親が認知症と診断されたときに最初に取るべき対応と備え
親が認知症と診断されたとき、「具体的に何からすればいいかわからない」「今すぐやっておくことはある?」と不安に感じる方がいらっしゃいます。とくに、いきなり介護生活が始まり、焦りや不安を強く感じることも多くあるでしょう。
この記事では、親が認知症と診断されたときに取るべき対応と医療面・生活面で押さえておきたいポイントについて解説します。
また、将来に向けた備えや診断直後にやってはいけない行動もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
認知症と診断された直後にまず理解すべきこととは?

親が認知症と診断されたら、まずは認知症そのものについて理解することから始め はじめましょう。認知症と診断されてもすぐに介護が始まるわけではありません。さらに、認知症と一言でいっても下表のように中核症状と周辺症状の2つに分けられ、出てくる症状はその人によって異なります。
| 中核症状 | 周辺症状 | |
|---|---|---|
| 特徴 | ・認知症を抱えるすべての方に見みられる ・徐々に進行し、改善は見込めない |
・一部の方に見みられる ・現れる症状や程度は人それぞれである |
| 主な症状 | ・記憶障害 ・見当識障害 ・判断障害 ・実行機能障害 |
・行動障害(徘徊・失禁など) ・精神症状(幻覚・妄想など) ・感情障害(うつ・不安など) ・意欲障害(意欲低下・高ぶりなど) |
「まず認知症そのものを理解する」という初動は、認知症を抱えた親の変化をいち早く察知でき、スムーズな治療や介護サービスの活用に役立ちます。早期に適切なサポートを受けられると、認知症の進行を緩やかにし穏やかな生活を続けられるでしょう。
認知症外来で必ず確認すべき医療面のポイント

認知症外来を受診する際、家族は3つのポイントを踏まえて確認しましょう。
認知症の診断名と原因疾患を把握する
1つ目は、認知症の詳しい診断とその原因疾患を把握する点です。認知症の種類や原因はさまざまであり、治療薬やケア方法などアプローチが変わり かわります。代表的な認知症とその特徴は、下表のとおりです。
| 種類 | 疾患要因 原因疾患 | 主な症状・特徴 |
|---|---|---|
| アルツハイマー型認知症 | 脳にアミロイドβやタウタンパクという異常なタンパク質が蓄積 | ・記憶障害 ・見当識障害 など |
| 血管性認知症 | 脳血管疾患によって脳組織が損傷 | ・記憶障害 ・判断力障害 など |
| レビー小体型認知症 | 脳内にレビー小体という異常なタンパク質が蓄積 | ・幻視 ・パーキンソン症状 など |
| 前頭側頭型認知症 | 脳の前頭葉や側頭葉が萎縮 | ・人格の変化 ・常同行動(※) など |
※同じ行動を繰り返す症状
認知症外来をに受診したら、認知症の種類や疾患要因原因疾患を確認し理解することから始めましょう。
認知症の基礎知識や診断方法などについて知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。
関連記事:認知症とは? 初期症状から種類・治療法まで徹底解説
今後想定される症状と進行の見通しを確認する
2つ目は、今後想定される症状と進行の見通しを確認する点です。代表的な認知症状の経過と進行速度の目安を把握しておきましょう。
| 種類 | 初期症状 | 進行速度 |
|---|---|---|
| アルツハイマー型認知症 | ・物忘れが増える ・言葉が出て でてこなくなる ・判断力が低下する など |
ゆっくり進行する |
| 血管性認知症 | ・意欲低下 ・失認、失行 など |
脳梗塞などの発症により段階的に進行する |
| レビー小体型認知症 | ・幻視、幻覚 ・運動機能障害 など |
個人差が激しい |
| 前頭側頭型認知症 | ・性格や人格の変化 ・行動障害 ・言語障害 など |
比較的緩やか ゆるやかに進行する |
認知症の症状によっては、すぐに介護が必要なケースと様子観察しながら日常生活を続けていけるケースに分けられます。
治療方針と次回受診までの注意点を質問する
3つ目は、今後の治療方針と次回受診までの注意点を確認しておく点です。具体的には、以下のポイントを担当医に聞いておきましょう。
- 今後の治療方針
- 服薬があるか
- 服薬を始める場合、副作用が出る可能性はあるか
- どのような副作用が出やすいか
- 次回受診までに観察しておくべきポイントはあるか
また、今後生活を続けるなか中で突然症状に変化が出る可能性もあります。どのタイミング・状況で次回を待たずに再受診したほうがよいかもあわせて確認しておきましょう。
認知症高齢者の日常生活自立度の考え方

認知症高齢者の日常生活自立度とは、認知症の症状や状態の目安を表す指標のことです。要介護認定を受けるとき時や現状を端的に把握するとき時に活用します。
| ランク | 判断基準 | 見られる症状・行動例 |
|---|---|---|
| Ⅰ | なんらかの認知症を有するが、日常生活は家庭内・社会的にほぼ自立している | |
| Ⅱ | 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる | |
| Ⅱa | 家庭外でⅡの状態が見られる | ・たびたび道に迷う ・買い物、金銭管理などにミスが目立つ など |
| Ⅱb | 家庭内でもⅡの状態が見られる | ・服薬管理ができない ・電話や訪問者対応ができない ・1人で留守番ができない など |
| Ⅲ | 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする | |
| Ⅲa | 日中を中心としてⅢの状態が見られる | ・排泄、食事、更衣がうまくできない ・不潔行為 ・徘徊 ・失禁 など |
| Ⅲb | 夜間を中心としてⅢの状態が見られる | |
| Ⅳ | 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする | |
| M | 著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする | ・せん妄 ・妄想 ・自傷、他害 など |
もちろんすべての方が上記のケースに当てはまるわけではありませんが、医師の診断結果を踏まえた家庭での生活・サポートの判断材料となるでしょう。
診断直後から始める家族の生活面のポイント

