在宅介護・在宅支援 介護・医療・福祉コラム

2025.11.20

在宅介護で大変なことランキング|精神的負担からお金まで徹底解説

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「親の介護が始まったけれど、思っていた以上に大変で心が折れそう」「何から手をつければいいのか分からない」そんな悩みを抱えている方は少なくありません。在宅介護には排泄や入浴といった身体的なケアだけでなく、認知症状への対応や仕事との両立、経済的な不安など、多岐にわたる負担が伴います。

本記事では、実際の介護現場で多くの方が「大変」と感じているポイントをランキング形式で紹介し、それぞれの具体的な対処法や活用できる公的制度、サービスの選び方まで徹底的に解説します。介護の負担を少しでも軽減し、ご家族も要介護者も安心して過ごせる環境づくりのヒントをお届けします。

在宅介護で大変なことランキング(ワースト10)

在宅介護を経験している多くのご家族が、日々さまざまな困難に直面しています。ここでは、介護現場でよく聞かれる「大変なこと」を、アンケート調査や実際の声をもとにランキング形式でご紹介します。

1位:排せつの介助

在宅介護で最も多くの方が「大変」と感じるのが排泄介助です。おむつ交換やトイレへの誘導、失禁時の処理など、身体的な負担だけでなく、臭いや汚物処理に対する心理的な抵抗感も大きな要因となります。

排泄介助は1日に何度も発生するため、介護者の疲労が蓄積しやすく、腰痛などの身体的トラブルを引き起こすリスクも高い作業です。また、要介護者本人も羞恥心やプライドから介助を拒否することがあり、コミュニケーションの難しさも伴います。

2位:認知症状への対応・コミュニケーション

認知症の方への対応は、予測不可能な行動や昼夜逆転、同じ質問の繰り返しなど、介護者の精神的負担が非常に大きい分野です。徘徊や物忘れ、時には攻撃的な言動に直面することもあり、家族関係にも影響を及ぼします。

認知症ケアでは、本人の尊厳を守りながら安全を確保するという二つの課題を同時に満たす必要があり、対応方法の知識とスキルが求められます。特に夜間の徘徊や不穏状態は、介護者の睡眠不足を招き、心身の健康を損なう原因となります。

3位:入浴の介助

入浴介助は転倒や溺水のリスクが高く、浴室という狭く滑りやすい環境での作業となるため、介護者にとって大きな不安要素となります。要介護者の体を支えながら洗髪や洗身を行うため、腰や肩への負担も相当なものです。

入浴は週に数回とはいえ、一度の介助に要する時間と体力が大きく、失敗すると重大な事故につながる可能性があるため、介護者の緊張感も非常に高くなります。また、冬場の寒暖差によるヒートショックのリスクも考慮する必要があります。

4位:移乗・移動の介助

ベッドから車椅子、車椅子からトイレといった移乗動作や、室内での歩行支援は、介護者の腰や背中に大きな負担をかけます。要介護度が高くなるほど、持ち上げや支える力が必要となり、介護者自身の身体を痛めるリスクが高まります。

移乗介助は1日に何度も発生するため、正しい介助方法を知らないと慢性的な腰痛や肩こりの原因となり、介護者自身が医療機関にかかる事態にもなりかねません。また、移乗時の転倒は要介護者の骨折などにつながる重大事故のリスクがあります。

5位:食事の介助・栄養管理

嚥下機能が低下した方への食事介助は、誤嚥性肺炎のリスクと常に隣り合わせです。適切な姿勢の保持、食べ物の形態調整、食事のペース配分など、注意すべき点が多岐にわたります。

食事介助では、食べてもらうことだけでなく、栄養バランスの管理や水分摂取量の確認、体重の変化チェックなど、健康管理全般への配慮が求められます。また、認知症などで食事拒否がある場合は、精神的な負担も加わります。

6位:服薬管理

複数の薬を正しいタイミングで服用させることは、見た目以上に負担の大きい作業です。飲み忘れや重複服用のリスク、薬の副作用のチェック、残薬の管理など、細かな注意が必要となります。

