看護・医療・リハビリ

2025.01.05

SpO2 正しく測れていますか?

img

介護や看護の現場では、SpO2(酸素飽和度)の正確な測定が重要です。特に高齢者や呼吸器疾患のある方など、健康状態を把握するために重要な指標です。測り方によっては数値が変わってきますので、今回は、SpO2を正確に測定するためのポイントと測定後の判断の目安等を解説します。
介護現場で働く方はもちろん、自宅で介護されているご家族の方もご参考にしていただければと思います。

 目次

  1. SpO2とは
  2. パルスオキシメーターの使い方と注意点
    設定前の準備
    SpO2測定の手順
    測定時の注意
    測定後の対応
  3. SpO2が危険な状態とは?
    危険値の目安と症状
    SpO2低下の原因

    正常値を下回るとどうなるの?
    SpO2が低いのに苦しくないケース
    SpO2が正常なのに呼吸困難なケース
    SpO2が低い場合の対処法
  4. パルスオキシメーターを選ぶ際の注意点
    医療機器認証の確認
    その他の機能の確認
    定期的なメンテナンス
  5. SpO2測定のための最新技術をご紹介
    フレキシブルおよびウェアラブルセンサー
    カメラを使った非接触型SpO2測定
    深層学習と多知覚スペクトル
    低消費電力センサーと新しい測定部位

1.SpO2とは

SpO2(サチュレーション)とは、血液中の酸素飽和度(体内のヘモグロビンと結合した酸素量の割合のこと)を示す指標です。健康な状態では、ほぼ100%に近い値を示しますが、様々な要因で低下することがあります。SpO2を把握することは、体内の酸素状態を把握する上で非常に重要です。
酸素は、私たちの生命維持に不可欠な要素であり、細胞がエネルギーを作り出すために必要です。血液中の酸素濃度が低下すると、全身の臓器や組織が正常に機能しなくなり、様々な健康問題を引き起こす可能性があります。そのため、SpO2を定期的に測定し、酸素レベルをモニタリングすることは、健康管理において非常に大切です。
特に、呼吸器疾患や心疾患などの基礎疾患を持つ方は、SpO2の変動に注意を払う必要があります。また、高齢者や喫煙者も、SpO2が低下しやすい傾向があるため、定期的なチェックが推奨されます。SpO2は、日々の健康状態を把握するための重要なバロメーターとなります。

2.パルスオキシメーターの使い方と注意点

SpO2を測定するためには、パルスオキシメーターを使用します。パルスオキシメーターは、指先にクリップのようなものを挟むことで、非侵襲的にSpO2を測定できる医療機器です。家庭用のパルスオキシメーターも広く普及しており、手軽にSpO2を測定することができます。

測定前の準備

  • 機器の点検
    パルスオキシメーターが正常に動作しているか確認してください。バッテリー残量やセンサーの状態もチェックします。
  • 指先の清潔を確認する
    測定部位(通常は指先)は、汚れや汗、マニキュアなどが付かないことを確認してください。これらは測定結果に影響を与える可能性があります。
  • 手の温度をチェック
    指先が冷たい場合、血流が非常に正確な測定ができないことがあります。測定前に手を温めるか、軽いマッサージを行って血流を改善してください。
  • 姿勢を整える
    対象者には座った状態でリラックスしてもらい、安静を主張します。

SPO2測定の手順 (一般的なパルスオキシメーター)

  • センサーを正しく装着する
    指先にセンサーを装着する際、爪を上に向け、奥までしっかり挿入して測定する。一般的には人差し指、中指、薬指が推奨されます。
  • 装着すると自動的に測定が開始され、酸素飽和度が測定されます。
  • 測定中は動かない 
    測定中に指を動かして正確な数値が得られないことがあります。測定が完了するまで安静を心がけましょう。
  • 数値が95%以下の場合、指を変えてみることや時間を数分置いてから再度測り直してみてください。

測定時の注意点

  • 測定する際には、以下の点に注意しましょう。
    ①爪にマニキュアや付け爪をしていると、測定値に誤差が生じる可能性があるため、測定前には必ず落とすようにしましょう。
    ②指先が冷えていると血流が悪くなり、正確な測定ができない場合がありますので測定前に指先を温めたり、マッサージしたりすると良いでしょう。
    ③測定中は、体を動かさないようにし、安定した状態で測定することが大切です。また、測定値は、個人差や体調、環境によって変動することがあります。そのため、一度の測定結果だけで判断するのではなく、複数回測定し、平均値を見るようにしましょう。
    ④さらに、測定値に異常がある場合は、医療機関を受診し、医師の診断を受けるようにしてください。
  • 測定結果が異常な場合は
    一度の測定で異常値が出た場合、少し時間を置いて再測定を行います。ただし異常が続く場合は、医師や看護師にご相談ください。
  • 測定環境 
    強い光(オレンジ日光や蛍光灯)や振動のある場所では、測定結果が影響を受ける可能性があります。とにかく安定した環境で行動しましょう。
  • 疾患や状態による影響
    末梢循環不全や低血圧、貧血のある方では測定が不正確になる場合があります。その場合は、医療機関での追加検査を検討してください。

