ケアマネジメント

2024.09.27

CADLがケアマネジメントを変える! vol.1

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2025年団塊世代が後期高齢者となる「新しい高齢者の時代」へ突入します。
次世代のマネジメントは「できないこと」から「できていること・やってみたいこと」のサポートへの大転換が求められています。
その理論的支柱となるのがこれから説明するCADL(シー・エー・ディー・エル)理論です。

いま注目を集めている「CADL」(文化的日常生活行為:Cultural activities of daily living)。これまでのADL・IADL・健康状態中心のアセスメントでは重きをおかれなかった「生きがい、心地よさ、暮らし方」などを評価する新しいアセスメント領域であり、支援領域です。2008年に出版した「ケアマネジャーの質問力」(中央法規出版)で高室成幸氏が提唱しました。

CADL理論、現場の事例も含めながら、シリーズ化してお届けしようと思っています。

CADLとは(定義)

文化的日常生活行為(Cultural-activities of daily living;CADL)とは、ICF(国際生活機能分類)の個人因子と環境因子に依拠し、参加・活動を含む日常生活で行う本人の文化的な生活行為及び要素を言う。
構成される領域に、「楽しみ、趣味、役割、関係、仕事、参加、交流、学び、こだわり」などがあり、ADLやIADL、健康状態、認知機能の維持・改善・向上にも影響を与える。人間としての尊厳領域(生きて在ることへの肯定)として位置づけられ、心の機能が低下しても認知症や看取り期までを含めて本人を支える「基本要素」となる。と高室さんは定義しています。

CADLは、ケアマネジメント領域および認知症ケアで使われている「その人らしさ、なじみの関係、居場所、個別性、利用者本位、ストレングス(強さ)」などの用語を包括する概念とも評価されています。ADL・IADL・CADLを「支える」ための機能であり、CADLはADL・IADL・健康状態・認知機能の維持・改善・向上に向けて「本人を動機づける機能」を持つと体系化・理論化をめざしています。

ICFに足りないもの

画期的なICFも「主観的次元」を盛り込めなかった点で「不完全だ」といわざるを得なかったようです。つまり主観的体験(主観的障害)は疾患・客観的障害の影響を受けるだけでなく、影響を与える、つまり相互に作用するものであると主張しています。

「ICFは客観的な分析には非常にいい枠組みだが、心の中をまったく考えてはいない、これでは問題の一面しかみていないことになる」
というのがCADL提唱のきかっけとなります。

 

 

総合的・包括的な主観的体験として次の4つを上げています。

  1. 「人生の価値、生きる意味、生きる目標、生きる価値」(信念等)
  2. 「身近な人との関係(愛する・愛される、感謝する・感謝される等)
  3. 「集団への帰属感」(役に立つ、責任を担う、賞賛される等)
  4. 「基本的生活態度」(自立心、困難への対応、自己決定等)

その人の人生を作ってきた本人のCADLに着目し、その行為を行う上で障害となっているのは何か?を問い、その因子を「ADL,IADL、体力・体調、身体機能、精神機能(心理状態、意欲)、関係、環境」の各領域で分析し「サポートする手段と内容」を決定するプロセスを説いています。

 

どこにゴールを定めるか

何のためにリハビリしてるの?
 ⇒ 下肢筋力を鍛えるため

じゃあなんで下肢筋力を鍛えてるの?
 ⇒ 下肢筋力の衰えを予防するため

じゃあなんで下肢筋力の衰えを予防するの?
 ⇒ 寝たきりにならないため

介護の負担を減らすため、自立支援、介護予防、などなど理由は様々ですが、 
中身はADL中心、IADL中心、体調改善中心の様々なゴールが設定されやすいです。

一方、CADL理論の具体的ケアプランはこんな感じになります。

これまで「目的」だったものが「手段」となり、真のゴールが書き換わります。
ただ、その人の人生を真に理解したゴールの設定が難しい。

次回はCADLのアセスメント・プラニングにおける4つの効果について深掘りしていきます。