親が認知症の診断を受けたら、親を支える家族は以下のポイントを意識しましょう。
- 本人の尊厳を損なわない関わり方
- 家族間での役割分担
- 生活環境の見直し
すぐに必要になるわけではありませんが、早めにポイントを意識しておくことが大切です。
認知症における周辺症状の原因や対策について知りたい方は、以下の記事もチェックしてください。
関連記事:認知症になるとなぜ徘徊してしまうか知ってますか?
家族が意識したい心構えや役割分担
認知症と診断された親の尊厳や自尊心を損なわないような心がけ・関わりが重要です。たとえば、以下のような関わり方を意識してみましょう。
- 否定しない
- 怒らない
- 具体的にわかりやすく伝える
- その人らしさを大事にし、ペースをあわせる など
本人は、今までできていたことができなくなったり、身体的・精神的な変化を感じ辛くなったりします。こうした不安・心配も抱える親を支えるためには、家族や周囲の方々のサポートは不可欠です。
さらに、介護者である家族が無理しすぎてしまうと、体も心も疲れてしまい最悪共倒れしてしまいます。そうならないためにも、家族間で役割を分担しそれぞれが無理のない範囲で親を介護する取り組みが重要です。1人ですべてを抱えるのではなく、他の家族や近くの専門機関と連携しましょう。
認知症状のなかでもとくに対応が難しい周辺症状の基礎知識や、その対策について知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
生活環境の見直し
認知症を抱えた親が安心して生活できるよう環境を少しずつ見直すことが大切です。具体的に見直すポイントは、下表のとおりです。
| ポイント | 対応例 | 優先度 |
|---|---|---|
| 安全性を確保する | ・つまずきやすい段差などを取り除く ・手すりを設置する ・暗い場所があれば照明をつける ・火の管理がしやすい調理機器に交換する など |
高い |
| 使いやすさを重視する | ・カレンダーや時計の文字を大きくする ・写真や絵を活用してわかりやすくする ・財布やカギなどの貴重品の置き場をわかりやすくする など |
状況により判断 |
| 落ち着ける環境を作る つくる | ・思い出の品や写真を飾っておく ・仲のよい友人や近所の方に声をかけてもらう など |
まずは、転倒などケガを防ぐための安全な生活環境が重要です。身体機能も少しずつ衰えてくるため、転倒が原因で骨折するなど重度化してしまう可能性が高くなります。その後、状況に応じて本人が使いやすい環境作りもできると、安全に安心して生活を続けられるでしょう。
ただし、これら生活環境を見直すときは、本人の意見を聞きながら少しずつ整えることが必要です。無理に、そして急に変えてしまうと混乱を招いてしまい、かえって認知症状が悪化する恐れもあります。本人の状況や希望を踏まえた生活を作っていきましょう。
親が認知症と診断されると、家族にとっては介護・生活環境の見直しなど対応することが多く、身体的・精神的な負担が多くなってしまいます。「なかなか自宅での介護ができず不安だ」と感じる方は、選択肢の1つとして施設への入所もおすすめです します。アイリンク・ケアでは、認知症を抱えた方でも安心できる住まい・サービスを提供しています。これからの介護や生活に悩みを抱えている方は、ぜひご相談ください。
早めに着手すべき介護保険や民間保険

親が認知症と診断された場合、早めに着手しておきたいのが公的介護保険や民間保険の活用です。まず介護保険サービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定は、以下3つのステップです。
- お住まいの市区町村にある介護保険課へ要介護認定を申請する
- 訪問調査を受ける
- 一次・二次審査の後に、要介護度が決定・通知される
要介護認定の申請から要介護度の決定まで1~2か月程度かかります。早い時期早めから介護保険サービスに関する情報を収集しておくと、結果的に家族の介護負担が軽減できるでしょう。
また、公的介護保険に加え民間の介護保険を も検討しておくのもおすすめです。介護保険サービスに加え、住宅改修や介護に必要な備品購入で経済的な負担もかかるでしょう。 民間保険は、親が認知症と診断されたら給付金や保険金を受け取れるため、介護保険サービス費や治療費などに充てられます。ただし、受け取るための条件や補償内容はさまざまなため、加入前にしっかり確認しておきましょう。
診断直後にやってはいけない対応

認知症の診断を受けた後にやってはいけない対応は、主に以下の内容です。
- 認知症になった親を責める
- 「何もできない」と決めつけて、本人の能力・役割を一方的に奪う
- 家族だけで親の介護を抱える
- 家族間での話し合いを避ける など
認知症と診断された本人も、突然介護しなければならなくなった家族も、これからの生活に不安を感じるでしょう。家族が本人の行動を制限したり奪ったりする行為は、かえって本人にストレスを与えて症状を悪化させてしまいます。より状況が悪化すると、虐待やネグレクトにつながりかねません。
平均的な介護期間は約4~5年と、長期的な視点で介護を考える必要があります。家族だけで抱え込むのではなく、地域包括支援センターなどの相談窓口や介護保険サービスを積極的に活用し、できる限り本人も家族も安心できる生活を続けましょう。
まとめ

認知症と診断されたら、本人も家族もこれからの生活に不安を感じてしまいます。まずは、認知症そのものを理解しながら、今後の見通しを立てていきましょう。医療面と生活面の両方から本人をサポートできると、認知症の進行を和らげ、その人らしく穏やかに生活できます。
また、家族も不安を抱えながら介護を続けていくと身体的・精神的にも辛くなるでしょう。1人で抱え込まず、他の家族や近くの介護相談を積極的に活用し、できる限り負担を減らせる取り組みが大切です。