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2024.10.05

【革命】介護現場で使えるICT vol.1 ~大局を掴もう~

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現代の介護現場では、ICT(情報通信技術)の活用がますます注目されています。ICTを活用することによって、在宅ケアの強化、効率的な医療連携、予防と早期発見、認知症ケアの向上が期待でき、介護保険法の理念である、高齢者が自宅でより長く健康に、安心して生活するためのサポートを行います。

ここでは、介護現場で活用できる最新のICT動向や、その効果的な使い方について最新トレンドを掴みながらシリーズ化してお届けしていきたいと思います。

まず1回目として、ICTによって介護や医療分野の現場で変化する部分を大きく6つのカテゴリーにわけてみました。

1.見守りシステムの進化

介護施設において、利用者の安全を確保するための「見守りシステム」が進化しています。 AIやIoTの導入により、より高度な見守りが可能になりました。

🔳AIカメラ
AIを搭載したカメラは、利用者の動作を突然で解析し、転倒の被害を早期に警告することができます。また、プライバシーに配慮した形で画像データを処理することで、利用者の安心と安全を両立する仕組みも整っています。
利用者の心拍数や体温、活動量をモニタリングする「ウェアラブルデバイス」も普及しています。これにより、異常を早期に発見し、迅速な対応が可能となります。

2.業務支援システムの導入

介護職員の負担軽減を目的とした業務支援システムの導入が進んでいます。これらのシステムは、介護記録のデジタル化やスケジュール管理、情報共有を効率化するために活用されています。
先回お届けした「kintone」もこういうことで活躍できます。

🔳介護記録
タブレットやスマートフォンを使って、利用者の状態や介護内容を記録・共有できるアプリが増えています。紙での記録に比べ、データの検索や集計が簡単にできるため、スタッフ間での情報共有がスムーズになります。
弊社ヘルパーステーションでは紙の記録書からタブレットの電子記録に変えました。

🔳シフト管理システム
スタッフのシフトを自動で最適化するシステムも注目されています。利用者の状態やスタッフのスキルを考慮し、効率的なシフト配置が可能になり、働きやすい職場環境の実現に貢献します。

🔳SFA・顧客管理
SFA(営業支援システム)は、営業活動を効率化するためのツールで、顧客管理のICT化において重要な役割を果たします。これにより、営業担当者は顧客情報や商談の進捗を一元管理でき、情報共有やデータ分析が容易になります。

例えば、顧客とのやり取りをSFAに記録することで、過去の商談履歴や問い合わせ内容をすぐに確認できます。また、SFAは自動でリマインダーを設定したり、売上予測を行ったりするため、営業戦略の最適化に役立ちます。これにより、営業活動の効率化と顧客満足度の向上が期待できます。

3. リモートケアの実現

コロナ禍を契機に、リモートケアのニーズが広がってきています。ICTを活用したオンライン面談やモニタリングが、介護現場でも浸透しつつあります。

🔳オンライン面談
利用者とその家族、医療従事者がオンラインで面談を行うことで、遠隔からの相談やコミュニケーションが容易になります。また、外出が難しい高齢者にとっても安心して相談できる環境が整いますます。

🔳遠隔モニタリング
在宅介護では、センサーやカメラを使った遠隔モニタリングが活用されています。介護スタッフは利用者の状態を随時で確認し、異常があれば即時に対応することが可能です。

🔳オンライン診療
オンライン診療は、インターネットを使って患者と医師が遠隔で診察や相談を行う仕組みです。スマートフォンやパソコンを使ってビデオ通話をすることで、自宅にいながら医師の診療を受けられます。特に、通院が難しい高齢者や在宅医療が必要な患者にとって便利です。

オンライン診療は、時間や場所に制約されず医師のサポートを受けられるため、医療の新しい形として注目されています。

🔳遠隔リハビリテーション
遠隔リハビリテーションは、インターネットを介して患者と理学療法士や作業療法士が遠隔でリハビリを行う仕組みです。患者は自宅でスマートフォンやタブレットを使い、ビデオ通話や専用のアプリを通じて指導を受けられます。この方法は、通院が難しい患者や自宅でのリハビリを希望する高齢者にとって、効率的かつ効果的です。

具体例として…
★バーチャル運動指導
理学療法士がビデオ通話を通じて、患者の体の動きや姿勢をリアルタイムでチェックし、適切な運動やストレッチを指導します。たとえば、関節の可動域を広げるためのエクササイズをその場で見本を示しながら指導できます。

