時事

2025.10.28

【介護時事】ケアマネ資格、実務経験「5年→3年」に短縮へ

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厚生労働省は、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格取得要件を大幅に緩和し、これまで「実務経験5年以上」とされていた条件を「3年以上」に短縮するとともに、対象となる基礎資格を拡大し、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師を新たに追加する方針を示しました。 この改定は、ケアマネジャーを志す人材を増やすとともに、多様な専門的背景を持つ人々の参入を促すことを目的としています。 また、人材不足が深刻化する介護業界において、若手人材を早期に登用し、キャリア形成のスピードを高める狙いもあります。

 なぜ見直しが行われるのか

現在、全国のケアマネジャーの平均年齢は50歳を超え、高齢化が進んでいます。
また、介護報酬改定や制度改正など業務が複雑化する中で、「次世代を担うケアマネが育ちにくい」という構造的課題が指摘されてきました。
厚労省の審議会では、「介護職員が現場で3年以上の実務経験を積めば、十分な実践力がある」との意見が多く、制度改正の方向性が固まったとされています。

現場への影響

この見直しによって、若い世代の介護職員がより早くケアマネジャーを目指せるようになります。
例えば、20代後半で資格を取得し、30代前半にはケアマネとしてキャリアを積むことが可能になります。
一方で、経験年数の短縮による「知識・判断力の差」をどう補うかも課題です。
教育機関では、実践的な演習やOJTの強化が求められそうです。

介護業界に期待される効果

  • 若手人材の早期育成によるキャリアの多様化
  • 介護職からケアマネ職へのキャリアパスの明確化
  • 地域包括ケアの推進に向けた人材基盤の強化

これらの流れは、単なる制度緩和ではなく、「現場で働く介護職員の将来設計を支援する改革」ともいえるでしょう。

今後の展望

制度改正は2026年度を目処に実施される見込みです。
同時に、更新制の廃止や研修制度の再構築も議論されており、ケアマネ制度は大きな転換期を迎えています。今後は「資格を取ることがゴール」ではなく、「学び続けるケアマネ」が評価される時代になるでしょう。

まとめ

◎ケアマネ資格要件の見直しがもたらす転換点

ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格取得には、長年にわたり高いハードルが設けられてきました。
資格を得るまでの道のり、試験の難易度、そして取得後の更新制度――。
「なぜここまで厳しいのか」と感じる方も多いでしょう。

その厳しさこそが、今の日本でケアマネとして実務を続けられる人材が十分に確保できていない現実を生んでいます。
高齢化が進むなかで、ケアマネ不足は地域包括ケアの根幹を揺るがす課題となっています。

本来、この制度は“ケアマネジメントの質を高める”ことを目的として設計されたものです。
しかし、実際には、その数々のハードルが必ずしも質の向上につながっているとは言い切れません。
とはいえ、ケアマネジャーは「経験がものを言う」職種でもあり、今回の要件緩和は人手不足解消の切り札となる可能性を秘めています。
一方で、質の低下というリスクも同時に抱えていることは否めません。

求められるのは「緩和」と「育成」の両立

今回の資格要件見直しは、介護業界の未来を左右する大きな一歩です。
この制度改正のメリットを最大限に活かし、デメリットを最小限に抑えるためには、
・研修制度の充実
・OJT(現場教育)の強化
・多職種連携の推進
といった実践的なサポート体制が不可欠です。

実務経験の短縮は、単なる要件緩和にとどまらず、介護現場の意識改革を促す転換点になる可能性を秘めています。若手職員が早い段階でキャリアアップできる環境を整えることで、現場の活性化と人材定着にもつながるでしょう。