福祉用具・福祉支援機器

2025.12.04

【完全ガイド】福祉用具貸与とは?対象機器・費用・申請方法を徹底解説

img

高齢のご家族が自宅での生活を続けるためには、身体機能に合わせた適切な福祉用具の利用が不可欠です。しかし、どのような用具が借りられるのか、費用はどの程度かかるのか、申請方法はどうすればいいのかなど、分からないことも多いのではないでしょうか。福祉用具貸与は、介護保険制度を利用して車いすや特殊寝台などを月額レンタルできるサービスで、ご本人の自立支援と介護者の負担軽減を目的としています。この記事では、福祉用具貸与の基本的な仕組みから、対象となる13品目の用具、費用負担の詳細、申請から利用開始までの流れまで、ご家族やケアマネジャーの方が知っておくべき情報を体系的に解説します。適切な福祉用具を選び、スムーズに申請・利用できるよう、ぜひ最後までお読みください。

福祉用具貸与とは

福祉用具貸与とは、介護保険制度に基づいて提供される居宅サービスの一つで、日常生活の自立を助けるための用具を月額でレンタルできる仕組みです。高齢者や要介護者が自宅で安全かつ快適に暮らし続けるために、必要な福祉用具を経済的な負担を抑えながら利用できる点が大きな特徴となっています。このサービスは、購入するよりも低コストで最新の機器を使用でき、身体状況の変化に応じて用具を交換できる柔軟性も備えています。

利用資格と要介護・要支援の基準

福祉用具貸与を利用できるのは、原則として要介護認定または要支援認定を受けた方です。ただし、すべての福祉用具がすべての要介護度で利用できるわけではなく、用具の種類によって利用できる要介護度が定められています。この制限は、軽度者の自立支援を妨げないよう配慮されたものであり、過度に福祉用具に依存することを防ぐ目的があります。

具体的には、車いすや特殊寝台、床ずれ防止用具、体位変換器、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフトの6品目については、原則として要介護2以上の方が対象となります。要支援1・2や要介護1の方は、これらの用具を通常は利用できません。一方、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえの4品目は、要支援1以上のすべての方が利用可能です。その他の品目についても、要介護度に応じた利用条件が設定されています。

ただし、要介護1以下の方であっても、医師の意見書や特例的な理由がある場合には、原則対象外の福祉用具を利用できるケースがあります。たとえば、日常的に歩行が困難で車いすが必要と医師が判断した場合や、がん末期などの特定疾病により移動機能が著しく低下している場合などです。このような例外措置を受けるには、市区町村への申請と認定が必要となります。

ケアプランと医師の意見書の役割

福祉用具貸与を介護保険で利用するには、必ず居宅サービス計画に福祉用具の利用が位置づけられている必要があります。ケアマネジャーは、ご本人の身体状況や生活環境、介護者の負担状況などを総合的に評価し、どのような福祉用具が必要かを判断します。この判断に基づいてケアプランが作成され、そこに記載された福祉用具のみが介護保険の給付対象となります。

特に原則対象外の福祉用具を軽度者が利用する場合には、医師の意見書が重要な役割を果たします。医師の意見書には、なぜその福祉用具が必要なのか、どのような身体状況であるのかが具体的に記載されます。たとえば、要介護1の方が特殊寝台を利用する場合、起き上がりや寝返りが困難である医学的理由や、それによる生活への支障が明記されることになります。

ケアマネジャーは、医師の意見書の内容を踏まえて、市区町村に対して例外給付の申請を行います。市区町村の担当者は、提出された医師の意見書やケアマネジャーの評価をもとに、福祉用具貸与の必要性を審査します。承認されれば、軽度者であっても介護保険を利用して原則対象外の福祉用具をレンタルできるようになります。この手続きには一定の時間がかかるため、早めに担当ケアマネジャーに相談することが大切です。

申請時に必要な書類

福祉用具貸与を開始するには、いくつかの書類の準備と手続きが必要です。まず基本となるのが、介護保険被保険者証です。この証明書には要介護度や認定期間が記載されており、福祉用具貸与を利用する際の資格確認に使用されます。有効期限が切れている場合は、更新申請を済ませておく必要があります。

次に、ケアマネジャーが作成した居宅サービス計画書と、その中に含まれる福祉用具貸与計画書が必要です。福祉用具貸与計画書には、どの福祉用具をどのような目的で使用するのか、それによってどのような効果を期待するのかが具体的に記載されます。この計画書は、福祉用具専門相談員が作成に関わることもあり、利用者やご家族の同意が必要となります。

