福祉用具一覧 | 介護保険でレンタル・購入できる13品目と対象用具まとめ
介護保険制度には在宅での介護生活を支援するために「福祉用具貸与」と「特定福祉用具販売」というサービスが用意されています。これらのサービスを活用することで、車いすや特殊寝台などの福祉用具を1割から3割の自己負担でレンタルしたり、入浴補助用具などを購入したりすることができます。
しかし、福祉用具には多くの種類があり、どの用具が介護保険の対象となるのか、レンタルと購入のどちらが利用できるのか分からないという方も多いのではないでしょうか。本記事では介護保険でレンタル・購入できる13品目の福祉用具について、それぞれの特徴や対象要介護度、2024年度の制度改正による変更点まで詳しく解説します。
介護保険福祉用具の基本的な仕組み
介護保険における福祉用具サービスには、「福祉用具貸与(レンタル)」と「特定福祉用具販売(購入)」の2つの種類があります。これらのサービスは、要支援1以上の認定を受けた方が利用できる在宅サービスの一つとして位置づけられています。
福祉用具貸与の特徴と対象品目
福祉用具貸与サービスでは、13種類の福祉用具が対象となっています。レンタル方式のため、身体状況の変化に合わせて用具の種類や機能を変更できるメリットがあります。対象品目には、車いす、車いす付属品、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり(工事を伴わないもの)、スロープ(工事を伴わないもの)、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト、自動排泄処理装置が含まれています。
これらの用具は月額レンタル料金が設定されており、利用者は所得に応じた自己負担割合(1割から3割)で利用できます。また、支給限度額の範囲内であれば複数の用具を同時にレンタルすることも可能です。
特定福祉用具販売の特徴と対象品目
特定福祉用具販売は、衛生面の観点から他人が使用したものを再び使用することに心理的抵抗感が伴う用具を購入する際に利用できるサービスです。対象となる用具は9種類で、腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部品、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトの吊り具の部分などが含まれています。
特定福祉用具の購入には年間10万円の支給限度額が設定されており、この範囲内で1割から3割の自己負担で購入できます。購入した用具は利用者の所有物となるため、介護度が変わっても継続して使用できます。
福祉用具貸与対象13品目の詳細
福祉用具貸与の対象となる13品目について、それぞれの特徴や主な用途、対象となる要介護度を詳しく見ていきましょう。これらの用具は、利用者の身体状況や介護度に応じて適切に選択することで、在宅での介護生活の質を大幅に向上させることができます。
各用具には利用可能な要介護度の制限が設けられており、特に軽度者(要支援1・2、要介護1)については一部の用具で利用制限があります。ただし、医師の判断により必要性が認められる場合は、例外的に利用が可能となるケースもあります。
| 品目名 | 主な用途 | 対象要介護度 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 車いす | 移動補助 | 要介護2以上 | 手動・電動タイプあり |
| 車いす付属品 | 車いすの機能向上 | 要介護2以上 | クッション・電動補助装置等 |
| 特殊寝台 | 起き上がり・立ち上がり補助 | 要介護2以上 | 電動リクライニング機能付き |
| 特殊寝台付属品 | 特殊寝台の機能向上 | 要介護2以上 | マットレス・サイドレール等 |
| 床ずれ防止用具 | 褥瘡予防 | 要介護2以上 | エアマットレス等 |
| 体位変換器 | 体位変換補助 | 要介護2以上 | エアパッド式等 |
| 手すり | 立ち上がり・歩行補助 | 要支援1以上 | 工事不要のもの |
| スロープ | 段差解消 | 要支援1以上 | 工事不要のもの |
| 歩行器 | 歩行補助 | 要支援1以上 | 四輪・二輪タイプあり |
| 歩行補助つえ | 歩行安定性向上 | 要支援1以上 | 多点杖・ロフストランド杖等 |
| 認知症老人徘徊感知機器 | 徘徊時の安全確保 | 要介護2以上 | センサー式 |
| 移動用リフト | 移乗・移動補助 | 要介護2以上 | 吊り具部分は別途購入 |
| 自動排泄処理装置 | 排泄処理の自動化 | 要介護4以上 | 交換部品は別途購入 |
