性と比べ骨折・転倒や関節疾患の割合が高い傾向です。女性はホルモンの影響で骨粗しょう症の発症リスクが高く、ケガが重症化しやすいと考えられています。

男女それぞれで要介護となる原因を把握しておくと、本人のアプローチや周辺環境への対策も講じやすくなるでしょう。

認知症——「物忘れ」だけではない初期症状チェック

認知症は、脳の病気や障害によって認知機能が低下する進行性の病気です。要介護状態となる原因の第1位であり、65歳以上の約3人に1人は認知機能にかかわる症状を抱えると見込まれています。

ここでは、認知症の基礎知識について以下2点を解説します。

  1. 家族が確認したい認知症の初期サイン
  2. 認知症と老人性うつの見分け方

誰でも起こりうる認知症について、理解を深めましょう。

家族が確認したい認知症の初期サイン

身近にいる家族がチェックしておきたい認知症の初期サインは、以下のとおりです。

  • 同じことを何度も繰り返し聞く
  • 今日の日付、曜日などがわからない
  • 性格が変わった(怒りっぽくなった、急に泣いている など)
  • 約束が守れない
  • 財布や鍵などの物を無くす頻度が増えた
  • 「誰かに盗まれた!」と被害妄想を語る場面が増えた など

認知症と一言で言っても、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、レビー小体型認知症など多くの種類があります。その種類によっても症状が異なるため、少しでも違和感を覚えたら早めに発見・相談することが大切です。早期発見・治療により、認知症の進行を緩やかにできるでしょう。

認知症と老人性うつの見分け方

認知症とよく似た症状として「老人性うつ」があります。老人性うつとは、65歳以上が発症するうつ病の総称であり、認知症との違いは下表のとおりです。

 

認知症

老人性うつ

原因

脳に起因する

心に起因する

自覚

ほとんどない

自覚があり、自責の念を強く持つ傾向にある

進行度

少しずつ悪化する

短期間に複数の症状が出る

記憶障害(物忘れ)

忘れたこと自体を忘れている

物事は覚えているが、思い出せないときがある

主な症状

  • 見当識障害
  • 実行機能障害
  • 判断力の低下 など
  • 悲観的な気持ち
  • 無気力
  • 睡眠障害
  • 食欲不振 など

認知症と老人性うつで重複している症状も多く、見極めが難しいケースが多くあります。老人性うつの判断ポイントは、何かのきっかけで発症して気分の落ち込みが強い傾向です。どちらにせよ、日頃から本人を観察し「いつもと様子が違う」と感じたら早めに医療機関へ相談しましょう。

フレイル——「なんとなく元気がない」が要介護への入り口

フレイルとは「加齢により心身が老い衰えた状態」を指します。特定の病名ではなく、加齢によって心身の活力が下がり、「健康」と「要介護」の中間に位置する状態です。

ここでは、フレイルについて以下2点を解説します。

  1. フレイルの5つのチェックポイント
  2. 高齢者の食欲不振はフレイルの入り口——放置のリスク

フレイルの危険性と予防するためのアプローチ方法について学びましょう。

フレイルの5つのチェックポイント

フレイルの評価基準は、下表の5つのチェック項目のうち3つ以上に該当している状態と言われています。

チェックポイント

概要

1. 歩行速度の低下

  • 歩く速度が遅くなる
  • 「1m/秒未満」が目安となる

2. 疲れやすさ

  • わけもなく疲れたように感じる
  • 「仕事が手につかない」「何をするのも面倒」と感じる

3. 活動性の低下

  • 意欲が低下している
  • 社会的な関係が変化、低下する(家族や友人との別れ など)

4. 筋力の低下

  • 握力が低下している
  • 運動機会が減少している
  • 病気や内服薬、食事の変化により衰えている

5. 体重減少

  • 意図せず体重が減っている
  • 半年で5%以上減少している

これらのチェックポイントを基に、フレイルを早期に発見してさまざまなリスクを予防しましょう。

高齢者の食欲不振はフレイルの入り口——放置のリスク

フレイルは、下図のようにさまざまな低下・変化が複合的に作用して要介護状態へと進行していく特徴があります。

フレイルサイクルの図

【参考】国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター:フレイルの原因は?

