【インタビュー】介護福祉士が理学療法士とケアマネージャーの資格を取得してみた
趣味はリーズナブルに楽しめるプランを作って旅行することというニシムラさん。無資格で介護業界に就職し、介護福祉士、理学療法士、ケアマネージャー(介護支援専門員)の3つの資格を取得されたという努力家でいらっしゃいます。
20代で介護未経験から飛び込んだ介護のお仕事
20代の頃、介護に興味はなく介護も未経験でしたが、ご縁があり介護のお仕事に就きました。働き始めてから、ヘルパー2級(現 介護職員初任者研修)を取得しました。最初の頃は無資格未経験から始めているので(ヘルパー2級を取得したとは言え)専門用語も全然分からず、何も分からなかったです。仕事を始めた当初、今考えれば、人間関係が大変でした。ご利用者様が認知症だったり、互いに人間なので価値観が違うことも大変でした。帰宅願望が強く玄関から離れない時などどうすればいいか分からず大変だった記憶があります。今でも難しく答えがない課題ですが、経験もスキルもない若い頃だったので「どうしたらいいの?」と悩みました。厳しい言葉を投げかけられたりもしました。
ただ、同僚と連携したり、試行錯誤して、帰宅願望がある方と打ち解けて信頼関係ができていくことができました。ご利用者様に顔を覚えていただき、信頼関係が築けると、話を聞いていただける隙が生まれるんです。最終的に「あんたに会えて良かった」という言葉をいただいたり、ご家族様に喜んでいただいたりしたことは大きなやりがいであり、介護の仕事を続けられた理由のひとつだと思います。
同僚のスタッフとも全ての人と合うわけではありませんでした。ただご利用者様の対応を連携する経験などを通して、同僚との関わり方も成長していくことができたように思います。社会人として揉まれて経験を積んで、ストレス発散のスキルも身についたんだと思います。
若かったので、身体的な負担よりもどちらかと言えば精神的な負担が大きかったです。今は逆で、精神的な負担よりも身体的な負担の方が大きいですね。昔に比べれば疲れるようになりました(笑)
介護福祉士に続いて理学療法士を目指すことを決意
当初は資格取得には興味がありませんでした。ただ、就業場所の人員配置の事情や、経験されている方と一緒に働いていて資格の必要性を感じたことなどがきっかけで、介護福祉士を取得しました。過去問題を中心に傾向と対策を重視し、集中して取り組み合格することができました。介護福祉士の資格を取得後、リーダー的な立場になりました。年上の方が多かったこともあり、最初は気を使うことが多かったです。気持ちよく仕事をしてもらいたかったし、自分がスタッフに嫌われてしまうとやりづらいので。いい関係を保ち続けるために、まとめると言うよりは嫌な役割は自分が担うスタイルでした。
経験を積み、リーダーを務める中で、医療領域の職員とコミュニケーションを取る機会が増えました。看護師さんなどが医療用語をしっかり使っている中で、分からなかったり、正しいかどうか判断がつかないことがありました。自分が医療のことを知らないとご利用者様により良い介護や環境を提供できないと感じ、他方でマネジメントの限界を感じたこともあり医療を学ぶことにしたんです。当時、看護師の有資格者は介護業界に増えていましたが、リハビリに関連した有資格者は少なかったです。老健などの施設以外の介護の現場では、リハビリ職は少なかったんです。職場に訪問してくれていた理学療法士の方から「これからの介護はリハビリだよね」と話を聞く機会もあり、これからの介護を考え、理学療法士を目指すことにしました。
介護福祉士が理学療法士を目指す!