移動関連の福祉用具
移動関連の福祉用具には、車いす、車いす付属品、歩行器、歩行補助つえ、移動用リフトが含まれます。車いすと移動用リフトは要介護2以上が対象となる一方、歩行器と歩行補助つえは要支援1から利用可能です。これは、軽度の方には自立歩行を促進する観点から、歩行を補助する用具の利用が推奨されているためです。
車いすには手動タイプと電動タイプがあり、利用者の身体機能や使用環境に応じて選択できます。車いす付属品としては、座位保持のためのクッションや、操作を軽減する電動補助装置などがあります。歩行器は四輪タイプと二輪タイプがあり、屋内外での使用環境に応じて適切なものを選択することが重要です。
起居・就寝関連の福祉用具
起居・就寝関連の福祉用具には、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換器が含まれ、これらはすべて要介護2以上が対象となります。特殊寝台は、電動リクライニング機能やサイドレールにより、起き上がりや立ち上がりを安全に行えるよう設計されています。
床ずれ防止用具は、長時間同じ姿勢でいることによる褥瘡の発生を予防するためのエアマットレスなどが代表的です。体位変換器は、介護者の負担を軽減しながら定期的な体位変換を支援する用具です。これらの用具は、寝たきりの状態や長時間の臥床が必要な方の生活の質向上に大きく貢献します。
住環境整備関連の福祉用具
住環境整備関連の福祉用具には、手すりとスロープが含まれ、これらは要支援1から利用可能です。ただし、工事を伴わないもののみが対象となっており、設置工事が必要な手すりやスロープは住宅改修サービスの対象となります。
工事不要の手すりには、置き型タイプや突っ張り型タイプがあり、賃貸住宅でも利用しやすい特徴があります。スロープも同様に、置き型や折りたたみ式のものが対象となり、玄関の段差や室内の小さな段差を解消するために活用されます。
特定福祉用具販売対象9品目の詳細
特定福祉用具販売の対象となる9品目は、衛生面の配慮から他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗感が生じる用具が選定されています。これらの用具は購入することで利用者の所有物となり、個人の体型や使用環境に合わせてカスタマイズしながら長期間使用できます。
特定福祉用具の購入には年間10万円の支給限度額が設けられており、この範囲内で必要な用具を購入できます。支給限度額は毎年4月にリセットされるため、計画的な購入が重要です。購入する際は、指定を受けた特定福祉用具販売事業者から購入する必要があります。
| 品目名 | 主な用途 | 一般的な価格帯 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 腰掛便座 | 排泄時の姿勢保持 | 5,000円~50,000円 | 和式→洋式変換・高さ調整等 |
| 自動排泄処理装置の交換部品 | 装置の衛生管理 | 3,000円~15,000円 | レシーバー・チューブ等 |
| 入浴補助用具 | 入浴時の安全確保 | 3,000円~30,000円 | シャワーチェア・バスボード等 |
| 簡易浴槽 | 居室での入浴 | 20,000円~100,000円 | 空気式・組み立て式 |
| 移動用リフトの吊り具 | 安全な移乗 | 10,000円~40,000円 | シート式・ベスト式等 |
排泄関連の特定福祉用具
排泄関連の特定福祉用具には、腰掛便座と自動排泄処理装置の交換可能部品があります。腰掛便座は、和式便器を洋式に変換するもの、便座の高さを調整するもの、温水洗浄機能付きのものなど、様々なタイプが用意されています。
自動排泄処理装置の交換可能部品は、装置本体はレンタル対象ですが、直接身体に接触するレシーバーやチューブなどの部品は購入対象となります。これらの部品は定期的な交換が必要であり、衛生面を保つために重要な役割を果たしています。
入浴関連の特定福祉用具
入浴関連の特定福祉用具には、入浴補助用具と簡易浴槽があります。入浴補助用具は、シャワーチェア、バスボード、浴槽用手すり、入浴台、浴室すのこなど多様な種類があり、利用者の身体機能や浴室環境に応じて選択できます。
簡易浴槽は、一般的な浴槽での入浴が困難な方のために、居室などで入浴を可能にする用具です。空気式や組み立て式があり、設置スペースや介護者の負担を考慮して選択する必要があります。
2024年度制度改正による変更点と選択制の導入
2024年度の介護保険制度改正により福祉用具サービスにいくつかの重要な変更が行われました。これまでレンタルのみが対象だった一部の福祉用具について、レンタルと購入を選択できる「選択制」が導入されたことは特に注目のポイントです。