服薬管理のミスは要介護者の健康状態に直結するため、介護者は常に緊張感を持って対応する必要があり、精神的なストレスの原因となります。特に認知症の方の場合、本人が薬を隠したり捨てたりすることもあり、管理が一層難しくなります。

7位:通院・受診の付き添い

定期的な通院や急な受診の付き添いは、移動手段の確保、待ち時間の長さ、医師への症状説明など、多くの時間と労力を要します。特に要介護者が複数の医療機関にかかっている場合、スケジュール調整だけでも大きな負担となります。

通院付き添いは仕事を休む必要があることも多く、経済的損失や職場での立場への影響など、介護離職のリスクにもつながる重要な課題です。また、病院での長時間の待機は、介護者・要介護者双方の疲労を増大させます。

8位:衣服の着脱や身だしなみのケア

着替えの介助は、衣服の選択から着脱動作の補助、ボタンやファスナーの操作まで、きめ細かな配慮が必要な作業です。要介護者の関節の可動域が制限されている場合や、拘縮がある場合は、特に難易度が高くなります。

身だしなみのケアは要介護者の尊厳に関わる重要な行為ですが、毎日のこととなると介護者にとって時間的・体力的な負担が大きく、つい後回しにしてしまいがちな分野でもあります。しかし、清潔で整った外見は本人の自尊心を保ち、生活の質を維持する上で欠かせません。

9位:医療的ケア

胃ろうや尿道カテーテル、吸引器の使用など、医療的なケアが必要な場合、介護者には専門的な知識とスキルが求められます。手技の習得だけでなく、感染予防や緊急時の対応など、常に高い緊張感を持って臨む必要があります。

医療的ケアは失敗が許されない行為であり、介護者が医療職でない場合、心理的なプレッシャーは計り知れず、わずかなミスでも重大な結果につながる不安を常に抱えることになります。また、医療機器のトラブル時の対応方法についても習熟しておく必要があります。

10位:生活管理

介護に加えて、要介護者の生活全般を管理することは、想像以上に時間と労力を消費します。掃除や洗濯、買い物、料理といった家事に加え、光熱費の支払いや行政手続き、金銭管理なども担う必要があります。

生活管理の負担は目立ちにくいものの、これらが積み重なることで介護者の自由な時間が奪われ、慢性的な疲労感やストレスの原因となります。特に遠距離介護の場合、移動時間も加わり、負担はさらに増大します。

在宅介護が大変に感じられる主な理由

在宅介護の負担は、個々の介助作業だけでなく、それらが複合的に重なり合うことで増幅されます。ここでは、多くの介護者が共通して抱える「大変さ」の根本的な理由について、5つの視点から詳しく解説します。

身体的負担(疲労・腰痛など)

在宅介護では、移乗介助や体位変換、入浴介助など、介護者の身体に大きな負荷がかかる作業が日常的に発生します。特に腰痛は介護者の職業病ともいえる症状で、慢性化すると介護の継続自体が困難になります。

身体的負担は一度の作業では問題なくても、毎日繰り返されることで蓄積し、介護者自身が医療機関にかからなければならない状態に陥ることも珍しくありません。また、夜間の介護による睡眠不足も、疲労を増幅させる大きな要因となります。

精神的負担(ストレス・孤立感)

在宅介護では、終わりが見えない不安、要介護者の状態悪化への恐れ、認知症などによるコミュニケーションの困難さなど、さまざまな精神的ストレスが発生します。特に一人で介護を担っている場合、孤立感や孤独感が強まり、うつ状態に陥るリスクが高まります。

介護うつは深刻な問題で、介護者が心身の健康を損なうだけでなく、要介護者への虐待や介護放棄といった事態にもつながりかねない、予防と早期対応が必要な課題です。また、周囲の理解が得られないことによる孤立感も、精神的負担を増大させる要因となります。

仕事・育児との両立困難

在宅介護は24時間365日続く営みであり、介護者の自由な時間を大きく制限します。特に働き盛りの世代が親の介護を担う場合、仕事との両立が大きな課題となり、キャリアの中断や収入の減少といった問題に直面します。