介護福祉士を取得した際は短期集中で資格を取得するために勉強しましたが、資格を取得するだけでなくしっかりと医療を学びたいと強く思いました。理学療法士の資格を取得する為、4年間、夜間専門学校に通いました。結構体育会系だったと思います。当時、理学療法士は男性が多かったです。現在は女性も増えたと思いますが、どちらかと言えば男性社会だったんです。一日中病院で学んで、帰宅してから寝ずにレポートしたりする日が6週間続いたこともありました。
学校で知り合った仲間がとても良かったのが救いでした。20代後半で入学しましたが、60代後半の方がいたり、現役の若い人たちがいたり幅広い世代の人と深く関わることができました。特に若い現役生と仲良くなり、みんなで支え合ったのはとても良い経験でした。20代前半の現役生はエネルギッシュでした(笑)。実習の時にはお互いに「そっちはどう?」と、声をかけあったり、勉強の時には「こういう覚え方あるよ」と教えあったり。今思い出しても「励まし合い慰め合い、仲間と共に頑張ったな」と思います。良い思い出です。医療の勉強もですが、人生の勉強にもなりました。学校に行って良かったです。
理学療法士を学んで分かった「医療は治療で、介護は生活」
苦労して得た理学療法士の知識は、今の自分の介護の仕事になくてはならないと感じています。ご利用者様の歩き方を見ていて、悪そうな場所が分かるようになりました。理学療法士の資格を取得してからも、しっかり勉強を続けています。学会発表もさせていただいたこともあります。その際、医師にサポートいただくこともありました。理学療法士として価値がある技術も、医師から教えていただきました。その先生にはもちろんですし、出会いそのものにも感謝しています。理学療法士として努力してきたことや、医師のサポートもあり、ご利用者様の身体の不調に対する回復に向けたPDCAを回すことができるようになりました。知識や身についた技術で、ご利用者様に実際に喜んでいただくことができてやりがいを感じます。現在、高齢者向け住宅の施設長をやっていますが、理学療法士の知見を活かしたコミュニケーションが取れることで、信頼関係を築きやすいと感じています。医療の知識を深く知ることができたからこそ、分かりやすく伝えられるよう心がけています。
病院は医者や看護師が揃っていてしっかりとした医療を提供できます。一方で介護ではそうはいきません。しかし、治療と生活は見ている視点が違います。学生が実習に来た時に「看護師と介護士は何が違うの?医療と介護って何が違うの?」と質問をすると答えられない人も多いです。私は、「医療」は「治療」で、「介護」は「生活」だと思っています。介護においては生活を見ていくのが主たる中で、理学療法士として医療の視点を持ちながらご利用者様と関われる意義は大きいなと感じています。例えば「車椅子だけどどうやって生活したらいいかしら?」というように「生活を良くしてあげたい」という視点で、ご本人や家族の不安を取り除くことができたりします。
未経験から介護福祉士・理学療法士に続いてケアマネージャーの資格を目指す
ケアマネの資格は取得する気はありませんでした。ある日、会議で「チャレンジしてみたら?」と声がけをされました。試験まで3ヶ月くらいのタイミングだったことがあり「今年は無理だから来年チャレンジしてみては?」と言われましたが、勢いで「今年とります」と宣言してしまったんです。そこから3ヶ月間集中して勉強して、ケアマネの試験に受かることができました。傾向と対策に力を入れたのが良かったのかなと思います。知らなかった知識をケアマネの試験勉強を通じて知ることができました。医療分野は十分理解できていましたが、介護や介護保険について理解が不十分だったことがたくさんありました。ケアマネの試験勉強が今までの勉強の総集編のような感じになりました。
介護のお仕事は未経験の方がチャレンジするのは良いと思います。大事なことは「人間性」です。「普通の人であれ」というのが大事だと思います。普通の人なら大丈夫です。ただ、無資格の場合、ご利用者様の介助はお互いの為に避けた方が良いと思います。初任者研修を受ければ、一定の介護の知識や経験ができるので、まず受講していただきたいです。「おじいちゃん、おばあちゃんが好きだから」という理由だけで介護を始めるのは危険です。認知症ではない近くを散歩できている元気なおじいちゃんやおばあちゃんをイメージしているケースが多いように思います。介護が必要な方は、そうやって元気でいられないので介護を受けています。なので知識、経験、スキルは必要なんです。一番最初は誰でも「未経験」から始まるので「未経験」でも良いと思います。ですが「成長したい」という意欲を持つことが大切です。
将来的にはリハビリの仕事にもう一度戻りたいなと思います。95歳のおばあちゃんにリハビリから外れることを伝えたら「あんたが戻ってくるまで何年でも待ってるよ。」と言っていただいたんです。いつまで待ってくれていてくれるのかな。いつか戻りたいな、と思っています。