★専用アプリでのトレーニング
専用のリハビリアプリを使って、患者が自宅で自主トレーニングを行うケースがあります。アプリは患者の動きをセンサーで感知し、正しい動作ができているかリアルタイムでフィードバックを提供します。理学療法士はそのデータを遠隔で確認し、必要に応じてアドバイスを送ることができます。

★VRやARの活用
仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を使ったリハビリテーションも注目されています。例えば、患者がVRヘッドセットを装着してバーチャルな環境でバランス訓練を行うなど、楽しみながら効果的なリハビリを実施することが可能です。

遠隔リハビリテーションの未来には、大きな可能性が広がっています。まず、AI技術の進化により、リハビリデータを自動で分析し、患者一人ひとりに合わせた最適なプランを提案することができるようになるでしょう。また、センサー技術の発達により、患者の動きやバイタルデータをより正確にモニタリングすることが可能になり、遠隔でも高度なリハビリを提供できるようになります。

さらに、VRやAR技術の活用で、患者が自宅でゲーム感覚でリハビリを楽しむことができ、モチベーションの維持にも繋がります。これらの技術を組み合わせることで、遠隔リハビリテーションは、患者のQOL(生活の質)の向上や、介護者の負担軽減に大きく貢献できると期待されています。

4. ロボティクスの活用

特に、移乗や歩行補助を行うロボット、コミュニケーション支援ロボットは、介護スタッフの身体の負担を軽減し、利用者のQOL(生活の質)向上に貢献しつつあります。

🔳移乗ロボット
ベッドから車椅子への移乗をサポートするロボットは、介護者の腰痛リスクを軽減し、安全な移乗を実現します。

🔳コミュニケーションロボット
利用者との会話やレクリエーション、認知機能の維持・向上を進めるロボットも人気です。利用者の心身の健康をサポートする、介護者の負担軽減にもつながります。

5. 仮想現実(VR)と認知症ケア

認知症を持つ高齢者には、仮想現実(VR)技術が利用されます。VRは現実の環境を模倣し、患者により良い生活を体験させることができますので、例えば、認知症の方にVRを使用して過去の場面や風景を再現し、記憶の活性化やリラクゼーションを促進することができます。
また、先にも述べたように、VRは認知症患者のリハビリテーションにも役立ちます。
バーチャルな環境での運動や認知訓練は、認知機能の維持や向上に寄与します。

VRは、認知症ケアに新しい可能性をもたらしています。患者のリハビリテーションやリラクゼーション、家族とのコミュニケーション、ケアスタッフの教育など、様々な場面でVRを活用することで、認知症患者のQOLの向上やケアの質の改善が期待されています。ただし、導入には患者の状態や特性に合わせた調整が必要であり、専門家の指導のもとで活用することが重要です。

また、VRによって「認知症の方の世界を体験する」という試みもあるようです。認知症の方が見ている普段の世界を体験して理解を深める研修等にも積極的に活用されています。

6. データ活用による介護の質向上

介護現場で蓄積されるデータを活用することで、より質の高いケアが可能になります。ICTを使ったデータ収集・分析により、利用者一人ひとりに合わせたケアプランの作成や、業務の効率化が図られています。

🔳ビッグデータとAIの活用
利用者のバイタルデータや行動履歴をAIで解析することで、健康状態の変化を予測し、正しいケアを提供することが可能です。これにより、利用者の健康リスクを事前に察知し、未然にトラブルを防ぐことが期待されています。

🔳デジタル化されたケアプラン
利用者のニーズや状況に応じて、ケアプランをデジタル化し、スタッフ間で共有することで、個別ケアの徹底が実現します。適切なケアの提供と、ケア内容の見直しがスムーズに行えます。

介護現場におけるICTの活用は、業務の効率化や介護の質の向上に大きく貢献しています。見守りシステムや業務支援システム、リモートケア、ロボティクス技術、データ活用など、様々なICTが介護現場で活躍しており、その導入は今後ますます進むでしょう。しかし、ICT導入にあたっては、スタッフの習熟度や利用者のプライバシー保護にも十分配慮することが求められます。
様々なICTを上手く組み合わせて活用することで、より良い介護環境を構築していくことが期待できます。


どうでしたか?何となく大局掴めましたでしょうか。
『介護現場で使えるICT』、今後シリーズ化して、さらに具体的な商品、サービス、研究内容等をお伝えしていければと思います。