④測定後の対応

測定結果を記録し、対象者の状態と合わせて観察を行います。異常値が続く場合は医師に報告します。定期的に機器の補正や清掃を行い、正確な測定ができる状態を保ちます。

3.SpO2が危険な状態とは?

危険値の目安と症状

SpO2の正常値は96%以上です。
95%未満だと呼吸器不全の疑い
90%未満では在宅酸素療法が適用とされています。

ただ、高齢者の場合はそれを下回ることはありますので、96%以上に満たないからと言って慌てる必要はありません。ただ注意しなければならないのが、SpO2が90%未満は呼吸不全の状態、さらにSpO2が75%未満は心虚血性変化をもたらす可能性があり、そしてSpO2が50%未満になると意識障害や昏睡状態に至る危険性があります。

恐らく、頻回に90%未満を出している人であれば、在宅酸素療法などを行っていたりと主治医の指示を受けていることでしょうから、それ以外の人でSpO2に対して不安を感じている人は呼吸器内科へ一度受診されることをオススメします。

一般的にSpO2が90%を下回ると、低酸素血症のリスクが高まり、注意が必要です。呼吸困難、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる)、意識レベルの低下などの症状が見られることがあります。これらの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。

90%未満が長期的に続くと、脳や心臓といった重要な器官に酸素が供給されず障害を起こす可能性が出てきます。高齢者の場合だとSpO2を測定した際に正常値を下回ることは良くありますが、最低でも90%以上の維持が望ましいと考えられています。

SpO2低下の原因

SpO2低下の原因は様々ですが、主なものとして、肺炎、気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患、心不全、貧血などが挙げられます。また、睡眠時無呼吸症候群もSpO2低下の原因となることがあります。これらの疾患によるSpO2低下のメカニズムについても理解しておきましょう。

正常値を下回るとどうなるの?

健康な人が基準値を下回れば、間違いなく息切れ・立ちくらみ・チアノーゼ・爪の変色などといった自覚症状が現れます。ですが、高齢者の場合だとそれらの自覚症状が現れない場合があるので注意が必要です。
それにはさまざまな理由はありますが、常に基準値が下回っていると酸素が取り込めない状態に慣れてしまい、自覚症状が現れづらくなります。また、認知機能が低下している方は、自覚症状があったとしても上手く伝えられない場合がありますので、特に注意が必要です。

SpO2が低いのに苦しくないケース

SpO2が低いにも関わらず自覚症状がない場合もあります。特に、慢性的な呼吸器疾患をお持ちの方は、体が低酸素状態に慣れてしまっていることがあります。このような場合でも、SpO2の数値が低い場合は注意が必要です。定期的な測定と専門家への相談が大切です。

SpO2が正常なのに呼吸困難なケース

逆にSpO2は正常なのに、本人が苦しがっている場合、どうすればいいのか?
SpO2はあくまでも血液中の酸素飽和度を示す指標であり、その値が正常であっても呼吸困難がある場合は細胞(ミトコンドリア)自体に酸素が届いていない可能性も考えられます。
ここからは医師の領域なので、我々ができることはいつもと違う変化に気づき対処すること。
緊急性の評価も重要ですが、状況の変化に気づくことも重要で、数値の変化とともに症状の変化(呼吸状態、心臓の状態、意識レベルなど)を総合的にアセスメントする必要があります。SpO2に頼り過ぎず、呼吸困難時のアセスメントをしっかり行うことが重要です。

SpO2が低い場合の対処法

1,落ち着いて対応する
SpO2が低いと表示された場合、まずは冷静になり、パルスオキシメーターが正しく装着されているかを確認してください。指が冷たかったり、マニキュアが付いていたりすると、正確な測定ができないことがあります。指先を温めてから、再度測定してみましょう。
また、パルスオキシメーターの電池残量が少ない場合も、測定値に誤差が生じることがあります。電池を交換してから、再度測定してください。測定値が低いままで、息苦しさや胸の痛み、めまいなどの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
過度な不安や動揺は、呼吸を乱し、SpO2をさらに低下させる可能性があります。そのため、深呼吸をしたり、リラックスできる環境を整えたりすることが重要です。まずは落ち着いて現状を把握し、適切な対応をすることが大切です。

