介護保険制度 介護・医療・福祉コラム

2025.11.15

認定調査で失敗しない!押さえておきたいポイントと準備

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調査員の前で “できるふり” をしていませんか?

要介護認定調査は、今後の生活を大きく左右する「運命の30~60分」です。

実はこの調査、
「きちんと準備をした人」と「準備ゼロの人」では、
結果がまったく変わってしまう可能性があります。

たとえば…

  • 本当は歩くのがつらいのに、つい無理して見せてしまう
  • 家族が代わりに答えすぎて、本人の困りごとが伝わらない
  • 調査員に何を聞かれるのか分からず、不安のまま当日を迎える
  • 認知症の症状がうまく説明できず、本来受けられるサービスが減ってしまう

これらは、実際の現場でとても多く起きている“認定調査の落とし穴”です。

しかし…
安心してください。

認定調査は「コツ」を押さえるだけで、必要な支援につながりやすくなります。
逆に、準備なく受けてしまうと、本来利用できたはずのサービスが受けられず、
後から「こんなはずじゃなかった…」と困ってしまうことも珍しくありません。

今回の記事では、

  • 調査の仕組み
  • 事前準備で“絶対に押さえたい3つのポイント”
  • 当日にやってはいけないNG行動
  • 結果に納得いかないときの対処法

など、失敗しないための実践的なノウハウを、できるだけわかりやすく解説していきます。

「認定調査って難しそう…」
「調査員の前でどう振る舞えばいいの?」

そんな不安を感じている方でも、この記事を読み終えるころには、
“落ち着いて調査に臨める自信” がきっと持てるはずです。

それでは、まずは「要介護認定調査とは何か?」から見ていきましょう。

◆ 要介護認定調査とは?

調査の目的と全体の流れ

介護サービスを利用するには、まず「要介護認定」を受ける必要があります。これは、あなたがどれくらい介護を必要としているのかを客観的に判断し、その人に合ったサービスにつなげるための最初のステップです。

要介護認定の目的は、「本当に必要な人に、必要な介護を公平に届けること」。
高齢化が進む今、介護が必要な方は増えているため、限られたサービスを適切に届ける仕組みがとても大切になってきています。

認定調査では、調査員がご自宅や施設に伺い、心身の状態や普段の生活の様子についてお話を聞いたり、実際に動作を見たりして、状態を確認します。その情報は、医師の意見書と合わせて「介護認定審査会」で審査されます。

最終的な認定結果は、

要支援1・2
要介護1~5

の 7つの区分 のいずれかとして通知されます。
この区分によって、利用できるサービスの内容や量が変わるため、とても重要なプロセスになります。

ケアマネジャーはこの結果をもとに、あなたに合ったケアプラン(サービス利用計画)を作り、必要なサービスへとつなげていきます。

つまり、認定調査は介護サービスの入口であり、人生に関わる大切な場面。そのため、調査に向けての準備や正確な情報共有がとても重要になります。

◆ 要介護認定の流れ

認定結果が出るまでには、いくつかのステップがあります。ざっくり説明すると次のような流れです。

  1. 市区町村の窓口で申請
    本人でも家族でも申請できます。
  2. 調査員が訪問して聞き取り・観察調査
    心身の状態、暮らしぶり、できること・難しいことなどを確認します。
  3. 医師が「意見書」を作成
    医学的な視点からみた状況をまとめ、認定に必要な情報となります。
  4. 介護認定審査会で総合判定
    専門家が、訪問調査の結果と医師の意見書をもとに要介護度を判定。
  5. 結果の通知
    要支援1~2、要介護1~5のいずれかが決まります。
  6. ケアマネがケアプランを作成してサービス利用へ
    必要に応じてサービスの調整が始まります。

もし結果に納得がいかない場合は、「不服申し立て」も可能です。
ただし期限がありますので、早めの対応が必要です。

◆ 認定区分と利用できるサービス

要介護認定の結果は、「要支援1・2」から「要介護1~5」まで、全部で7段階に分かれています。どの区分になるかによって、利用できるサービスの内容や上限額が変わります。

● 要支援1・2

比較的自立度が高く、生活の中で一部サポートが必要な方向けです。
利用できるのは主に 介護予防サービス で、例えばこのようなものがあります。

  • 生活援助中心の訪問介護
  • デイサービス(通所介護)
  • 福祉用具の貸与 など

目的は「今の生活機能を維持・向上させること」。
“できることを増やし、介護が必要な状態をできるだけ遅らせる” ことを目指します。

● 要介護1~5

日常生活で介助が必要な方が対象になります。
要介護度が高くなるほど、利用できるサービスの範囲も広がり、上限額も大きくなります。

利用できるサービスの例としては、

  • 身体介護・生活援助の訪問介護
  • デイサービス
  • 訪問入浴
  • 福祉用具購入・住宅改修
  • 特別養護老人ホームなどへの入所

などが挙げられます。
必要なサービスは人によって大きく異なりますので、ケアマネジャーと相談しながら、生活に合ったケアプランを作成していきます。また、時間とともに状態が変わることもあるため、状況に応じて「区分変更申請」も可能です。

◆ 認定調査前の準備 ― 成功のための3つのポイント

認定調査は、自分の状態を正しく伝えることが大切です。
そのためにも、事前にしっかり準備しておくと安心です。

① 事前に質問項目を確認しておく

調査では、調査員が日常生活や身体の状態について詳しく質問してきます。内容は全国共通の調査票に基づいており、およそこのような項目があります。

  • 身体の動き(起き上がり・歩行など)
  • 食事・排泄・入浴・着替えなどの日常生活動作
  • 物忘れや判断力などの認知機能
  • 行動面の状態(徘徊・不安・暴言など)
  • 医療的ケア(酸素・点滴など)
  • 生活の環境や家族状況