仕事と介護の両立困難は介護離職につながり、経済的困窮だけでなく社会とのつながりの喪失や自己実現の機会の消失など、介護者の人生全体に深刻な影響を及ぼします。また、育児と介護を同時に担うダブルケアの状態は、さらに過酷な時間的制約をもたらします。

経済的負担

在宅介護には、介護保険サービスの自己負担分、介護保険適用外のサービス費用、おむつなどの消耗品代、住宅改修費、通院の交通費など、さまざまな費用がかかります。さらに、介護のために仕事を辞めたり勤務時間を減らしたりすることによる収入減も大きな問題です。

経済的負担は介護期間が長期化するほど深刻になり、介護者自身の老後資金や生活基盤を脅かす可能性があり、介護と貧困の連鎖を生み出すリスクを含んでいます。特に、要介護度が高い場合や医療依存度が高い場合は、費用負担がさらに増大します。

知識・スキル不足による不安

介護の専門教育を受けていない一般の家族にとって、適切な介護方法や医療的な判断、緊急時の対応などは未知の領域です。正しい方法がわからないまま介護を続けることは、要介護者の安全を脅かすだけでなく、介護者自身の不安やストレスを増大させます。

知識やスキルの不足は、介護の質の低下だけでなく、介護者が「これで良いのだろうか」という常に不安を抱えながら介護を続ける状態を生み出し、精神的な疲弊を招きます。また、間違った方法での介護は、介護者自身の身体を痛める原因にもなります。

無理なく続ける在宅介護:負担を減らす4つの秘訣

在宅介護の負担を軽減するためには、一人で抱え込まず、利用できるサービスや制度を積極的に活用することが重要です。ここでは、負担軽減のための4つの基本戦略について解説します。これらの戦略を組み合わせることで、介護の質を維持しながら、介護者の負担を大幅に軽減することが可能になります。

専門サービスの活用

介護保険サービスには、自宅に専門職が訪問する訪問系サービスと、施設に通う通所系サービスがあります。専門サービスの活用は単に介護作業を代行してもらうだけでなく、プロの視点からのアドバイスを受けたり、要介護者の社会参加の機会を提供したりする多面的なメリットがあります。また、定期的にサービスが入ることで、介護者が確実に休息を取ることができ、生活のリズムも整います。

訪問介護、訪問看護、訪問リハビリ、デイサービス、デイケアなど、要介護者の状態と介護者のニーズに合わせて、最適なサービスを選択しましょう。ケアマネジャーと相談しながら、効果的なサービス組み合わせを検討することが大切です。

福祉用具と住環境の改善

介護ベッドや車椅子、手すり、リフトなどの福祉用具を導入することで、介護者の身体的負担を大幅に軽減し、要介護者の自立度を向上させることができます。また、段差の解消や廊下の拡幅などの住宅改修も有効です。

福祉用具や住環境の改善は初期投資が必要ですが、長期的に見れば介護者の健康を守り、在宅介護の継続を可能にする重要な投資であり、介護保険での補助も利用できます。適切な用具の選択により、介護の効率性と安全性が大きく向上します。

家族での役割分担と外部支援の導入

介護を一人で抱え込まず、家族間で役割を分担することは負担軽減の基本です。直接の介護作業だけでなく、情報収集、行政手続き、金銭管理、精神的サポートなど、様々な役割を家族で分担することが重要です。

家族での役割分担は主介護者の負担を軽減するだけでなく、家族全体で介護に関わることで要介護者の孤立を防ぎ、家族の絆を維持する効果もあります。ただし、遠方に住む家族や仕事で時間が取れない家族もいるため、できる範囲での協力を求めることが大切です。

ケアプラン作成と定期的な見直し

ケアプランは、要介護者の状態と介護者のニーズに基づいて、どのようなサービスをどの程度利用するかを計画したものです。適切なケアプランの作成と定期的な見直しにより、効果的な介護体制を維持できます。

ケアプランは一度作成したら終わりではなく、要介護者の状態変化や介護者の状況変化に応じて柔軟に見直すことで、常に最適な介護体制を維持することができます。遠慮せずに、困っていることや変更したいことをケアマネジャーに伝えることが重要です。