介護する家族が日常生活の中でご本人を観察するときには、まず「食欲が減っていないか?」をチェックするようにしましょう。

高齢者の食欲不振は、体重減少や低栄養などフレイル状態となる入口となりえます。食欲不振の主な原因は、以下のとおりです。

  • 加齢による味覚や嗅覚の変化
  • 口腔内の問題(歯の痛み、義歯の違和感など)
  • 唾液分泌の低下
  • 活動量の低下
  • 薬の副作用
  • うつ状態 など

食欲不振を放っておくとフレイルがさらに進むだけではなく、後述する誤嚥性肺炎やさまざまな病気が重度化する危険性があります。まずは「最近食事量が減ってきていないか?」「食べるモノや時間で何か不安を感じていないか?」を観察することが大切です。

誤嚥性肺炎——高齢者肺炎の多くを占める見えにくい脅威

誤嚥性肺炎とは、嚥下機能の低下により食べ物や唾液が気管に入り炎症を引き起こす疾患です。とくに、高齢者は誤嚥性肺炎にかかるリスク、また繰り返し発症するリスクが高くなっています。ここでは、誤嚥性肺炎について以下2点を解説します。

  1. 家族が気づきたい誤嚥のサイン
  2. 誤嚥性肺炎の予防に家族ができること

誤嚥性肺炎の知識を学び、本人にあった予防策を講じましょう。

家族が気づきたい誤嚥のサイン

誤嚥性肺炎の主な原因は「嚥下機能の低下」です。つまり、家族が以下のような「嚥下機能が下がったサイン」を見極めることが求められます。

  • 食事中によくむせ込む
  • 食後に痰がらみがみられ、声がガラガラしている
  • 以前と比べて食事に時間がかかるようになった
  • 食べ物を口の中に溜め込むようになった など

誤嚥性肺炎では「発熱・せき・たん」といった症状がみられますが、高齢者の場合こうした症状が出づらいこともあり注意が必要です。食事量の観察とともに、食事の様子・その後の状況もチェックするようにしましょう。

誤嚥性肺炎の予防に家族ができること

誤嚥性肺炎を予防するために、ご家族は以下のポイントを踏まえてサポートすると効果的です。

  • 食事中はしっかり噛んでもらう
  • 早食いせず、一口の量を少なくする
  • 食べるときの姿勢が傾いていないか注視する
  • 固い食材は食べやすいよう工夫する
  • 食後に口腔ケアをしてもらう

とくに重要なのは、歯磨きやうがいなど口の中を清潔に保つ点です。食事した後も口の中に食べ物が残っていると誤嚥を引き起こすリスクが高くなります。毎日の口腔ケアとともに、義歯の手入れや定期的な歯科検診も行うようにしましょう。

脳卒中・骨折・心疾患——突然の発症に備える知識

脳卒中や骨折・心疾患は認知症に次ぐ要介護状態の原因であり、「突然・いきなり」発症するケースがあります。とくに、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)などの脳血管性疾患では、発見タイミングや初動対応によってその後の生活が大きく左右される点が特徴です。できる限り早い段階で発見・治療できるよう、脳卒中の症状を把握しておきましょう。

脳卒中は「時間との勝負」——見逃せない5つの症状

脳卒中は、主に以下5つの症状がみられます。

  1. 身体の片側(片手・片足・顔半分)にしびれや麻痺が起こる
  2. 言葉が出にくくなる・呂律が回っていない
  3. 片方の目が見えない・物が二重に見える
  4. 立てない・歩けない・ふらつく
  5. (主にくも膜下出血の症状として)突然の激しい頭痛

脳卒中の原因はさまざまですが、主に糖尿病や高血圧などの生活習慣病によって発症・重症化する危険性が高くなります。そのため、早期発見・治療のポイントとして「5つの症状を把握する」とともに、長期的な視点では「生活習慣を見直すサポート」が必要です。

家族が見逃せない「病気のサイン」3つのチェックポイント

高齢の親を介護するときには、以下3つの「病気のサイン」を見逃さないようにしましょう。

項目

具体的なチェックポイント

1.  いつもより元気がない

  • いつもより食事量が減っている
  • 水分を摂っていない
  • 活動量や意欲が減った など

2. 痛みや熱がある

  • 痛みの訴えがある
  • 痛みが長く続き、体重が減っている
  • 37℃前後の微熱も含む発熱がみられる など

3. 物忘れが多くなった

  • 同じことを1日に何度も聞く
  • 約束が守れなくなった
  • 物を無くす、または「盗られた」と訴える など

高齢者がかかる病気の多くは初期症状が曖昧かつ複雑であり、なかなか初期段階で病気を断定づけるのは難しい状況です。ただし、本人を支える家族が上記のようなサインを把握して「いつもと少し違うかも?」と日常的に観察する取り組みは、病気の早期発見の要となるでしょう。

まとめ:介護サービスへの相談で「様子見」から「安心」へ

高齢者はさまざまな病気にかかりやすく初期症状もはっきりと現れないため、周りで支える家族も気づかないケースが多くあります。

「年のせいだから仕方ないのかな?」「いつもと違う様子だけれども、受診してよいか判断できない」と悩んだら、まずはかかりつけ医や介護相談できる窓口に現状を伝えてみてください。わからないから「様子見」するのではなく、介護サービスへ相談することで本人・ご家族の「安心」につながるでしょう。

なお、アイリンク・ケアでは、ご利用者・ご家族からの医療・介護相談も常時受け付けております。日常的に介護しているご家族の負担軽減はもちろん、遠方でなかなか介護できないご家族に代わりご利用者の生活を支援しています。「これからも安心して生活を続けていきたい」と考えている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。