事前にどんな質問があるのか分かっているだけで、当日は落ち着いて答えられます。調査項目は市区町村の窓口やインターネットでも確認できます。

② 日頃の状態をメモしておく

認定調査でよく聞かれるのは、「ここ1ヶ月の様子」です。
でも、いきなり聞かれると具体的に思い出すのはなかなか難しいもの。

そこで、日頃から次のようなことをメモしておくのがおすすめです。

  • 普段どんなところで困っているか
  • できること、できないこと
  • 体調の変化
  • 病院受診の記録
  • 利用しているサービスの内容

ポイントは「できるだけ具体的に書く」こと。

例:
❌ 「歩くのが大変」
⭕ 「10分以上歩くと足が痛くなる」
⭕ 「家の中でも伝い歩きが必要」

このように具体的に記録しておくと、調査員にも状況が正しく伝わりやすくなります。写真や動画で残しておくと、さらに理解してもらいやすいです。

③ 家族やケアマネジャーと情報共有しておく

認定調査は、本人だけでなく周りの協力も大切です。

特に、

  • 一人暮らしの方
  • 認知症の症状がある方

は、本人だけではうまく説明できないことがあります。

家族やケアマネと日頃から情報を共有し、
「誰がどの情報を伝えるか」
「どんな困りごとがあるのか」
を整理しておきましょう。

ケアマネジャーは介護制度に詳しいので、

  • 調査でどんな点が見られやすいか
  • 何を伝えるべきか

など、具体的なアドバイスもしてくれます。当日に同席してもらえると、より安心して調査を受けられます。

◆ 認定調査当日に心がけたいこと

調査当日は緊張する方も多いですが、落ち着いて自分の状態を伝えることが大切です。ここでは、当日に気をつけておきたいポイントをまとめました。

① 家族が同席すると安心

認定調査では、できるだけ 家族の同席 をおすすめします。本人だけではうまく説明できないことがあったり、忘れてしまうこともあるため、家族が補足説明をしてくれると調査員により正確に伝わります。

特に、

  • 認知症の症状がある方
  • 不安が強い方
  • 一人暮らしの方

の場合は、家族の存在が大きな支えにもなります。

ただし、家族が話しすぎるのはNG。本人の思いを尊重しつつ、不足部分だけを補う姿勢が大切です。

② “良いところを見せようとしない”ことが大事

認定調査で一番多いミスは、「実際よりも元気に見せようとしてしまう」こと です。

  • 手すりがあれば歩けるのに、頑張って手すりなしで歩いてしまう
  • 本当は毎日苦労しているのに、「大丈夫です」と言ってしまう
  • トイレ介助が必要なのに恥ずかしくて言えない

これは“優しさ”や“見栄”からくる行動ですが、結果として 必要な支援を受けられなくなる可能性 があります。

調査員はできる限り客観的に判断しようとしていますので、そのままの状態を正直に伝える ことが一番大切です。

③ 具体的な例を交えて説明する

調査員に状況が伝わりやすくなるコツは、抽象的な言い方ではなく、具体的なエピソードを話すこと です。

例:
❌ 「物忘れがひどい」
⭕ 「朝飲んだ薬を何度も確認してしまう」
⭕ 「料理の途中で何をしていたか忘れてしまう」

❌ 「歩くのが大変」
⭕ 「家の中でも壁づたいで移動している」
⭕ 「10分歩くと足が痛くなる」

このように“数字”や“具体的な場面”を入れると、調査員もイメージしやすくなります。

◆ 結果に納得できないときの対応

要介護認定は、生活の質を左右する大切な結果です。もし結果に不安や疑問がある場合は、次の方法を検討できます。

① 不服申し立て

認定結果にどうしても納得できない場合、「不服申し立て」ができます。通知を受け取った日の翌日から 3か月以内 に手続きが必要です。

  • 市区町村に書面を提出
  • 専門家で構成される審査会で再審査

という流れになります。
ただし、手間や時間もかかるため、まずはケアマネジャーに相談するのがおすすめです。

② 区分変更申請

認定後に状態が悪化した場合や、明らかに今の区分が合わない場合、区分変更申請 を行うことで再調査を受けられます。

  • 病気やケガでADLが大きく落ちた
  • 認知症状が進行した
  • 日常生活が急に困難になった

こうしたときは、早めにケアマネジャーや市区町村に相談しましょう。

③ ケアマネジャーへの相談

認定結果に疑問があるとき、頼れるのはやはりケアマネジャーです。

  • 結果の妥当性
  • 利用できるサービス
  • 今後の対策
  • 区分変更の必要性

などを客観的にアドバイスしてくれます。また、ケアプランの調整やサービス選びにも大きな力になってくれます。

◆ まとめ ― 認定調査は“未来の生活を守る第一歩”

要介護認定調査は、介護サービスを受けるための大切な入口です。適切な結果を得るためには、次のポイントを押さえておくことが重要です。

  • 事前に質問項目を知っておく
  • 日頃の状態を具体的にメモしておく
  • 家族やケアマネジャーと情報共有
  • 当日は“良いところを見せようとしない”
  • 具体的な事例で説明する
  • 結果に納得できない場合は早めに相談する

認定調査はただの手続きではなく、これからの生活をもっと良くするための重要なステップ です。

「わかってもらえないかもしれない…」
「どう話せばいいのかわからない…」

そんな不安がある方も、しっかり準備すれば大丈夫。
この記事が、あなたの不安を少しでも減らし、より良い介護サービスにつながる手助けになれば幸いです