軽度者が原則対象外の福祉用具を利用する場合には、先述の医師の意見書に加えて、市区町村指定の申請書類を提出する必要があります。自治体によって書式や手続きの詳細が異なるため、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに確認することをお勧めします。また、所得区分によって自己負担割合が変わるため、必要に応じて所得証明書の提出を求められる場合もあります。

これらの書類が揃い、市区町村の承認を得られれば、福祉用具貸与事業者と契約を結び、実際に福祉用具の利用を開始できます。事業者との契約時には、レンタル料金や保守点検の方法、故障時の対応などが説明されますので、不明点があればその場で確認しておくことが重要です。契約後は、定期的にケアマネジャーや福祉用具専門相談員が訪問し、利用状況の確認や必要に応じた調整を行います。

福祉用具貸与の利用手続きと申請の流れ

福祉用具貸与を実際に利用開始するまでには、いくつかの手順を踏む必要があります。介護保険制度に基づくサービスであるため、ケアマネジャーとの連携が不可欠であり、適切な事業者の選定も重要です。ここでは、相談から貸与開始、そして返却までの一連の流れを、具体的な手順とともに詳しく解説します。

ケアマネとの相談とケアプラン作成

福祉用具貸与の利用を検討する際、最初のステップは担当のケアマネジャーへの相談です。ケアマネジャーは、ご本人の身体状況や生活環境、介護者の状況を総合的に評価し、どのような福祉用具が必要かを判断します。この段階で、日常生活でどのような場面で困っているのか、どのような動作に支援が必要なのかを具体的に伝えることが重要です。たとえば、トイレまでの移動が不安定である、ベッドからの起き上がりが困難である、といった具体的な困りごとを共有します。

ケアマネジャーは、相談内容をもとに居宅サービス計画を作成し、その中に福祉用具貸与を位置づけます。ケアプランには、なぜその福祉用具が必要なのか、それによってどのような効果を期待するのか、利用の目標は何かが明確に記載されます。たとえば、歩行器を導入することで屋内の移動を安全に行い、転倒リスクを減らすという目標が設定されます。このケアプランに基づいて、初めて介護保険の給付対象として福祉用具を利用できるようになります。

ケアプランの作成後、ケアマネジャーは福祉用具貸与事業者に連絡を取り、具体的な用具の選定に進みます。多くの場合、福祉用具専門相談員が自宅を訪問し、実際の生活環境を確認したうえで、最適な福祉用具を提案します。この訪問時には、ご家族も同席し、使い方や注意点について詳しく説明を受けることが大切です。また、複数の選択肢がある場合は、可能であれば試用してから決定することをお勧めします。

事業者の選び方と見積もり取得

福祉用具貸与事業者は地域に複数存在するため、信頼できる事業者を選ぶことが重要です。事業者を選ぶ際のポイントとして、まず事業所が都道府県または市区町村から指定を受けた正規の事業者であることを確認します。ケアマネジャーから紹介される事業者は通常指定事業者ですが、自分で探す場合は市区町村の窓口やホームページで確認できます。

次に、福祉用具専門相談員の質も重要な選定基準となります。福祉用具専門相談員は、利用者の状態に合った用具の選定、適切な使用方法の説明、定期的なモニタリングを行う専門職です。相談時の対応が丁寧か、専門的な知識を持っているか、利用者や家族の話をよく聞いてくれるかなどを見極めましょう。また、緊急時の対応体制や、故障時の交換対応の迅速さも確認しておくべきポイントです。

複数の事業者から見積もりを取得し、レンタル料金やサービス内容を比較することもお勧めします。同じ種類の福祉用具でも、事業者によってレンタル料金が異なる場合があります。ただし、料金だけでなく、保守点検の頻度や内容、消耗品の交換対応、緊急時のサポート体制なども含めて総合的に判断することが大切です。見積書には、月額レンタル料、自己負担額、初期費用の有無、保守点検の内容などが記載されていますので、不明点があれば必ず確認しましょう。

事業者との契約前には、契約内容をしっかりと確認することが必要です。契約書には、レンタル料金、支払い方法、契約期間、解約条件、故障時の対応、保守点検の頻度、利用者の責任範囲などが記載されています。特に、解約時の条件や、破損・紛失時の費用負担については明確にしておくことをお勧めします。契約後に疑問が生じた場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談することもできます。