実例・ケーススタディ

ここでは、実際の介護現場で起こった事例を通じて、在宅介護の課題とその解決方法を具体的に見ていきます。これらの事例は、読者の皆さんが直面している、あるいは今後直面する可能性のある状況のヒントとなるでしょう。

認知症対応が中心のケース例

Aさん(72歳女性)は、アルツハイマー型認知症の夫(75歳)を5年間介護してきました。最近、夫の徘徊が激しくなり、夜中に外出してしまうこともあり、Aさんは睡眠不足で疲労困憊の状態でした。また、同じ質問を繰り返されることや、時には暴言を浴びせられることで、精神的に追い詰められていました。

ケアマネジャーの提案により、週3回の認知症対応型デイサービスと月1回のショートステイを導入し、さらに見守りセンサーとGPS端末を活用することで、Aさんの負担が大幅に軽減され、夜間の安心感も得られるようになりました。また、認知症の人と家族の会に参加し、同じ悩みを持つ仲間と交流することで、孤立感が解消されました。

さらに、認知症サポート医の診察を受け、適切な薬物療法が開始されたことで、夫の不穏状態が改善されました。Aさん自身もカウンセリングを受け、認知症の理解を深めるとともに、自分を責めすぎないマインドセットを身につけることができました。この事例は、認知症介護では専門的な支援とレスパイトケアが不可欠であることを示しています。

身体介護が主なケース例

Bさん(58歳男性)は、脳梗塞で半身麻痺となった母親(82歳)を自宅で介護していました。移乗や入浴、排泄の介助により、Bさん自身が腰痛を発症し、仕事との両立も困難になっていました。母親も息子に迷惑をかけていることに負い目を感じ、必要な支援を求めることをためらっていました。

ケアマネジャーの提案で、介護ベッドと移乗用リフトを導入し、週4回の訪問介護(身体介護)、週2回のデイサービス、月2回の訪問入浴サービスを組み合わせることで、Bさんの身体的負担が劇的に軽減され、仕事も継続できるようになりました。また、訪問リハビリを週1回導入し、母親の身体機能の維持にも取り組みました。

理学療法士から正しい移乗方法の指導を受け、Bさんの腰痛も改善しました。さらに、会社の介護休暇制度を利用して通院付き添いを行うなど、職場の理解も得られるようになりました。この事例は、福祉用具と専門サービスの適切な組み合わせが、身体介護の負担軽減に効果的であることを示しています。

サービス活用で改善した成功事例

Cさん(65歳女性)は、要介護4の夫(68歳、パーキンソン病)を介護していましたが、自分一人で全てを抱え込み、外部サービスを利用することに抵抗を感じていました。しかし、介護疲れから体調を崩し、自分自身が入院することになってしまいました。

退院後、地域包括支援センターの介護者支援プログラムに参加し、サービス利用の重要性を理解したCさんは、包括的なケアプランを作成してもらい、訪問介護、訪問看護、デイケア、ショートステイを計画的に組み合わせた結果、夫の状態が安定しただけでなく、Cさん自身も心身の健康を回復することができました。月に1回のショートステイ利用時には、友人との旅行を楽しむ余裕も生まれました。

また、介護者家族会に参加し、他の介護者との交流を通じて、「完璧な介護をしなければ」という思い込みから解放されました。夫も様々なサービスを利用することで社会とのつながりを持ち、QOLが向上しました。この事例は、介護者が自分の健康を守ることの重要性と、適切なサービス活用が介護者・要介護者双方にメリットをもたらすことを示しています。

まとめ

在宅介護で大変なことは、排泄介助や認知症対応、入浴介助などの身体的な介助から、精神的ストレス、経済的負担、仕事との両立困難まで多岐にわたります。これらの負担を軽減するためには、一人で抱え込まず、介護保険サービスや福祉用具を積極的に活用し、専門家のサポートを受けることが不可欠です。 本記事で紹介した実践テクニックを活用しながら、ご自身の状況に合った介護体制を構築してください。介護は一人の力では乗り越えられない挑戦ですが、適切な支援と知識があれば、必ず道は開けます。