2,医療機関への受診
SpO2が90%以下になった場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。原因を特定し、適切な治療を受けることが重要です。病院では、血液ガス分析など、より精密な検査が行われることがあります。

3,酸素療法と在宅酸素療法
SpO2が低い状態が続く場合、酸素吸入が必要となることがあります。在宅酸素療法では、自宅で酸素吸入を行いながら、日常生活を送ることができます。適切な酸素流量や酸素機器の選択は、医師の指示に従う必要があります。

4.パルスオキシメーターを選ぶ際の注意点

パルスオキシメーターは、様々な種類があります。家庭用として販売されているものから、医療機関で使用される高機能なものまで様々です。そのため、ご自身の目的に合ったパルスオキシメーターを選ぶことが大切です。また、パルスオキシメーターは、正しく使わなければ、正確な数値を測定することができません。取扱説明書をよく読み、正しい使い方を理解しましょう。

●医療機器認証の確認
パルスオキシメーターは医療機器であるため、信頼できる製品を選ぶことが重要です。医療機器認証を取得しているか確認しましょう。また、測定値の正確さや使いやすさも考慮して選びましょう。

●その他の機能の確認
製品によっては、脈拍数や灌流指数(PI)などの測定機能が搭載されているものもあります。これらの機能は、SpO2測定の補助として役立つ場合があります。

●定期的なメンテナンス
パルスオキシメーターは精密機器であるため、定期的なメンテナンスが必要です。電池の交換やセンサー部分の清掃などを適切に行い、常に正確な測定ができるようにしておきましょう。

5.SpO2測定のための最新技術をご紹介

血中酸素飽和度(SpO2)の測定は、健康状態のモニタリングにおいて重要な役割を担っています。 最新、非接触型やウェアラブルデバイスを用いた新しい技術が開発され、より効率的で正確な測定が可能になりました。

フレキシブルおよびウェアラブルセンサー

フレキシブルでウェアラブルな有機フォトプレチスモグラフィー(PPG)センサーは、日常生活での健康状態のモニタリングに関して次世代の医療機器として注目されています。これらのセンサーは、ポリマー基板上に製造され、長時間生物学の統合と正確な信号データの測定を可能にします。

カメラを使った非接触型SpO2測定

RGBカメラを使った非接触型のSpO2測定は、皮膚に触れる周囲の信頼性の高い測定を可能にします。 特に、新型コロナウイルス感染症のような感染症のリスクがある場合や、皮膚が脆弱な場合に便利です。ノッチフィルターを使用したRGBカメラは、スペクトルの独立性を高めつつ高い信号対雑音比(SNR)を維持することができ、臨床試験でも有効性が確認されています。

深層学習と多知覚スペクトル

深層学習を用いた多方面のスペクトル測定は、SpO2測定の精度を向上させる新しいアプローチです。
また、スマートフォンのカメラを使った深層ニューラルネットワーク(DNN)モデルは、従来の方法よりも高い精度でSpO2を予測することができます。

低消費電力センサーと新しい測定部位

環境光を利用した低消費電力のフレキシブルセンサーは、軽量で快適な装着感を提供し、非攻撃的かつ連続的なSpO2モニタリングを可能にします。また、耳や口腔内を測定部位を新しいとするアプローチは、心臓に近い位置での迅速なSpO2変化の検出を可能にし、従来の指先測定よりも優れた結果を示しています。

最新のSpO2測定技術は、非接触型やウェアラブルデバイスの進化により、より快適で正確な健康モニタリングを実現しています。必要な場合においては、従来の方法に代わる有効な手段となります。

まとめ
SpO2は、体内の酸素状態を把握するための重要な指標であり、健康管理において非常に大切です。SpO2が低い状態は、低酸素血症を示唆し、放置すると重篤な状態に陥る可能性があります。この記事では、SpO2の定義や正常値、低下する原因、具体的な対処法、注意点などについて解説しました。SpO2の低下は、様々な原因によって起こり得ますが、早期発見と適切な対応によって、重症化を防ぐことができます。

日頃からSpO2を意識し、健康管理を行うように心がけましょう。特に、呼吸器疾患や心疾患などの基礎疾患を持つ方は、定期的にSpO2を測定し、変動に注意を払うようにしてください。

この記事が、皆様の健康管理に役立つことを願っています。もし、SpO2の低下やその他の体調不良を感じた場合は、速やかに医療機関を受診し、専門医の指示に従うようにしてください。