貸与開始から返却までの具体的な流れ

事業者との契約が完了すると、福祉用具の搬入と設置が行われます。搬入時には、福祉用具専門相談員が同行し、用具の使い方や注意点を実演しながら説明します。この際、実際に操作してみて、使い方を確認することが重要です。特に電動機器の場合は、リモコンの操作方法や緊急停止ボタンの位置、充電方法などをしっかりと理解しておきましょう。また、取扱説明書や緊急連絡先も受け取り、すぐに見られる場所に保管しておきます。

貸与開始後は、定期的に福祉用具専門相談員が訪問し、利用状況の確認や調整を行います。この訪問をモニタリングと呼び、6か月に1回以上実施されることが義務付けられています。モニタリング時には、福祉用具が適切に使用されているか、身体状況の変化により用具の変更が必要ないか、不具合や困りごとはないかなどを確認します。ご本人やご家族から見て使いにくい点や不安な点があれば、この機会に遠慮なく伝えましょう。

福祉用具が不要になった場合や、要介護度の変更により利用できなくなった場合は、ケアマネジャーに連絡して返却の手続きを進めます。返却時には、事業者が引き取りに来ますので、原則として利用者側で運搬する必要はありません。返却後の福祉用具は、専門の業者によって洗浄・消毒・点検が行われ、次の利用者のために整備されます。レンタル制度であるため、返却時に処分費用がかかることはありませんが、故意の破損や著しい汚損がある場合は、修理費用の一部を負担する可能性があります。

また、要介護度の変更により利用できる福祉用具が変わる場合があります。たとえば、要介護1から要介護2に変更された場合、それまで利用できなかった特殊寝台や車いすが新たに利用可能になります。逆に、要介護度が改善した場合は、使用していた福祉用具を返却しなければならないケースもあります。このような変更があった際には、ケアマネジャーがケアプランの見直しを行い、新しい状況に応じた福祉用具の選定をサポートします。

福祉用具貸与の費用と自己負担

福祉用具貸与を利用する際に気になるのが費用の問題です。介護保険制度を利用することで、レンタル費用の大部分が保険給付され、利用者の自己負担は1割から3割に抑えられます。ただし、要介護度ごとに定められた利用限度額や、用具の種類によって費用が異なるため、事前に費用の仕組みを理解しておくことが大切です。ここでは、福祉用具貸与にかかる費用の詳細と、経済的負担を軽減するための制度について解説します。

介護保険での給付と自己負担割合

福祉用具貸与の費用は、介護保険から給付される仕組みになっています。利用者が支払う自己負担割合は、所得に応じて1割、2割、または3割と定められています。一般的な所得の方は1割負担となり、一定以上の所得がある方は2割または3割の負担となります。自己負担割合は、介護保険負担割合証に記載されていますので、手元の証明書で確認できます。

ただし、福祉用具貸与の費用は、要介護度ごとに定められた月々の利用限度額の範囲内で利用する必要があります。利用限度額は、要支援1で約5万円、要介護1で約16万円、要介護5で約36万円となっており、これを超えた分は全額自己負担となります。福祉用具貸与だけでなく、訪問介護やデイサービスなど他の居宅サービスも同じ限度額に含まれるため、複数のサービスを組み合わせて利用する場合は、ケアマネジャーと相談しながら限度額内でバランスよく配分することが重要です。

レンタルと購入の費用比較

福祉用具を入手する方法として、レンタルと購入の2つの選択肢があります。一般的な福祉用具貸与の対象品目については、介護保険を利用したレンタルが経済的に有利です。たとえば、特殊寝台を購入する場合、20万円から40万円程度の費用がかかりますが、レンタルであれば月額5,000円から15,000円程度で、1割負担なら月500円から1,500円で利用できます。

購入とレンタルのどちらが得かを判断する際には、利用期間が重要なポイントとなります。短期間の利用であればレンタルが圧倒的に有利ですが、長期間にわたって同じ用具を使い続ける場合は、購入も検討の余地があります。ただし、購入した場合は、身体状況の変化により用具が合わなくなった際の交換費用や、故障時の修理費用、不要になった際の処分費用もすべて自己負担となります。

2024年4月からは、歩行器、歩行補助つえ、スロープの3品目について、レンタルと購入の選択制が導入されました。これらの品目については、利用者が貸与と購入のどちらかを選べるようになっています。購入を選んだ場合は、特定福祉用具購入費として年間10万円を上限に、購入費用の7割から9割が償還払いで支給されます。どちらを選ぶかは、利用期間の見込み、衛生面の希望、身体状況の変化の可能性などを考慮して判断します。