選択制が導入された背景には、利用者のニーズの多様化や、長期間使用する用具については購入の方が経済的になるケースがあることなどが挙げられます。また、個人の体型や使用環境に合わせてカスタマイズしたい用具については、購入の方が適している場合もあります。
選択制対象となった福祉用具
2024年度の制度改正により、スロープ(工事を伴わないもの)、歩行器、歩行補助つえの3品目について選択制が導入されました。これらの用具は、従来はレンタルのみが対象でしたが、現在は利用者の希望と状況に応じてレンタルまたは購入を選択できるようになりました。
選択制の導入により、短期間の使用が見込まれる場合はレンタルを、長期間使用する見込みがあり個人に合わせたカスタマイズが必要な場合は購入を選択するなど、より柔軟な利用が可能となりました。ただし、一度購入を選択した場合、同じ用具について再度購入支援を受けることはできないため、慎重な検討が必要です。
制度改正の影響と注意点
選択制の導入は利用者にとってメリットがある一方で、いくつかの注意点もあります。購入を選択した場合、身体状況の変化により用具が合わなくなっても、自己負担で買い替える必要があります。また、購入した用具の保守管理も利用者の責任となります。
選択制対象用具を検討する際は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員との十分な相談を行い、将来の身体状況の変化も見据えて適切な選択をすることが重要です。特に、要介護度が軽度の方は身体状況が変化しやすいため、レンタルを選択する方が適している場合が多いとされています。
福祉用具の適切な選び方と申請手順
福祉用具を適切に選択し利用するためには、まず利用者の身体状況や生活環境を詳しく把握することが重要です。要介護認定を受けた後、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づいて、必要な福祉用具が検討されます。福祉用具の選択には専門的な知識が必要なため、福祉用具専門相談員のアドバイスを受けることが推奨されています。
福祉用具の申請は、まずケアマネジャーへの相談から始まります。ケアマネジャーがケアプランに福祉用具を位置づけた後、指定を受けた福祉用具貸与事業者または特定福祉用具販売事業者と契約を行います。利用開始前には、福祉用具専門相談員による適合確認や使用方法の説明が行われ、定期的なメンテナンスやモニタリングも実施されます。
要介護度別の利用制限と例外規定
福祉用具の利用には要介護度による制限が設けられており、特に軽度者(要支援1・2、要介護1)については一部の用具で利用制限があります。これは軽度の方の自立支援を促進し、過度に用具に依存することを防ぐためです。
ただし医師の判断により必要性が認められる場合は、例外的に利用が可能となるケースがあります。例外が認められる条件には、末期癌などの疾患により急激に身体機能が低下する場合、特定の疾患により日常生活に支障をきたす場合などが含まれます。例外的な利用を希望する場合は、主治医の意見書やケアマネジャーによる詳細な検討が必要です。
費用負担と支給限度額の仕組み
福祉用具サービスの費用負担は、利用者の所得に応じて1割から3割の自己負担となります。福祉用具貸与については、各市町村で設定されている貸与価格の上限額内での利用となり、月額の支給限度額の範囲内で複数の用具を組み合わせて利用できます。
特定福祉用具販売については、年間10万円の支給限度額が設けられており、この範囲内で1割から3割の自己負担で購入できます。支給限度額を超えた部分は全額自己負担となるため、購入計画を立てる際は年間の限度額を考慮することが重要です。また、償還払い方式のため、一旦全額を支払った後に9割から7割の払い戻しを受ける形になります。
まとめ
介護保険で利用できる福祉用具は、レンタル対象の13品目と購入対象の9品目に分けられており、それぞれ利用者の身体状況や要介護度に応じて適切に選択することが重要です。2024年度の制度改正により、スロープ、歩行器、歩行補助つえについては選択制が導入され、利用者のニーズに応じてレンタルと購入を選べるようになりました。
福祉用具の選択には専門的な知識が必要なため、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員との十分な相談を行い、利用者の身体状況の変化も見据えた適切な選択を行うことが大切です。また、費用負担や支給限度額の仕組みを理解し、計画的な利用を心がけることで、在宅での介護生活の質を向上させることができるでしょう。