自治体の助成制度と追加支援

介護保険の給付に加えて、多くの自治体が独自の助成制度や支援制度を設けています。たとえば、低所得世帯を対象とした自己負担額の軽減制度や、介護保険の対象外となる福祉用具の購入費助成などがあります。これらの制度は自治体によって内容や条件が異なるため、お住まいの市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに確認することをお勧めします。

また、障害者手帳をお持ちの方は、障害者総合支援法に基づく日常生活用具給付事業や補装具費支給制度を利用できる場合があります。これらの制度は介護保険とは別の仕組みで、介護保険の対象外となる用具や、より高機能な用具を導入する際に活用できます。ただし、同じ用具について介護保険と障害福祉の両方の給付を同時に受けることはできないため、どちらの制度を利用するかは担当のケアマネジャーやソーシャルワーカーと相談して決定します。

さらに、医療費控除の対象となる福祉用具もあります。介護保険の給付を受けて利用している福祉用具貸与の自己負担分や、特定福祉用具購入費の自己負担分は、一定の要件を満たせば医療費控除の対象となります。年間の医療費が一定額を超える場合は、確定申告によって所得税の還付を受けられる可能性がありますので、領収書を保管しておくことが大切です。医療費控除の詳細については、税務署や税理士に相談することをお勧めします。

保守修理や交換時の費用負担

福祉用具をレンタルで利用している場合、通常の使用による摩耗や経年劣化に伴う修理や交換は、原則として事業者側の負担で行われます。定期的な保守点検やメンテナンスもレンタル料金に含まれており、利用者が追加の費用を支払う必要はありません。たとえば、特殊寝台のモーターが故障した場合や、車いすのタイヤがすり減った場合などは、事業者に連絡すれば無償で修理または交換してもらえます。

ただし、故意または重大な過失による破損や紛失については、修理費用や弁償金を請求される場合があります。たとえば、使用方法を誤って機器を破損させた場合や、屋外に放置して盗難に遭った場合などは、利用者側の責任となる可能性があります。そのため、契約時には故障や破損時の責任範囲について明確に確認しておくことが重要です。また、取扱説明書に記載された使用方法や注意事項を守り、適切に管理することが大切です。

福祉用具の交換が必要になった場合、身体状況の変化によるものであれば、ケアマネジャーとケアプランを見直したうえで、新しい用具に交換することができます。この場合の交換費用は、通常のレンタル料金の範囲内で対応され、追加の費用は発生しません。ただし、単に別の種類の用具を試してみたいといった理由での頻繁な交換は、事業者によっては対応してもらえない場合もあります。交換を希望する際は、まずケアマネジャーに相談し、必要性を判断してもらうことが適切な手順です。

福祉用具貸与で借りられる主な用具と選び方

福祉用具貸与の対象となる用具は、厚生労働省が定めた13品目に限定されています。これらの用具は、移動支援、入浴・排泄支援、床ずれ防止、認知症対応など、多様な生活場面をカバーしています。ご本人の身体状況や生活環境、介護者の負担状況に応じて、最適な用具を選択することが大切です。ここでは、主要な福祉用具の種類と特徴、選び方のポイントを詳しく解説します。

移動・歩行支援用具

移動や歩行を支援する福祉用具には、車いす、車いす付属品、歩行器、歩行補助つえ、手すり、スロープなどがあります。これらは日常生活の移動範囲を広げ、転倒リスクを低減するために重要な役割を果たします。車いすは、自走式と介助式に分かれており、ご本人の身体機能や使用場面に応じて選択します。自走式は上肢の力が保たれている方に適しており、介助式は介護者が操作しやすい構造になっています。

車いすを選ぶ際には、座面の幅や高さ、クッション性、タイヤの種類などを考慮することが重要です。体格に合わない車いすを使用すると、姿勢が崩れたり床ずれが発生したりするリスクがあります。また、室内で主に使用する場合と屋外での移動に使用する場合では、適した車いすのタイプが異なります。福祉用具専門相談員に自宅環境や使用目的を詳しく伝え、試用してから決定することをお勧めします。

歩行器や歩行補助つえは、ある程度歩行能力が保たれている方の転倒予防に有効です。歩行器には固定式と車輪付きがあり、バランス能力や使用環境に応じて選択します。歩行補助つえは、T字型、多脚型、ロフストランドクラッチなど様々な種類があり、握力や体重支持の必要性に応じて適切なものを選びます。2024年4月からは、歩行器と歩行補助つえについて貸与と購入の選択制が導入されており、使用頻度や衛生面の希望に応じて選ぶことができるようになっています。

手すりやスロープは、住環境の段差や階段での転倒を防ぐために設置します。手すりには取り付け工事が不要な置き型タイプと、壁面に固定するタイプがあります。福祉用具貸与では工事不要な取り外し可能なものが対象となり、工事を伴う固定式は住宅改修費の支給対象となります。スロープも同様に、持ち運び可能な簡易型は貸与の対象、工事を伴う設置型は住宅改修となるため、設置場所や使用期間を考慮して選択します。

入浴・排泄支援用具

入浴や排泄の場面は、転倒リスクが高く介護負担も大きいため、適切な福祉用具の活用が特に重要です。自動排泄処理装置は、尿や便を自動的に吸引・処理する装置で、寝たきりの方や重度の排泄障害がある方に使用されます。この装置には、尿のみを処理するタイプと、尿と便の両方を処理できるタイプがあります。要介護度による利用制限があり、尿のみのタイプは要介護2以上、尿便両用タイプは要介護4以上が原則の対象となります。

自動排泄処理装置を導入することで、夜間のおむつ交換の回数が減り、介護者の睡眠時間を確保できる効果があります。また、ご本人の皮膚トラブルやおむつかぶれの予防にもつながります。ただし、機器の設置スペースや電源の確保、定期的な消耗品の交換が必要となるため、自宅環境での使用可能性を事前に確認することが大切です。導入前には、福祉用具専門相談員による自宅訪問と詳細な説明を受けることをお勧めします。

入浴に関連する福祉用具としては、簡易浴槽がありますが、こちらは特定福祉用具販売の対象となっており、貸与ではなく購入して使用する形になります。一方、浴槽への出入りを補助する手すりやバスボードなどは、特定福祉用具購入費の支給対象となります。入浴支援については、貸与と購入の区分を正しく理解し、ケアマネジャーと相談しながら最適な方法を選択することが重要です。

生活・介護負担軽減用具

日常生活の質を高め、介護負担を軽減するための福祉用具として、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、移動用リフト、認知症老人徘徊感知機器などがあります。特殊寝台は、背上げや高さ調整ができる電動ベッドで、起き上がりや立ち上がりの動作を補助します。要介護2以上の方が対象となりますが、医師の意見により軽度者でも利用できる場合があります。

特殊寝台の選択では、モーターの数や機能が重要なポイントとなります。1モーターは背上げのみ、2モーターは背上げと高さ調整、3モーターは背上げ・膝上げ・高さ調整ができます。ご本人の身体機能や介護の必要性に応じて、適切なタイプを選びます。また、特殊寝台付属品として、サイドレールやマットレス、ベッド用手すりなども貸与の対象となっており、安全性と快適性を高めるために組み合わせて使用します。

床ずれ防止用具や体位変換器は、長時間同じ姿勢で過ごす方の褥瘡予防に不可欠です。床ずれ防止用具には、エアマットレスやウレタンマットレスがあり、体圧を分散させる機能があります。体位変換器は、身体の向きを変える際の補助をする用具で、介護者の負担を大幅に軽減します。これらの用具は、すでに床ずれができてからではなく、予防的に早期から使用することが効果的です。

移動用リフトは、ベッドから車いすへの移乗など、抱え上げが必要な場面で使用します。床走行式、固定式、据え置き式など様々なタイプがあり、使用場所や頻度に応じて選択します。つり具部分は衛生面から特定福祉用具販売の対象となっており、レンタルではなく購入が必要です。認知症老人徘徊感知機器は、認知症の方が無断で外出しようとした際に家族に知らせるセンサーで、安全確保のために有効です。

まとめ

福祉用具貸与は、介護保険制度を活用して車いすや特殊寝台などの福祉用具を月額レンタルできるサービスで、要介護者の自立支援と介護者の負担軽減を目的としています。利用には要介護認定が必要で、用具の種類によって利用できる要介護度が定められていますが、医師の意見により例外的に認められる場合もあります。

利用を開始するには、まずケアマネジャーに相談し、ケアプランに福祉用具貸与を位置づける必要があります。その後、福祉用具貸与事業者を選び、福祉用具専門相談員のアドバイスを受けながら具体的な用具を選定します。費用は介護保険から給付され、自己負担は所得に応じて1割から3割となり、月々の利用限度額の範囲内で利用することができます。レンタル形式のため、身体状況の変化に応じて柔軟に用具を変更でき、保守点検や故障時の対応も事業者が行うため安心です。

福祉用具を適切に活用することで、転倒などの事故リスクを減らし、ご本人の活動範囲を広げ、介護者の身体的負担も軽減できます。まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、ご自身やご家族の状況に合った福祉用具の利用を検討してみてください。